操体法大辞典

操体の専門家による、操体の最新情報など

呼吸について

操体法写真解説集」には「呼気と共に瞬間急速脱力する」と書かれている。なのでそのようにしているケースもあると思う。



しかし、これは後に操体が「患者の快適感覚に委ねた」ものになった時、橋本敬三先生も、85歳を過ぎてから「呼吸は自然呼吸でいい」(何故なら、呼吸を意識しすぎると感覚のききわけをしにくくなるから)という言葉を弟子に残している。

また、操法時の呼吸は自然呼吸でいい、とも言われている。これはどういうことかと言うと、確かに動きと呼吸は相関性があり、ボディに歪みがなく、正体(せいたい)であるならば、吸って、呼気と共に動き、たわめて(ここで軽く吸ったりする)、呼気と共に脱力する、というのは理に適っているのではないかと思う。



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また、息を吐きながら脱力させる、というのは一つの工夫であったとも聞いている。なかには瞬間的に力を抜けない患者もおり

そこで瞬間的に脱力させるための工夫として、吐きながら脱力する、とか、からだの中心腰から脱力する、という創意工夫を重ねたらしい。

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しかし、何故後にそれが「自然呼吸でよい」ということになったのだろうか。



「自然呼吸でよい」というのは、様々な愁訴を抱えた患者のからだを長年診続けてきた結果だと思う。健康な自然体であれば、「吸って、吐いて、たわめて、はい、吐きながら脱力」というのは苦もなくできるのだが、歪体(わいたい)の状態で、痛みなどを抱えた患者は、それができないことがおおい。痛みと共に過緊張している場合も多く、なかなか操者の思うように、瞬間急速脱力はできないものなのである。



例えばその昔、ぎっくり腰で這う状態で、からだを横向きに丸めて痛がっているクライアントを前にしたことがある。想像がつくであろうが、浅くて早い呼吸をつけてくるし、痛みで体を強ばらせている。このような場合、呼気と共に動きを取らせ、たわめて脱力させる、などということはできない。当時はまだ、二者択一の瞬間急速脱力もやっていたのだが、横臥位なので、左右比較対照の運動分析もできないし。その時に感じたのは「呼吸は自然呼吸でいいのだ」ということだった。その後、師匠の著書で「呼吸は自然呼吸でいい」というのを読んで、全くその通りだ、と思ったのである。



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呼吸といえば、たまに聞く勘違いがある。

腹式呼吸操体をやる」というものだ。これはおそらく、「万病を治せる妙療法」に書かれている、「男を磨くためのハラをつくる訓練」←うろ覚えだが、と書かれた一枚のイラストだと思う。

これは、夜寝る前に床の中で行う、腹式呼吸の方法である。目的はその通りで「ハラを練るため」である。これはあくまで日常生活の上の鍛錬であって、何もからだの調子が悪いときに、腹式呼吸をしながら操法をやれ、ということではない。

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