東京操体フォーラム実行委員ブログ、今週は横森昌裕氏の番。
ベータエンドルフィンについて、昨年秋発行の「VisionS」に書いて下さっているので、それを引用します。
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気持ちよさを味わうことにより、脳波はα波が優位となり、視床下部ではβエンドルフィンというホルモンが分泌され、副交感神経が優位となります。
この「βエンドルフィン」がすごいのです!
人間には快楽物質となるホルモンが20種ほどあるそうですが、その中でも最強の快楽物質とされているのがβエンドルフィンだそうです。βエンドルフィンの効力は麻薬のモルヒネの数倍はあるとされますが、依存性や副作用の危険はまったくないというホルモンです。βエンドルフィンは脳内モルヒネとも言われています。数々の症例報告でβエンドルフィンと痛みの関係が報告されはじめていますが、脳内革命の著者であります春山先生の報告でも、他臓器へ転移した悪性腫瘍の難治性疼痛に苦しむ方にβエンドルフィンを3mmgクモ膜下腔に投与した結果、全例痛みから長い時間(平均33.4 時間)開放され、投与後、恍惚感を訴えた方もいたとのことです。また、ねずみを使った発癌実験で、βエンドルフィンの分泌により発癌率低下や病気にかかりにくくなる可能性を示唆された報告がされています。
この魔法のようなβエンドルフィンですが分泌させるためには、快楽物質ですから気持ちよさを感じたり、前向きに考えたり、相手に褒めてもらうなど、「快」に対して分泌されるそうです。操体では患者さん自身に一つ一つの動きに対して、気持ちよさがあるのかないのかからだに聞き分けてもらいます。気持ちよさを聞き分けられたら、味わいたい要求感覚があるのかないのかからだに聞き分けてもらうことによって、より質の高い「快」を自分自身のからだに見極めてもらうことで、βエンドルフィンが分泌される状態になります。そして気持ちよさが消えるまで最高の気持ちよさを十分に味わうことにより、βエンドルフィンが十分に分泌され、痛みを抑制する中枢神経系が働いたり、副交感神経が優位になるなどからだが治癒に向けて働きます。
第三者が気持よさや味わう時間などを決め付けてしまうという行為は、βエンドルフィンが十分に分泌されないことにより、効果がないとか一時的によくなってもすぐ元に戻ってしまうなどの訴えに繋がるのではないかと示唆されます。
その他の効果としてβエンドルフィンが分泌されることで、自律神経系では副交感神経が優位に働きます。副交感神経が優位になると、涙腺は緩み、唾液腺は分泌され、血圧・心拍数がさがり、呼吸は深くゆっくりと、消化器官は亢進され便意や尿意を催し、汗腺は特に手掌が分泌されるなどの作用効果があります。気持ちよさを十分に味わうということは、これらの臓器の作用もおこるということになり、βエンドルフィンの効果とはからだの未知数の効果を引き出す魔法のホルモンなのです。
気持ちよさを味わう他にも、口から発する言葉にもβエンドルフィンは分泌反応するそうです。ただし気持ちのよい言葉、特に褒められることでβエンドルフィンが分泌されやすくなるそうです。NHKのある番組でも、子供は褒めて育てることで、βエンドルフィンの効果が得られ健やかに育つというような内容を特集していました。言葉にはチカラがあるということが立証されていると言ってもよいのではないでしょうか。
操体では「楽」を通していた時代から「気持ちよさ」をからだに聞き分け・味わうというように進化してきました。ではなぜ「楽」ではだめなのでしょうか。
「楽」ということは、どちらが楽とか、治療前より楽になったというように、比較するものがあってはじめて「楽」という言葉が生まれます。この二極対比の「楽」ではβエンドルフィンを十分に分泌させるとこができないのです。βエンドルフィンは「快」にし
か反応しないためだったのです。
気持ちよさについて快楽物質のホルモンであるβエンドルフィンを用いて考察させて頂きました。βエンドルフィンを十分に分泌させるためには、より質の高い気持ちよさが必要だったのです。