操体法大辞典

操体の専門家による、操体の最新情報など

見落としていた触診

何回か書いているが、15年位前までは、操体法東京研究会の講習の受講生は、ほとんどが、鍼灸師柔道整復師など、臨床家がほとんどだった。というのは、講習の告知は、「月刊医道の日本」誌に、年に一度広告を掲載するのみだったから。あとは、師匠の患者様や、スポーツクラブでのクライアントで、操体に興味を持った「マダム」たち。まあ、師匠の「ファン」のマダムとか。

 

「マダム」はちょっと置いといて、ほとんどが、実際に臨床をやっている方々だった。

 

しかし最近は、受講生のほとんどが、一般の方々である。
基礎的な解剖学、生理学、業界の知識などがない状態の場合のほうが多い。


中には国家資格ホルダーや、大学で専門的に学んだとか、実際に他の手技で開業している方もいるが、ごくごく少数である。また、実際に人様のからだに、お金をいただいて触れるという体験が、非常に少ない。

 

というわけで、基礎的なこと、例えば頸椎は哺乳類ならキリンでもイルカでも、人間でも7つであり、略語はCというとか、胸椎はTというとか(師匠はThと言うが、これは少し昔の言い方で、20数年前に私が習った時は、すでにTと言っていた)。

 

そういうこともあり、たまに「解剖学講座」とか、足趾の操法集中講座の中で少し説明したりしていた。

と、「足趾の操法集中講座」の受講生から「ひかがみの触診を詳しく教えて欲しい」というリクエストがあったのと、師匠から「オレも出るから視診触診の講座をやれば」ということで、月に一度、足趾の操法集中講座参加の受講生を中心に、「視診触診講座」を行っている。

 

操体で最も特長的な触診と言えば、膝窩(しっか)ひかがみの触診である。

これでその人の操体のスキルがわかると言ってもいい。

「(症状疾患を訴えていても)ひかがみに圧痛硬結がない人もいる」
と言った方もいらっしゃったが、それは「触診の仕方がヘタなのだ」と
いうのが師匠と私の共通認識だった。

例えば、薬物や怪我をしても、ひかがみには何らかの反応がある。
ひかがみとは、ボディの歪みや異変が一番わかるところなのである。

「プロなら10秒で当てろ」と言われる。

逃避反応が起こるくらいまで瞬時にあてるのがベスト。

臨床の時、触診(診断)に時間がかかっては、診る時間が
減ってしまうからだ。

 

また、頸椎も必ず診る箇所である。
例えば腰痛持ちは、殆ど頸椎に以上がある。
頸椎といっても、頸椎周辺の軟部組織や腱に異常がある。

普通頸椎は触診するが、
師匠直伝の見方は、顔をみただけで、頸椎や僧帽筋、胸鎖乳突筋のどこに
異常があるかわかる。

あとは、臀部梨状筋とか、脊柱起立筋の診方とか、実は色々あるのだ。

 

というわけで、視診触診はこの辺りをしっかり詰めればいいかと思っていたら、

 

昨日の講習で、T12 (胸椎12番)に触れるという課題があった。

私は整体の学校にのんびり一年間いたが、
他の生徒が「インターン」と称して(私たちは「人買い」と言っていた)、
学校の先生が運営する系列の接骨院に安い時給で派遣されているのに、
「行かない」と言って、ひたすら毎日講義を聴き、モデルがいたので、
毎日触診をやっていたのである。特に、男子が上を脱いでうつ伏せで
背中を出して、仙骨のあたりまでズボンを下ろしてくれるので(笑)
被験者には全く困らなかったのである。

 

元々触診は得意だったのだが(気功を修めた後だったので、触診が
上達し、ますます好きになっていた)、この時期に
ひたすら触診をくり返し、骨模型をひたすら眺め、触り、という
はたから診ると多少ヘンタイな修業が役に立っているのではないかと
思う。

 

話を戻そう。

T12に触れるという課題があった。

受講生の一人が師匠に「T12 に触れろ」と指示を受け、
迷っているので「ここ」と、示した。

 

「もし、分からなかったら、また、痩せているひとだったら『浮肋』から
辿っても大丈夫」と言ったところ

受講生(3年目くらい)が
「フロクって、何ですか??」と聞いてきたのである。

 

これは私にとって多少のショックであった。
3年間操体を勉強していても、「浮肋」を知らないのか??(この辺りは、基礎の基礎なので、分かっているだろうということを前提に指導している)

 

これは、椎骨の触り方とか、目安とか、
そのアタリから行かなければならないのでは??

 

T12 は、慣れれば簡単に「これじゃん」とわかる。
C7もわかる。

というわけで、

次回の「視診触診講座」は、頸椎の診方と基礎的骨格の話だな。