以前松岡正剛校長(わたくしはISIS編集学校の学衆つまり生徒だったので校長なのです)から、
「編集も結局は身体論になる」というお話を聴いたことがあります。
私が「からだ」について興味を持ったのは、3歳位の頃。
「人体図鑑」と「魚類図鑑」ばかり読んでいたようで(サカナが好きなのは、先祖代々気仙沼で船関係の一族だったからかも)、
「今も大して変わらないな」と思っています。
私は体育が大嫌いです。特に球技とかはダメです。
しかし、太極拳とか、武術とかヨガとか、自分で練るものは好きです。
さて、新しい講習のタームが始まると、最初は座学から始まります。
「座学なんていいから、早くテクニックを教えて欲しい」という方もたまにいるようですが、それは順番違いというものです。
操体の理論は独特のものがあります。
まず、病気になる順番と治る順番というのが、ウイルヒョウに代表される「病理学」的な考え方とはまったく逆だからです。
簡単に言えば、今は「胃潰瘍の原因はピロリ菌だから、抗生物質でピロリ菌を除去すればいい」というのが現代医学です。からだの中に病気の原因があるという考え方です。
操体は「息食動想+環境」のバランスが崩れることにより、ボディに歪みが生じ、そこから微症状が起こり、症状疾患が進行する、ボディのつくり、つまり外側に病気の原因があるという考え方です。
この辺りをちゃんと理解できていないと、後で混乱することになります。
そして、座学が終わるとやっと「身体運動の法則」です。
これは操体関係者には「般若身経」(般若心経ではない)としてよく知られいてるものですが、これには二つの捉え方があります。
- 健康体操として(関西地方、あるいは体操としてやっているところは概ねこれ)
- からだの使い方、動かし方の法則として
橋本先生もこの二つを結構混同して指導していた傾向があります。
患者さんには1を指導し、弟子には2を指導し、1を覚えた関西系の人が「健康体操」として操体を関西地方に持ち込んだため、関西では「○○操体の会」という感じで、マダムの体操サークルになっています。なので、操体を「臨床」とは捉えていません。
私はやはり橋本敬三先生が「世界で一番短いお経になぞらえた、身体運動の法則」として2を選択しています。また、医師が実際の臨床で用いていた手法として「操体法」(臨床の部分を指す)を理解しています。
個人的には「からだの使い方動かし方のスタンダードであり」「診断分析法であり」「治療法(セルフケア)でもある」と捉えています。
この辺りもちゃんと把握しておく必要があります。
特に般若身経は「あ、あの健康体操でしょ」と、知っている人は多いのですが、フォーラムなどでやっていただくと、ちゃんとできる人は「少ない」のです。
また、般若身経自体、橋本敬三先生の時代にもバージョンアップしています。
はい、ここはしつこく書いているので、読んだことのある方は「またかい」と飛ばして下さい(笑)
しつこく書きますが、関西地方では「膝のちからをホッとゆるめる」以前のものが今だに普通にまかり通っており、一昨年三浦先生が般若身経の講義を大阪でやった際、膝のちからをゆるめるモデル役の瀧澤フォーラム副実行委員長を見て、大阪マダムが「膝曲げてる!」とザワザワしていました。
勿論、熱心な指導をなさっている方は「膝のちからをホッとゆるめる」ことを指導なさっていたのだと思いますが、それが末端の体操教室まで伝わっておらず、
関西地方では「側屈」が「わき伸ばし」という名称に変更されているのも事実です。
これは、膝の力をゆるめないで側屈を行うと、股関節に負担がかかるため、関西エリアの指導者が、重心の移動を行わずに「体側を伸ばす」というように変えているのです。
また、名称も「基本動作」のように変えています。
聞いた話によると、橋本敬三先生のちょっとしたおちゃめ心でもじった「般若身経」を、誰かが「般若心経」と間違えて関西に持ち帰り、名称的なトラブルが起こったため「般若身経」ではなく「基本動作」という言葉になったそうです。
そうです。バージョンアップしているのです。
以前は「腰主動」で、からだの中心腰を要にしていました。
前屈、後屈、側屈は、腰から動いても自然に連動します。
ところが、捻転だけは、腰から動くと、重心移動と連動が「自然なもの」とは逆になります。
この件に関しては、以前太極拳をやっていたという操体関係者が「般若身経の捻転は間違っている」と言っていました。
私は太極拳をやっていたので「ははん」とわかったのです。捻転だけは、末端から動かないと、不自然なのです。
当時は「捻転だけは例外」と思っていたのですが、
ある時、丁度三浦先生が「操体法入門」の手関節編と足関節編を出版する前
般若身経は、腰から動くのではなく、末端つまり立位の場合は母趾球から動きが起こるということがわかった、と教えて下さいました。
私自身「なるほど。これで捻転のナゾが解けた。前屈も後屈も捻転も側屈も全部母趾球から動きを起こせばいいんだ」と納得しました。
これが「末端主動説」です。
受講生達は最初「?」という顔になります。
なぜ、操体を学びにきたのに、武術の訓練みたいなことをするのか?
これは、いままで生きてきた過程で身につけた、からだの使い方、動かし方のクセをリセットし「操体的なからだ」を作るための修業でもあります。
これは、あらゆる芸術、武術、手技療法などに通じる「作法」でもあります。
「上手い下手」はここからくると言っても間違いありません。
その秘密を解き明かすのが2016年春季東京操体フォーラムです。