操体法大辞典

操体の専門家による、操体の最新情報など

操体は教養であるべき

操体法の創始者、橋本敬三先生は、患者には『もとに返ればいい』『きもちいいことに返ればいい』と、簡単そうに言われていたという。しかし、お弟子達には『儂はやっかいな学問に首をつっこんでしまった』あるいは『操体は面白いぞ、一生楽しめるからな』などと言われている。患者さんからしてみれば、やっかいだとか難しいという先入観を与えないために、簡単そうに言ったのだと思う。



さて、最近の傾向だが操体を勉強したいという人が増えているようだ。特に団塊の世代が大量に退職し、次の職を求めて何か手に職をつけたいと思うらしい。そういうときに、資本がかからないボディワーク系の仕事に目が行くのかもしれない。



私のところでも操体の講習をやっているが、金額は12回程度で15万円という価格設定になっている。これは何故かというと、対象者が鍼灸師や、柔道整復師理学療法士などの医療従事者や、手技療法家、インストラクターなどの専業者だからである。ということは、対象は『臨床をやる臨床家』なのだ。そのために、プログラムの内容は的を絞るし、その方の仕事に適したものを考えている。



たまに、これを勘違いして要は人様のからだに触れたことがない人が、いきなり12回15万円で操体の指導、臨床ができるのだと思う人がいる。

これははっきり言って難しいと思うし、12回程度では皮膚へのアプローチまではやることはできない。なので、その後続けて勉強したければすればいし、私の師匠の講習を紹介したりしている。私のところで勉強してから師匠の講習を受けている方も多い。というか操体というものはそれだけ奥が深く、勉強する楽しみ、喜びを与えてくれる。



その昔、橋本敬三先生がご高齢の頃、操体の勉強をしていた人が、仙台の橋本先生を訪ねたという。ご高齢ともなれば、される操法の数も限られてくる。それが有名な『足関節の背屈』『膝の左右傾倒』『伏臥膝関節腋窩挙上』などである。それをみたその方は『なんだ、操体って簡単じゃないか』と、周囲が止めるのを聞かずに開業して、結局は半年足らずで廃業してしまったという。

橋本先生のように、熟練した方の動きをみると、簡単そうに見えるのだ。



操体は簡単ではない。それだけは言っておこう。でも、一生楽しめる。

このような素晴らしいものを、短期間でさらりと通り越してしまうのは何とも勿体ない。



野口三千三先生は、朝日カルチャーセンターでの『野口体操』の位置づけを『教養』にされたという(現在、操体法の講座は『教養』に入っている)。また、野口整体野口晴哉氏も『整体は教養である』と、言われたと覚えている。師匠も最近よく『操体は教養であるべき』と言われている。