操体法大辞典

操体の専門家による、操体の最新情報など

講習記録(他を生かす)

操体の特徴。

『他を生かす』

『自分が大切にしてきたものを生かしてくれる』



例えばある人が楽をききわけさせ、比較対照の運動分析と操法を行っていたとする。こういうときに「快適感覚をききわけ、味わう」という進化したコンセプトを紹介されたらどうなるか。



経験から言えば、大抵の人は自分のスタイルを変えたがらない。というかそれまでのスタイルにしがみついている。何故ならそのほうが楽だから。



昔教えた受講生達。当時を思い出すと、快適感覚とは言いながらも二者択一の瞬間脱力の操法を指導していた。というか、私もそのように習ったから。



その後、私は『楽ではなく、快適感覚をききわけ、味わう』というスタンスに切り替えた時、彼らは『今まで勉強してきたことを変えるのがこわい』と言った。



その多くは男性だったと記憶している。多分男性のほうが環境変化に適応しにくいというのは生物学的な証拠もあるのかもしれないが。

ちなみに、その変化について来たメンバーは、現在東京操体フォーラム実行委員として活躍している。



多分未だに瞬間脱力の操法をしているのだと思うが、指導した私自身が、「快適感覚をききわけ、味わう」というように変化しているのに、『当時ならったものが僕の操体です』と言い張る人もいた。



まあ、これはこれでそんなものだと思う。

(取る取らねぇはテメエの勝手と橋本敬三先生も書かれている)



私の場合?

勿論、最初にならった操体は捨てたが、引き出しとして、知識経験として役に立っている。教えて下さった小林先生にも感謝している。三浦先生にせよ、橋本敬三先生から習ったのは正体術に酷似したものだったのだから。



最初から「快適感覚をききわけ、味わう」という操体を学べる人は幸せだと思う。が、楽か辛いか比較対照の瞬間脱力の操体を最初に習い、それから「快適感覚」にシフトしたというのはもっと幸せかもしれない(時間はかかってるけど)と思う。その時間は無駄ではない。





土曜日。臨床家向け講座。

手関節の外旋に対する介助を行った。

これは立位か腰掛位でやることが多いが(勿論仰臥でも伏臥でも側臥でもできる)、以前東京操体フォーラムの実技指導で、立位での手関節内旋外旋を行ったところ、「立位で操体ができるとは思わなかった」というご意見をいただいた。確かにいわゆる手技療法や治療というものは立位ではあまり行わないだろう。

・仰臥位

・伏臥位

位は思いつくだろうし、おおよそはこの二つに集約されると思う。

しかし

・仰臥下肢伸展位

・仰臥下肢伸展位(両足が操者の膝の上に乗っている

・仰臥膝二分の一屈曲位(足底は床に着いている。いわゆる普通の膝二分の一屈曲位)

・仰臥膝二分の一屈曲位(足底は操者の膝の上に乗っている)

・仰臥膝二分の一屈曲位(足底は浮いている。操者が保持しているか、台などの上に足が乗っている)

・仰臥片膝二分の一屈曲位

・伏臥下肢伸展位

・伏臥膝二分の一屈曲位

・伏臥片膝二分の一屈曲位

・立位

・胡座位

・椅座位

・正座位

・正座つまさき立位

・側臥位

・四つんばい



とか、いくらでもある。



この日やったのが、



・操者、被験者とも共に立位(正面で向かい合う)片方ずつ、あるいは両手、または両手合掌

・操者、被験者の横に立ち、横から介助

・操者、ベッドに腰掛けさせた被験者に上肢を天井に向けて挙上させ、ベッドに立って上から介助

・被験者は立位、操者は正座位か胡座位で介助



など。



種類が多くて驚くかもしれないが、感覚のききわけというのはどのポジションかによって違うので、上肢の外旋、という動診だけでも相当な数が考えられる。



基本は、操者被験者共に立位、向かい合ってというものだが、自分用にメモを録っておいたことを

少し書いておく。



操者は自然体から、右手を使うのであればそれなりのポジションをとる。左手ならそれなりに。

あらかじめ内旋位にきめるが、その時、操者の腰は捻転しない(これが結構上級ワザだ)。

つまり、腰で逃げない。しかし、介助を与える時は重心移動の法則に従う。この使い分けをしっかりしたいところだ。



それから私は身長差が20センチ以上あるKさんと組んだ。

Kさんに対して両手首前腕の外旋。身長差のある人とやると、ものすごく勉強になる。(片手ならともかく、両手で介助というのはある意味でチャレンジだ)



この場合、身長差や体格差は言い訳にならない(笑)。言い訳は却下される。



Kさんと私の手を比べたら指は関節二本分違った(汗)

私と師匠では関節一本分違うが、それ以上である。私が介助を与えるには別に大丈夫だがKさんが私の手にかけるときは結構大変そうだった(私の手が小さいから)。



日曜の講習



日曜の講習は人数が多い。



操体法の源流である正体術では、瞬間脱力をさせる。何故瞬間脱力なのかというと、瞬間急速脱力によって、骨格配列異常が整いやすいということになっている。

しかし、これは全身の力を抜かせるために瞬間脱力させているのである。また、今から40年以上前までの操体は殆ど正体術と同じであり、それが『楽』から快適感覚をききわけるというように変化したのは1981年の事だ。



正体術は「動かして診る」→「運動感覚差」主体である。

つまり『どちらが楽か、つらいか』という問いかけだ。



たわめのマとはたわめの時間を指す。これは本によって3秒から5秒と書いてある。(私も最初はそう習った)

これはなぜ3秒から5秒という設定になっているかというと、それ以上たわめると、辛くなるからだ。

これは「楽」な動きをききわけさせているのでこれでもいいが、楽な動きではなく、快適感覚を味わうとどうなるかというと、きもちよさを味わっている被験者にいきなり3秒から5秒で瞬間脱力を促すとどうなるか。



たぶん折角いいきもちを味わっているのに邪魔をされたと感じるだろう。



逆に、快適感覚を味わっていると、脱力を操者が指示しなくても、からだが自然にちからを抜いてくる。



ここで師匠と私で「瞬間急速脱力」の動診操法を再現する。

どんなものか分かっているので、やる前から師匠はニヤニヤ。私も何だかおかしくて仕方ない。最初は私が操者になって、膝二分の一屈曲位での膝の伸展。瞬間脱力(操者である私は結構笑いをこらえている。先生の演技過剰が激しく面白い)。次は私がモデルになって、伏臥下肢伸展。これなどは膝を床に落とすのだから、膝を空中で支えるとか、結構小細工が必要なのだ。操者も疲れる。



受講生の一人が

『自分は『操体法写真解説集』などを読んで今やったようにやるのが操体だと信じていた』と言っていた。

確かにそのようにやっている方もいるだろう。しかし、巡り会いというご縁と偶然、更に巡り会っても実際それを喰うか喰わないかはその人の勝手なのだ。

喰う人は喰えばよし、喰わない人はそれを選んだのだから仕方ない。



まずは立位右上肢を前に伸ばし、外旋。

こういう時よくやるのだが、師匠と私が並んで、自然な連動と不自然な連動を実演する。

左右比較対照(こういうときは比較対照も役に立つ)するので、一目瞭然なのだ。大抵私が正しいほう、師匠が妙な(変な)のを実演する。



受講生がそれぞれ、手をひねったりしているのが見える。皆早すぎ(笑)。ゆっくり動けるようになるのも、勉強のうちだ。