操体法大辞典

操体の専門家による、操体の最新情報など

動診についての説明(VisionS Vol.3 付録より

操体の用語についての解説 文責 畠山裕美 監修 三浦寛



動診について



動診、すなわち「動かして診る」というのは、操体独特のボディの診断評価法である。

例えば、東洋医学、民間療法などのなかには、形態観察に優れているものが多い。

歪み、硬結など、構造的な研究、診断評価、あるいは形態的に人体を分類するなど、そちらに重きをおいているものがほとんどである(これを、構造力学的な診方、と言っておこう)。

しかし、操体には、それだけではなく、『形態の歪みは動かして診る』(歪みは動かしてみればもっとよくわかる)、更に『動かしてみて、感覚、本人にしかわからない感覚の分析をする』という、運動力学的な見方がある。それを動診という。

『形態の歪みを診て治すより、動かして診たほうが早い(有効である:意訳:筆者)というのが、橋本敬三先生の考えであったようだ。

医学の道を歩んで一人の医師となったが、哲学者でもあった。



勿論、操体でも構造的な診断評価は重視するが、「動かしてみる」という診断評価法の中で形態的(構造的)に診る、しつこくいうならば、「構造」「動力学」の両面からボディを診るのが操体の特徴であり、そこに「動かしてみての感覚分析」という「快不快の聞き分け」のが加わるのが操体の臨床なのだ。



基本の基本であるが、人間の動きは主に8つに分類される。

首でいうなら、前後屈、左右捻転、左右側屈、あとの二つは自力ではやりにくいが

牽引と圧迫(引き込みと押し込み)である。これはオクタント(「8」を示すオランダ語【octant】八分儀はちぶんぎ。[広辞苑第五版]からきている。

この施術者が分類して、受診者が分析するのが動診である。



動診(と、感覚の聞き分け)の目的は、構造的な診方だけでは解決できない、運動力学的な診方を補填するものであった。



動診を行う際、それも操者がどう介入するのかその目的をしっかり認識していただきたい。



例えば「一人操体」という言葉を用いる人がいるが、それは『一人でやっているから一人操体』という単純な理由ではない。そもそも「一人操体」という言葉は橋本先生の中にはない。誰かが勝手に使った隠語、俗語である。



操体は自力自療であるのだから、勿論未病医学として、個人がそれぞれできればいいのだが、私たち臨床家の元には『それができない』健康度数が低い方が助けを求めていらっしゃる。そのような方のために、我々のようなプロが存在するのだ。

感覚の聞き分け(気持ちいいのか悪いのか)は、本人にしかわからない。

なので、一人で感覚分析を行おうが、操者がいようが操者が何人いようが、操者が口頭誘導だけで個人個人にそれぞれの感覚分析を試みてもらっても、それは自力自療なのである。



その時、動診を行う際に必要な目的を挙げてみる。

何故、操者が必要なのか、考えていただきたい。



・動きに対する安定感

・動きに対する運動充実感

・局所関節の動きを伴う連動性の誘発(口頭での誘導を含む)

・感覚の聞き分け



これらを引き出すためには、初診、慣れていない被験者(受け手)に対しては操者が必要なのだ。これらを上手く使い分け操ることによって、被験者の感覚の聞き分けを助け、快適感覚を味わい、ボディの歪みを正し、その二次的な結果として症状疾患が解消されるということを、指導者(操者)は理解する必要がある。