7月29日(日)、兵庫県鍼灸マッサージ師会夏季大学講座で講演をしてきた。
私が最初にPowerPointを使って「操体概論と歴史」を説明してから、三浦先生が実技というパターンである。
何度か外部で講演を行ったことがあるが、これがベストな紹介方法だと思っている。まず概要、歴史。高橋正體術を源流とし、それが進化・深化し、現在の操体に至るのか。それを知る必要がある。また「息食動想」の「動」のテクニックだけを追いかけてもそれでは足りない。
最小限必須責任責任生活であるこの4つの営みを考慮してこそ、臨床が成り立つ。
大師匠(橋本敬三先生)、師匠が共に声を大にして言っているのは、鍼灸の実践者は、構造力学だけではなく、運動力学的に診よということだ。もっと平たく言えば「動かし方が間違っていてぶっこわしたんだから、動かして治す」ということだ。そして、それには「感覚分析」が伴う。単に動かしてみるだけで、感覚を伴わないものは単なる「体操」である。体操で治ることもあるだろうが、その割合は低いだろう。
参加者の話を聞いていると、やはり「楽と快」の混同が見てとれる。「楽な動き」と「快適感覚」と、きちんと説明する。
操体実践者が壁にぶつかるのは「楽な動き」と「快適感覚」を混同しているというケースが殆どである。これは曖昧にしておけば曖昧にしておけるのだが、この違いを明確にすることによって、より深化した操体臨床が行える。
というか、この違いをはっきり認識しないと、操体の良さを生かせないばかりか、被験者を混乱させ、結果が出せなくなる。
「楽と快の違いがわかりません」という場合、最終手段として、ちょっと強烈ではあるが「愛の行為の際、『ああ、楽だ』って言いますか」と聞いてみると(笑)「言いません」という答えが返ってくる。それが分かるのだから本当は分かるのである。
それはさておき、写真では参加者の女性の下肢の長さを測っている。単に計ったのみである。この後、私がベッドに上がり、ひかがみの触診を受け、操法を幾つか受けた。その後、私のひかがみの圧痛硬結は解消した。再度先程の女性がベッドに上がり、下肢の長さをはかってみると、きれいに揃っている。
操体は「快の波動」が伝播する。本人が実際に治療を受けなくとも、快適感覚を味わっている被験者の波動が伝わり、ボディの歪みを正すのだ。
また、私がスライドで「鍼を用いなくても経絡治療はできる」という説明をしたところ、多くの参加者は驚いていたようだった。これは「哲学する操体・快からのメッセージ」にも書いてある。
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たった数時間で操体の基礎を伝えると、どうしても駆け足になってしまう。「第一分析」と「第二分析」の違い(楽な動きと快適感覚の違い)を話すだけでも、まともにやれば5、6時間はかかるのだから。それは仕方ないとして、これがきっかけになればいいなと思った。
もう一つ感じたのは、全体的に「感覚」の勉強が必要だな、と思ったこと。本来、視力に障がいを持つ方々は、驚くべき鋭敏な感覚を持っている。健常者の場合、その分ハンデがあると言ってもいいだろう。