ミレニアム2 火と戯れる女 (上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)
- 作者: スティーグ・ラーソン,ヘレンハルメ 美穂,山田 美明
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2011/11/10
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ミレニアム2 火と戯れる女(下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)
- 作者: スティーグ・ラーソン,ヘレンハルメ 美穂,山田 美明
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2011/11/10
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ミレニアム「ドラゴン・タトゥーの女」に続く第2作。今回の主人公は第1作でフリーの調査員として登場したリスベット・サランデルだ。今回はリスベットの過去がポイントになる。身長150センチ、25歳だが細身で15歳くらいにしか見えないが、強い。
様子からすると、アスペルガー症候群のようでもあるが、ある陰謀により政府から「無能で保護者が必要」「凶暴」とのレッテルを貼られている。天才的ハッカーで、映像記憶が得意という特殊な才能を持つ。肩甲骨から背中いっぱいに、ドラゴン・タトゥーが入っている。第1作のタイトルはここから来ている。第1作の原題は「女を憎む男」という意味だそうだ。
今作は、大がかりな買春組織のルポルタージュを書いていた、ミレニアム(雑誌。主人公ミカエルが発行人)の二人の男女の惨殺からはじまる。この二人を狙撃したピストルに、リスベットの指紋がついていたため、リスベットは指名手配される。
後書きに、リスベットは「女を憎む男を憎む女」と書かれていた。印象深い言葉だ。第一作は確かに「女を憎む男」の話だった。
何故リスベットは魅力的なのか。多分「女を憎む男」を痛快に倒すからだろう。悪徳弁護士に報復するシーンなどは冷酷で用意周到だ。この爽快さが、魅力のひとつなのかもしれない。
私は以前、ある先輩の女性に「男性に憎しみとか感じていない?」と聞かれたことがあった。憎しみではないが、確かに「女を憎む男」は嫌いである。この場合の「女を憎む男」というのは、暴力を振るったり、性的虐待をしたりするだけではなく、女をモノ扱いするような男を指すのだろうかと思う。このような「女」であるだけで受ける「被害」は、誰でも少なからず体験していると思うが、大抵は我慢したり、不愉快な思いをしながら過ごすことになるのだ。
以前、仕事関係の飲み会で、私の隣に座っていた女性に対し、年配の男性が執拗に彼女に触っていた。彼女が「やめてください」と言ってもやめない。
私は立ち上がって「いやがってんだからやめなさい」と叫んだ。男性は自分がセクハラ行為をしたのに、逆切れし、私を罵倒した。私は証拠を残すために、その男性が叫んでいるところを携帯のビデオで撮った。我ながら冷静だと思った。
その後、事実はどうだったのかという話を、その会社の法務部のスタッフにすることになった。私はそのオヤジに触られたわけでも何でもないが、実際その時の様子を話しているうちに、不愉快な思いがフラッシュのように浮かびあがってきた。
女は自分が被害者であるのに、みじめで不愉快な思いをすることがある。
私は先日、ある文章を読むことになった。
本来はそのようなものでは「ない」はずだったが、女としては読むにたえないものだった。まず、人を傷つける。女をモノか道具のように描写している。
書いた本人は、それに対して何も感じていないということも、ショックだった。
吐き気と頭痛をもたらすほどの不快感が私を襲った。あ、これって被害者の気持ちなんだろうな、と思った。
男性数人にも査読をお願いしたが、皆口が重かった。
話はミレニアム2に戻ろう。
私は本書をiPhoneで読んでいるのだが、最後のあたりでは、数回iPhoneを落としそうになった。
「ええっ?」と叫びそうになったこともある。勿論何故かは書かない(笑)
それくらいスリリングなのである。リスベットの信じられない強さは「女を憎む男を憎む女」を代弁しているのかもしれない。