操体法大辞典

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膝の痛みは操体でとれるのか?ロボット歩き編

2009年9月21日、22日、9月の連休 操体法集中講座開催開催



9月23日 臨床家による操体セミナー(行徳ゴールドジム



随分前に来ていたクライアントの方を思い出した。膝が痛く歩行時にトラブルがある50代後半のご婦人で、以前東北のほうで操体を受けていたらしい。その話を聞くと、彼女は『感覚をききわける』とか『自分で決める』というのが苦手で、そのセンセイが膝を左右に倒して『どちらが辛いですか?』と聞かれても分からず、結局はセンセイが『こっちに倒れにくいから、こっちがおバカさんになってるんだね』と決めていたそうだ。

色々聞いて実際動診を試すと、自力自療、つまり本人にしか分からない感覚をききわける、という行為をすっかり放棄しているのだ。つまり、「センセイお任せ」状態である。当時私もこのようなケースは初めてで、結構アタマを捻ったが、今考えると勉強させて頂いたんだなぁ、と思う。



その後その女性は千葉県の操体の先生のところに行ったのだそうだが(私も存じあげている先生だった)、いきなりズボンを降ろせと言われて、ベルトを緩めたところ、ズボンをお尻半分位まで降ろされて骨盤のチェックをされて恥ずかしい思いをしたと言っていた。『いくら向こうがお爺ちゃんで、私がオバサンだからといって、あれはひどかったワ』

★私の知る限り、こういう事をする先生って余りいないと思うんですが・・・。今やったらセクハラで訴えられますよねぇ



話を戻そう。

そのご婦人は膝の調子が長らく悪く、歩くとロボットのようになってしまうという。何某かの治療を受けると数日は人間らしい歩行ができるのだが、何日かして朝起床し立ち上がると、またロボット歩きに逆戻りしてしまう。その時一番人間歩行の期間を長く保てたのが先の東北の先生の操体だったそうで、操体に関しては「これが一番」

と確信したのだそうだ。しかし、その先生がされていたのはどうやら本人に感覚をききわけていただくというよりは、他力的に可動域を調べて、可動域の大きいほうを「楽」と断定し、瞬間急速

脱力を促したものだった。



それはさておき、いくつか動診操法を終えた。何をやったかは余り覚えていないが、大腿部に非常に大きな圧痛硬結があったことだけは覚えている。また、膝窩(ひかがみ)にも大きい硬結に触れたが「そんなに痛くないです」と、肩すかしのような返事をいただいたりした。



歩いてみたりして、客観的に自分の動きを観察すると分かるのだが、自分が今動かしてみてどうなの?という問いにはまるっきり自信がなさそうなのである。



面白かったのは、比較対照の第一分析よりも、「この動きはどうですか」という問いに対して「このまま続けてもいいですか?」(要は「快適感覚がききわけられますか」という問いには意外とをその地点まで下げている)という問いのほうがとおったということだ。



最初よりは全身の動きが良くなり、バランスがとれてきたように見えたし、全身の動きも滑らかになっている。そこで本人を立たせ軽く足踏みをさせ、少し歩かせてから、今日来た時と比べてどうか?と聞いてみた。



「私、そういうの全然わかんないんですよ」



帰ってきた答えは、私と一緒にいた私の受講生達が揃ってずっこけるようなものだった。



見た目にはからだがものすごく変化しているのに、本人はわからないというのである。鏡を見せても「よくわかりません」と、更に皆がこけるような答えが返ってきた



その方を見送ってから、私は暫くアタマを捻った。からだは「バランスが整った」とその姿で表現しているのに、本人が分からないとはこれ如何に?こんなこともあるのだ。



次の日の朝、電話が鳴った。

「もしもし、昨日伺った○○ですけど。また予約を入れたいんですが、明後日どうですか?」

聞いてみたところ、昨日受けた時点では何が何だか分からなかったのだが、朝起きたら起き抜けの膝の感じが前日に比べると、ロボットの動きが人間の動きになり、膝の痛みもないというのだ。



からだが先に変化し、その後に本人の意識が追いついたということか。



この経験は『患者に聞くな。からだに聞け』という言葉を痛感した出来事だった。