操体法大辞典

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ジョブズなら、どうするか?橋本敬三だったらどうするか?

 1994年来のMacユーザである。CEO退任のニュースを聞いた時、やはり体調が良くないのだろうと思っていた。いつかは来ると思っていたが、まさかこんなに急だとは思わなかった。

私の側には常にMacがあった(今でもある)。手元にはiPhoneがあるし、iPadもある。今までお世話になった愛機達を思い出してみると、相当な数になる。

どん底時代のAppleも知っているし、Macユーザがマイノリティだった時代もあった。

Mac Expo Japanで、ジョブズの基調講演を聴いたことがある。確か抽選に当たったからだと思う。同時通訳のイヤホンをつけていたが、途中で外してしまった。ジョブズの平易でクリアな英語は十分理解できるものだったし、通訳というフィルタを通して聞くのは勿体なかったのである。「生ジョブズ」のプレゼンを聞いたことがある、というのは私の密かな心の支えでもあるのだ。


これから心配されるのは、Appleの動向である。ジョブズ亡き後、果たして今までのような商品開発ができるのか。





 しかし、彼の代わりはいないかもしれないが、「ジョブズなら、どう考えるか」という思考と価値観がApple社員たちに共有化されているそうである。つまり、ジョブズ的な思考をもった「ジョブズの子供達」が育っているのである。





 何年前のことだったか。ある時師匠から「自分はいつも『橋本敬三だったらどう考えるか』と自問自答している」という話を聞いたことがある。実際に橋本先生が「時の人」として注目されていたのは、79歳辺りから現役引退の85歳までの非常に短い時間だった。師匠にも「自分には時間がない」と言われていたそうだ。





 師匠は橋本先生が引退してから温古堂にいたのではなく、バリバリの現役時代を知っている。動診操法の最中に患者が力(りき)んだために、肋骨にヒビが入ったり、驚く程アクロバティックなこともされていたらしい。また、動きがとれないリウマチの患者に対して色々苦労されていたという話も聞いている。とにかく動けないのだし、動くと痛いのだから苦労するのは当然である。おそらく「動きがとれない患者に対してはどうするか」という操体の盲点に気がつかれていたのだと思う。動けない場合には、逃避反応を利用するとか、大人でも脇腹を刺激するなどの方法もあり、多分そちらで対応されていたのではないかと思う。





 また、橋本先生は「楽と快の違い」が分かっていたのだが、それを明確にして世の中に出す時間がなかったのである。





 師匠はそれを思い起こすと「お師匠(橋本先生)の時代に『皮膚』に気がついていたら」と思うのだそうだ。



一方「お師匠(橋本先生)が今も元気だったら、多分皮膚へのアプローチと、それ以降の診断と操法に絶対気がついていたはずだ」とも言われる。





 ここでも「真似する」という訓練が役に立つ。小説や俳句などの教室で「好きな作家の真似から入りなさい」という指導をすると、必ず「そういうことをすると、自分の個性が生かせないのではないですか」と言う生徒が必ずいるらしい。つまり最初から「オリジナリティのあるモノを」と考えているのである。実際は、どんなジャンルにせよ、好きな作家の作品を真似(模写でも何でも)することによって、その人の「個性」がより一層生きる作品が生まれるらしい。





 それはさておき、私も常日頃「師匠だったらどうするか」と考えている。「橋本先生だったらどうするか」とも考える。そのほうが心強いではないか。




 



 






















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カーマイン・ガロ




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(2010-07-15)


コメント:ジョブズのプレゼンの構造と、その裏に隠された見えない努力。