操体の臨床に必要なのは、「操者自身のからだの操り方」「操者が被験者をよく見ており、動きを確認できるか」「操者が被験者に適切な言葉をかけているか」ではないかと思います。
操体というのは「単に相手に動いて貰う」ものではありません。
実際にやってみるとわかると思いますが、他者を「自分の思い通りに動かす」というのは、大変なことなのです。
かといって、操者が被験者に断りもなくバンバン進めて行くのは「他力療法」であり、操体とは言えません。
意外と忘れがちなのが「どういうコミュニケーションを用いるか」ということです(言語が通じなくても、ジェスチャで通じることもありますが、ここは日本語ということでお考え下さいね)。
例えば「講習の場」ですが、皆さん動いてくれるし、専門用語も分かるので、ちゃんと動いてくれます。
しかし「操体は初めて」という人に、それが通用すると思ったら、大間違いです。
相手にわかるようなコミュニケーションが必要です。
コミュニケーションと言えば、言葉のみではなく、接触も入りますね。
私の「視診触診」では「失礼にならない触れ方」を伝えていますが、整体院などで「セクハラ」とか言われてしまうのは、この「失礼にならない触れ方」をしていないからです。
★女性は、この「失礼な触れ方」にとても敏感です。また、よく「おばあちゃんだから気にしないだろう」というオッサン(すいません)がいますが、年配の女性ほど気にします。
そして、先日ですが、膝の開閉の動診と操法をやっていました。
当然ですが「足を開いて」と言おうものならば、私の鉄拳が飛んできますので、受講生は「膝を倒して」とか、失礼に当たらない言葉を使います。
★昔、40代の女性に「マタ開いて」と言った輩がいました。
私が雷を落としたのは当然です。
★また、ある輩は、ご夫婦でいらしたクライアントの奥方に「お母さん」を連発したところ、実は御主人はサラリーマンで、奥方は会計事務所を構える先生だったということもありました。
そしてこれは、本人には申しわけないのですが、リマインドで書いておきます。
「膝を広げていただけますか」と言った方がいました。
これはダメです。何故ダメだかわかりますね。
「マタ開いて」「マタ広げて」と同じです。最高に失礼ですし、もし私がこういう言葉を使われたら、その治療院には二度と行きません(笑)。
ここまで書いておけば、一生忘れないでしょうから、書いておきます。
そして「膝を倒してもらえますか」とか「膝を倒してもらっていいですか」「膝をたおしてもらってみていいですか」というのを聞くこともありますが、「接客時」には
「膝を倒していただけますか」というのが、限りなく正解に近いです(標準語対応ですけどね)。また、橋本敬三先生の時代のドクターと、現在の手技療法家とではポジションが違いますし、今は、ドクターも結構丁寧な言葉を使いますよね。
いただけますか?というのは、からだに Please と、お願いしているのです。
「ほれ、動け」みたいな言い方で、果たして(本人はともかく)「からださん」はお願いを聞いてくれるでしょうか?
「動いてくれない」というのは、被験者(患者側)の問題ではなく、操者、指導者の問題なのです。
そして、考えてみて下さい。仰向けやうつ伏せになっている場合、足首は見えませんよね。見えないところを動かしてもらうには、伝え方が必要です。
以前、あると~ってもアタマのいい人が「それなら、最初から手順を全部説明しておけばいいじゃないですか」と言いましたが(非常に合理的な考え方ですね。また、実際にヒトサマのからだに触っていないからの発言です)、
人間、一つくらいならできますが、いくつかの行程を思い出しながら再現するのは結構大変なのです。操者はラクかもしれませんが、被験者にとっては、負担ですし、多分「操体ってめんどくさい」と思われてしまう恐れが大アリです。
そして、こういう「言葉の」勉強をちゃんとしておくと、後で「あの指導が本当に役に立ちました」ということになったりするのです。
「足を広げさせて頂いてよろしいですか」というのもありましたが、いくら丁寧語でも「広げさせて頂いて」はないだろう(笑)というのもありました・・
これも、書いておけば二度とやらないと思うので、書いておきます。