これは症例集といってもいいかもしれない。
昨日の講習で、実際にライブで行われた臨床の模様をお伝えしたいと
思う(多少の脚色はご容赦願う)
診立てというものが、どれだけ操体臨床に不可欠であるか分かって頂けると思う。
モデル(被験者)N君。施術者、M先生。
左腕が伸びない。また、右腕が左腕の二倍程に腫れ上がっている。
原因としては、筋肉の炎症もあるようだ。
モデルは椅子に腰掛ける
正面からみると、両手は膝の上に乗っているが、右手は外旋、左手は内旋している。
更に、肩をみると右肩がわずかに下がり、左肩がわずかに上がっている。首は軽く右に傾倒している。
これはどのような状態を示すのか。
「連動学」がアタマの中に入っているのなら、この場合、被験者は右側屈の傾向を示し、体重は左臀部にかかっているということが推測できるはずである。
まずは視診(形態観察)で、ここまで読み取る必要がある。
ということは、右側屈を示し、左臀部に体重がかかるような連動を誘う動診を試してみたらどうか、という予測が成り立つのである。
左臀部に体重がかかるような、手関節、足関節の動きを考える。
・右手首前腕の外旋
・左手首前腕の内旋
・右足関節の背屈
・左足関節の底屈
・右手関節の背屈
・左手関節の掌屈
(この他にももっとあるがが、省略)
このように、連動が頭の中に入っていると、ある程度操法の組み立てが即座に浮かぶのである。
その後、どのポジションから、どこから操法を施せばいいのか、被験者のからだにききわけさせてから、実際の操法に入る。
この場合、最初にとったのが右足関節の背屈だった。
右足関節を背屈させると、左臀部に体重がのり、右に側屈してくる。
さて、ここで間違えやすいのが、右足関節を背屈させて、左臀部に体重が乗り、右に側屈してくるから、良くなるのではない。
その動きをとらせて、快適感覚、あるいは心地よさ、きもちよさ、
味わってみたいという要求がききわけられるかというのがコツである。単に動かしたので治るのではない。
操体では、常に感覚のききわけを行うことが重要だ。
さて、足関節の背屈という動診で感覚のききわけを行ったモデルは
きもちよさをききわけられた。
「十分味わって」という指示。
十分味わう。その後、空気が抜けるように脱力。
回数の要求はない。
その次に、同足関節を軽く外転位にとり(外転にとると、臀部の重心はより、左臀部に乗りやすくなる)、不快でないことを確認する。この状態で同様に背屈。
モデルは快適感覚をききわけることができ、そのまま操法として
とおす。
からだにききわけて、回数の要求があったので、再度操法をとおす。
この間わずか5分足らず。
その後、反対足の底屈をとらせ(これでも快適感覚がききわけられ、味わうという過程をとる)操法として選択する。
更に5分。
診立てと操法で約15分。
診立てがしっかりしていれば、操法の数も少なくてすむ。