操体法大辞典

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手は小指、足は母指(おやゆび)

手は小指、足は親指



というのは『身体運動の法則』の中の

1.重心安定の法則(からだの使い方)

2.重心移動の法則(からだの動かし方)

(3、4もあるのだが、ここでは割愛)のうち、1番の「重心安定の法則」を指す。



手を使う場合は、小指、あるいは中指を中心に小指側側(こゆびそくがわ)を運動力点・作用点として使い、足の場合は足の拇趾(おやゆび)の付け根あたり(足心付近)に体重をかけるということだ。小指側側を運動力点・作用点とすると、脇が締まる。動きが能率的になり、疲労が少なく、立ち居振る舞いが美しく見えるということだ。拇趾の付け根あたりに体重が乗ると、全身が安定する。



自然体の定義自体が、「足は腰幅、つま先と踵は平行に、背筋を軽く伸ばして目線は正面の一点に据える(こうすると、膝を無理にゆるめなくても、自然と膝が弛んできて、拇趾の付け根あたりに体重が乗ってくる)、膝の力をほっと抜き、体重は足の拇趾の付け根あたりにかかる」

もっと完璧にやるならば、小指側側を意識して、上肢は軽く外旋気味になる。



講習ではまず、身体運動の法則から説明するのだが、昨年末、この『重心安定の法則(からだの使い方)』についてレクチャーした受講生の話を聞いた。



彼は某療術を学んでいたが、その中で最も難しいといわれるテクニックを、一年がかりでやっとマスターしたという。

詳細には触れないが、両足関節を保持し、軽く揺らしを与えるものだそうだ。

彼はそれを習った通りにやっていたが、どうも疲れて仕方ない。受け手も余りいい感じがしなかったそうだ。ところが、一年かけて試行錯誤するうちに、習った保持の仕方ではなく持ち方を工夫したところ、やるのもずっと楽になったらしい。



『先生、ちょっとやらせて下さい』



私がモデルになり、その二つをやり比べて貰うことになった。



『これが最初にならったやり方です』



『これは私が一年かかって見つけたやり方です』



私は伏臥位を取っていたので、彼の手元は見えなかったが、足に触れる感じですぐ気がついた。



『・・・・最初にやったのは、拇趾をくるぶしに添えてやっていませんでした?二度目は違いましたよね?』



『そうです』



『・・・・二度目は、小指側を使っていたんでしょう?母指は使っていませんよね』



『あれ???確かにそうですね。私が一年かかったやり方は、言われてみれば手の親指は使っていません』



『これが、『手は小指、足は母指』の『小指』ってことですよ。もう一度、今度はより、小指側側を使ってやってみてください』



彼はもう一度、今度は自分が編み出したやり方で、小指側をより一層意識してそのテクニックを試してみた。



『全然やりやすいです。いやあ、参ったな。前回、小指側を使う、ということを習っても今ひとつ実感できなかったんですが、

今ので良くわかりました。これだけで疲れ方が全然違います』



『このテクニックを習った時、指導者の手を見て、くるぶしのあたりに親指を当ててているように見えたので、その通りにやっていたんですが、

疲れて仕方がなかったので、一年かかって工夫していたのですが、まさかこんなにあっさりと解決するなんて。多分これを教えてくれた人は

小指側を使う、なんていうことは知らなかったんでしょう』



身体運動の法則なのだ。うん。