操体法大辞典

操体の専門家による、操体の最新情報など

側湾症、漏斗胸

11歳女子。

左足首が曲がらない。歩行時、走行時共に足をひきずったようになる。転びやすい。

主な愁訴は足首と、側湾症。立位で脊柱を触診すると、明らかな側湾が触れる。頸椎は湾曲がなく、腰の反りが強い。右の肩胛骨が盛り上がってみえる。

仰臥位でみるとやはりからだが曲がってみえる。



胸郭に触れると、大きなへこみに触れる。漏斗胸だ。

母親に聞いてみると、母親も子供の頃、漏斗胸だったらしいが、成長と共に自然治癒したらしい。胸郭前方にこのような大きなへこみがあるのだったら、それに付随する脊柱に何らかの変位があってもおかしくないかもしれない。



仰臥膝二分の一屈曲位で膝をゆっくり自力で右に倒させる。

首も同様に右を向く。ここで『首を反対(左)に向けるとどうですか?』と聞くと、きつい、という。逆に膝を左に倒させると、同様に首が同方向を向いてくる。



首に触れてみると、首全体が緊張していて、少し触れただけでも皮膚に過敏感覚があり、特に首の右側に大きな硬結があり、ちょっと触れると痛いという。幸い、右足首を反らすという逃避反応があったので、右足関節の背屈をさせてみる。『悪くない』というので、

そのまま操法を通す。一通りの操法(伏臥位でもいくつか行った)その後、再び仰臥位膝二分の一屈曲位で膝を右に倒させると、首が

自然と左に向く。左に倒させると首は右に向く。

首の硬結はまだ多少残るものの、立たせて、腕を振って足踏み、立ったりしゃがんでみたり(あ、しゃがみやすい、という)

玄関と廊下を歩いてきてもらい、左の足首を自力で曲げてもらう。

可動性は出ているようだ。

立位で母親に後ろから見てもらい、触れてもらう(最初にも見てもらい、脊柱には触れてもらっている)。違いがわかるという。

首も楽になったという。



帰りに、見送りながら母親に聞いてみると、歩き方も違うという。



橋本敬三先生の著書にも出てくるが、筋ジストロフィーの少年が、操体で改善していったという話がある。それをふと思い出す。もう少し、診せて頂きたい、と痛切に思う。