操体法大辞典

操体の専門家による、操体の最新情報など

操体は簡単に短期で身に付くか?どれくらいで操体で食えるようになりますか?

操体法東京研究会定例講習が2010年9月から開講になります。今回、最新版の『先輩諸氏の声』をアップデートしました。



操体法東京研究会2010年定例講習のご案内



橋本敬三先生は、患者に対しては「簡単だ」と言っておられたという。しかし一方著書の中では『コツがいる』と書かれている。また、弟子に対しては『大変なものに首をつっこんでしまったな』と言っておられたそうだ。思うに、患者に対して『コツがいる』とか『ちょっと難しい』と言うと患者は絶対やらないからだろう。簡単だよ、自分でもできるよ、と、やる気を喚起させるためだったのかもしれない。

しかし、橋本先生の『簡単』『ちょこちょこやればいい』という、患者さん向けの言葉を鵜呑みにして、『操体は簡単にできる』と勘違いする『治療家』がいる。

操体は、受ける側(からだ)にとっては優しく、シンプルで簡単なものであることが必要だ。しかし、受け手(受け手のからだ)にとって簡単でシンプルであっても、指導者にとっては勉強が必要である。



操体を勉強してきて思うのは、簡単に見えるものほど実は奥が深いということだ。例えば足趾の操法は、はたから見ていると簡単に見える。とっても簡単そうに見えるので、『自分もすぐできる』と思いきや、実際にやってみると奥深いことがわかる。橋本先生の治療を仙台まで見学に行って『なんだ、あんな簡単なことだったら自分にも出来る』と、開業したものの、すぐ廃業せざるを得なかったという話も聞いたことがある。名人は難易度の高いことを、さも簡単そうにやってみせるのである。



以前、今先生のビデオを見たという人が私のところに操体の講習を受けたいとやってきた。

★上手い人は簡単そうにやるものなのだ



当時はプロ向けの講習をやっていたのである(現在はその代わりに、操体法東京研究会の定例講習をすすめている。私もサブ講師として参加しているからだ)。その人は今先生のビデオを見て、簡単そうだから自分にもできると思ったらしい。また、本を読んで『足関節の背屈』を試してみたら、膝の裏のしこりがとれて、感動したそうなのだ。



もっと単純に言えば、膝を左右に倒してどちらか楽なほうに動かし、力を抜かせるヤツと、つま先を上げて力を抜かせると、膝裏のしこりがとれるのと、うつ伏せでどちらかの膝を脇のほうに引き上げるヤツの3つを覚えれば大丈夫だと思っていたらしい。



つまり、指導者自身も『簡単にできる』という錯覚をしていたのである。当時私の講習は12回から15回、60時間位あった。



結局私は彼の夢を打ち砕き、その後『簡単に覚えられないのだったら、受講はやめます』という連絡があった。どうも彼は一回の講習で、先の3つを覚えて帰るつもりで、それで臨床をやっていけると思っていたらしい。



笑ってはいけない。そういう人は本当にいるのだ。



そういえば、昔『操体を習ったらどれくらいで食えるようになりますか』という質問をした方がいた。今、操体をやっているのだろうか。