操体法大辞典

操体の専門家による、操体の最新情報など

操体と「欲張るな」。

 操体は勿論自力自療が基本であるが、これはあくまでも「健康状態が間に合っていて、自分でメンテナンスすることができる人」というのが、前提である。

また、からだを動かしたからと言って、それだけで治せるわけではない。何故ならあらゆる症状疾患は、「息食動想」の4つの最小限必須責任生活条件(人様に代わってもらえない、あるいは自律可能な営み)のアンバランスが原因だからである。

からだを動かしただけで症状疾患が良くなるのだったら、この世から病気やからだのトラブルはなくなるハズだし、操体はもっと広まっているはずだ。

からだを動かすだけではなく、食事、呼吸、精神活動のバランスも整える必要がある。

体重過多で、膝が痛いと言って、しかし食生活や生活習慣を改めず、単に膝の痛みだけ取って欲しいのだったらそれは無理な相談である。

また、「一度操体を受ければ一発で良くなって、もう二度とトラブルは起こらない」というような、夢のようなことを期待してくる方もいるが、そんなことはない。通常は悪くするのにかかった時間をかけてバランスを整え、自然治癒力を高めていくのだが、そのスピードが早くなるだけだ。

世の中には「一発屋」という方々もおられるが、大抵はその時は劇的に効果がでるが、長持ちしない。なので、また通院するコトになる。

操体は抗生物質的というよりは、漢方薬的に効くのである。漢方は効かないという偏見を持った方もおられるが、漢方の歴史は新薬よりも長い。ゆっくりとしかし着実に効くのである。
例えば怪我をしたとか、止血や抗生物質が必要な時もあるが、操体操体の出番があるのだ、

先日も、自分が操体を受ければ子供さんにやってあげられるかと期待してきたお母さんがおられたが、家でできることは限られている。

操体を受ければ人様にやってあげられるか、というとそんな甘いものではない。ましてや一度受けただけで、というのは論外である。

というか、欲張りだ(笑)。

操体では「頑張るな」「威張るな」「欲ばるな」「縛るな」という。

からだは「きもちよく治りたい」と思っているのに、エゴが「あれもこれもやれば早く治るかもしれない」と、欲ばるので、治りが遅くなるのである。

武術を考えて頂ければ一番いいのだが、操体を人様に施すのは、武術の修練と同じようなものなのである。形は見よう見まねで真似できるかもしれないが、実戦には使えない。

なので、逆に言えば、「まず、プロの指導を受けなさい」と言っているのだ。

自己流でヘンなクセをつけて3年やるのだったら、一流の先生に一ヶ月習ったほうが効果的だ。
ヘンなクセを直すのに3年かかる。

元気な人が健康増進維持のためにやるにせよ、まずプロの施術を受けてみて、きもちよさ、というものを体感し、それから様々な動き方を習ったほうがいい。そうすれば健康維持増進という目的に適うのである。

元気が足りない、あるいは間に合っていない人が、現在抱えている症状疾患をどうにかしたいのだったら、その時が我々操体のプロの出番である。

★ここを勘違いして、間に合っていないのに、自分で辛い努力をして、結局やめてしまうケースがある。

★からだが動かないとか、動けない場合、無理に動かしてからだを痛めつけてどうするのだろう。操体のプロは、動けないとか、からだの自由が利かない場合にも対応できるのである。

「間に合っていない人」達は往々にして、「きもちのよさのききわけ」がしにくいからだと心の状態になっている。それを助けるのが我々操体専門家の役割だ。
間に合っていないのに、自分でやろうとしても、大変なのである。

まずは、操体の専門家に預け、自分でメンテできるくらいまで、健康の度合いが回復すれば、今度は自力自動(自分で行う)の操体を覚えて、日々のメンテをすればいいのだ。