操体法大辞典

操体の専門家による、操体の最新情報など

年下の「先生」を「先生」と呼べるかどうかがカギなのだ。

 早いもので、操体の講習(専門家養成)をはじめて13年になる。その中からは何人かが操体の専門家として活躍しているし、大抵は私に基礎を習った後、もっと上のステージを目指して、三浦先生の門下になっている。私が今、専門家剥けの講習をやっていないのは、どうせだったら私も指導しているし、操体を学ぶのだったら、操体臨床家への登竜門で勉強すればいいじゃないかという気持ちからである。
私が現在やっているのは「視診触診」「足趾」「連動」など、補講的なものだが、本来視診触診ができている、という前提で操体を学んで欲しいのだが、視診触診は大抵できないのである。

臨床に活かせる操体を体得するのにある程度時間がかかるのは、「診断法」の勉強に時間を割いているからだ。
例えば、もみ系整体や、足裏などが比較的短期で習得できる、とうたっているのは、診断法を教えていないからであり、診断の体系を持たないものは「慰安」「リラクゼーション」というしかないのである。「確固たる診断体系をもつもの」を学ぶことは時間がかかる。短期で覚えられるというのは、パターンの伝授にすぎないのである。

受講生の皆さん、今日から実技です。ご精進下さい。

私の師匠である三浦寛先生は橋本敬三先生の命に従って、23歳の時世田谷に開業した。その後、30代にはいって「操体法東京研究会」(当時は「操体療法研究会」)を設立し、橋本敬三先生を顧問として(今でも、祖神の里に帰られても顧問なのだ)操体の専門家の指導を始めた。
というのは、橋本先生は定例講習などはやっていなかったのである。現在活躍している70代から90代の先生方の多くは、本当は橋本先生に習いたかったのだろうが、橋本先生が「東京に弟子の三浦がいるから、そっちで勉強しなさい」と、言われたそうである。

当時30代始めの三浦先生に対して、40代50代、60代の先生方が、操体を学びたくて入門したのだが、心中はどんなものだったのだろう。その中の一人は宴会の席で「オレは本当は橋本敬三に習いたかったんだけどさ、東京の弟子の三浦のところで勉強しろって言われたんだよ」と私に語った。

橋本敬三先生の命にせよ、年下で血気盛ん(多分今よりずっと盛んだったと想像)な若者を「先生」として操体を学ぶのだから、ヘンなプライドがある輩はどんな気持ちだったのだろう。

ところで、私達の業界には、一つのルールがある。それは、年下でも、その道で先にやっていれば「先生」と呼ぶというルールなのである。
エステティシャンも「先生」と呼ぶことがあるが、そんな業界なのである。
その昔、整体の学校に行ったとき「へえ」と思ったのは、白衣を着て「先生」と呼び合うことだった。面白いのだが、それも「センセイ」になる(臨床家になる)トレーニングになるのだ。その時、ある療法(実は操体をパクったもので、それはその療法の関係者内では禁句らしい)のクラスの時、19歳、私より遙かに若い男性が講師だった。自分より年下でも、その道の先達であれば「センセイ」である。なるほどなと思った。
また、人間なんておだてられれば嬉しいもので、何かを教える時「○○先生」と「○○さん」と呼ばれる場合、絶対前者のほうがテンションがあがるし、指導する姿勢も変わってくるのである(何でもそうです)。

さて、私も長いこと指導にあたってきたが、何人か、定年退職後に手に職をつけたいとか、早期退職したので、何かやりたい、という受講生に指導したことがある。今は聞かないが、当時は「私は、年下だし、オンナですし、指導は厳しいですが、それでも耐えられますか?」と聞いていた。大抵は「はい、大丈夫です」と答えるのだが、大抵は挫折する。
年下の生意気オンナにがーがー言われるのは、それまで若い女子社員をアゴで使っていたような管理職には我慢がならなかったのかもしれない(笑)。

もう一つ、会社員などからこの業界(結構「人様を癒したい」とか言うのだが、そんな甘いものではない)に足を踏み込み、全く業界知識がない人は(男性に多い)、例えば私のほうが多少年上であっても、年下であっても、まず「畠山センセイ」と言えないのである。
これで、臨床家になれるかどうかが分かるといっても間違いではないと思う。要は、オンナ如きに「センセイ」と言えないのであろうと推測される。
まあ、これは業界の決まり事みたいなものだと思えばいいのだ。

私は現在、操体法東京研究会の定例講習のサブ講師をしているが、欠席の連絡やその他の事務も引き受けているが、最初は皆さん、事務方のアシスタントだと思うらしい(笑)。まあ、そうなんだけど。

前回途中から入ってきた方が、操体関連のサイトを印刷してファイルしていたが、私のサイトだった(笑)。

「私のサイトを見て下さったのですか、ありがとうございます」と言ったところ「これを書かれたのですか???」と驚かれた。

多分、ピアスを五個あけて、まつげエクステでまつげバサバサのよくわからんねーちゃんが操体の説明を長々と書いたとは信じられないのだろう(笑)。

まあ、このブログを読んで「畠山は男だ」と思っていたという方も少なくないので(爆)、それはそれでそんなものである。

三浦先生がよく言われるのは「オレの受講生と並んで写真撮った時、受講生のほうがお師匠に見えるってのはな(笑)」ということなのだが、年齢を重ねているから、キャリアが長いというわけではないのである。