操体法大辞典

操体の専門家による、操体の最新情報など

呼吸と呼吸法。

呼吸というのは「息食動想」の「息」。



昔、太極拳を習って、外気功(医療気功)を習ったことがある。

その時に共通していたのは、舌先を上前歯の裏に軽くつけると

教わった。何でだろうと思っていたが、操体を学び始めてから気がついた。舌先を上前歯の裏につけると、口呼吸ができないのだ。

例え、口の筋肉をゆるめていても、口を開けていても、鼻呼吸になる。確かに『口呼吸するな。鼻呼吸せい』というよりも、確実に鼻呼吸ができる。中には『私、鼻炎なんっすよ』とか、絶対一言いう輩がいたに違いないが、『舌先を上前歯の裏に軽くつけよ』と言えば、特に何の疑問もなくやることができる。また、気功の先生に『何故ですか』と聞いてみたところ、『気を巡らすため』とのことだった。これもなるほど、という理由で、口で呼吸すると、呼吸は胸部腹部へ下がるが、鼻呼吸だと上に上がる。また『気を巡らすため』と言えば、皆疑わずにやるだろう。実際試すとわかるが、舌先を上前歯裏につけたほうが、力まず自然に鼻呼吸ができるのは確かである。



私達は、「目線をとおす」(動いてくる箇所、意識づけをしたいからだのある箇所に「目線」として意識をおくこと。目を閉じていてもできる)のように「呼吸をとおす」という言葉を使うが、イメージとしては気を巡らせるような感じだろうか。

最初は点でイメージし、それを流れにしていく。私は(さすがに?)慣れているので呼吸をとおすのは得意だが、慣れるとからだの様々な部位に呼吸をとおすことができる。

例えば、点の渦状波を行っている時、操者は長時間同じ姿勢でいることが多いが、そのような時は、やはり呼吸をつかって疲労を防いだりポジションの安定をはかる。

また、単に触れているようであっても、操者が「呼吸」をコントロールすることによって、被験者のからだが大きく変化することも少なくない。

先日、ある被験者に足趾の操法を行っていた。「揉む」をやっている最中、私は一つの試みとして、ある呼吸を用いていた。一般の呼吸法のように激しいものではない。



拇趾を終えて、納めてから(足趾の操法を終えてから、納めとしての作法があるが、これがまたきもちいいのである)その被験者が言うには『すごいパワーを感じました』とのことだった。その後の他の趾の納めには、拇趾ほど快適感覚はなかったようだが、第四趾の時は『女性的な、柔らかい力ときもちよさを感じました』とのことだった。



私がおもわず心の中で「にやり」としたのは言うまでもない。

まさに拇趾の時は男性的な力を導く呼吸をとおし、題四趾の時は、女性的な力を導く

呼吸を巡らせていたのである。