操体法大辞典

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きもちよさの押し売り。

これは、最もやってはいけないことである。

先日、あるクライアント(他で操体を受けたそうである)が言うには
「動けばきもちいいでしょ」と言われたと言っていた。

話を聞くと、どうやらその先生は(私もなまじっか知っているので、
参ったなという感じ)、身体能力が高いので、

「動くときもちいい」という、希有なからだの持ち主なのである。

「自分がそうだから、他人もそうであろう」というわけで
クライアントにも「ね、動くときもちいいでしょ」
「からだが繋がるでしょ」というらしい。

ところが、多くのクライアントは、
からだに不調を抱えているので
「快か不快かききわけるちから」(原始感覚)が鈍っていることが
ある。

そういう時に「動かすときもちいいでしょ」と言われても
そうは行かないものである。

 

また、別の方からは、操体を受けて
「どうですか?きもちいいでしょ」
「じわ〜っときませんか」
と、

「きもちよくて当然」という言葉をかけられたのだが

「よくわかんなかった」のだそうだ。

そして「何パーセントくらいのきもちよさですか」
と、さらに追従質問され

きもちよくも何ともなかったのだが
仕方ないので

「50パーセントくらい」と答えたら
先生にムッとされたらしい。

これは、

「きもちよさの押し売り」だ。

きもちいいかどうか確認せずに
「きもちいいでしょ」と、決めつけられても困るではないか。

「この動き、きもちのよさがききわけられますか?」と
聞くなら「ハイ」とか「イイエ」と答えられるが、

「きもちいいでしょ?何パーセント?」と聞かれたら
きもちよくない場合はどうするのだ。

答えようがないではないか(笑)

この話をするとゲラゲラ笑ったり、眉にシワを寄せたりする
受講生もいるが、笑ったり眉にシワを寄せたりする前に
「果たしてそういうことをしていないか」注意する必要がある。

そのような体験をされた方に聞いてみると
「面倒臭いから適当に答える」(ホントです・・)

という答えが圧倒的に多かった。

「きもちのよさ」というのは感覚だ。
人によって違う。
同じことを同じだけやっても、当人の官能や
症状、体調、精神状態などによっても変わってくる。

くれぐれも

「この動きはきもちいいハズ」とか、決めつけてはいけない。

きもちのよさをききわける操体臨床は
「操者の決めつけを廃し、からだにききわけて行う」のである。

2015年4月29日(水)


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