操体臨床を行う上での必須スキルのひとつに「連動の理解」があります。
先日講習の場で「最近『連動』っていう言葉、本とかでもよく見るよね」という話になりました。
Amazonで検索すると、最初に出てくるのが、私の師匠、三浦寛先生の本です。私もこの本を作るときはお手伝いをしましたっけ。
この本の内容ですが「関節(手首前腕)と足関節(下肢)には、それぞれ8つの動きがあり、それぞれ固有の連動があり、ボディに歪みがなければ自然な連動が起こり、歪みがあると不自然な連動が起こる」というのがコアになっています。
操体法入門―からだの連動のしくみがわかる 手関節からのアプローチ
- 作者: 三浦寛
- 出版社/メーカー: 医道の日本社
- 発売日: 2003/11
- メディア: 単行本
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さて、最近流行りの「連動」と、操体における「連動」ですが、内容をみると、ちょっと違うような気がします。
橋本敬三先生は「全身形態は連動する」とおっしゃっていました。
足の拇趾を動かしても全身の連動は分かりにくいが、拇趾を押さえて動かして貰うと、上半身が動く、すなわち連動、という説明をしていました。
というのは、操体関係者でさえ(今でも知らないかも)、15年位前までは「からだは連動するが、患者の連動は皆違う」と言っていたのです。
三浦先生が提示したのは、橋本敬三先生が晩年に「からだの中心腰からじゃなくて、末端から連動するんだよな」という言葉にヒントを得たもので、手関節(手首前腕)と足関節(下肢)には、それぞれ8つの動きがあり、それぞれ固有の連動がある、と言う理論です。
私達はこれがアタマに入っており、被験者の動きを見ると「あ、どこそこがアレだな」とかわかりますし、立位、仰臥位、横臥位、伏臥位などの静姿勢においても「あ、アレだな」と見当がつくのです。
例えば手関節(手首前腕)ならば、
- 背屈
- 掌屈
- 外旋
- 内旋
- 橈屈
- 尺屈
- 牽引(引き込み)
- 圧迫(押し込み)
の8つです。
詳しく言うと、押し込み、引き込みについては、腕全体を押し込み、引き込みした場合と、小指側側(こゆびそくがわ)を効かせた場合、親指側側(おやゆびそくがわ)を効かせた場合では、連動が異なってきます。
これが、左手関節だとすると、全身形態にどのような連動が起こるかと言えば(立位の場合を紹介します)
- 背屈(左側屈)ちょっと浅め
- 掌屈(右側屈)ちょっと浅め
- 外旋(左側屈)
- 内旋(右側屈)
- 橈屈(右捻転)
- 尺屈(右捻転)
- 牽引(左捻転)
- 圧迫(右捻転)
になります。
さて、確かに色々な方のからだを診ていると、この通りの連動が起こらない方がいます。「クライアントの連動はみんな違う」という考え方はここから来ているのですが、
上の例は「ボディに歪みがない場合の、自然な連動」と捉えます。
クライアントは、大なり小なりボディに歪みを抱えていますので「不自然な連動」が起こるのです。
そうやって考えると「クライアントの連動は皆違う」ことが分かるのです。
さらに、それならば、ボディの歪みが正されれば、自然な連動が起こるのか?と聞かれれば、それは「イエス」です。
なお、ある特定のスポーツ、特にテニスをしている人は、かなりの確率で、手首前腕の連動で「不自然な連動」が起こります。これは、運動時の動きのクセなのですが、逆に考えれば、いわゆる「テニス肘」の予防法やケアもわかってきます。
私は、ボディの歪みを正すことによって、被験者の連動が自然になるケースを数多く見てきました。
かといって、不自然な連動を目の敵にするわけではありません。
「不自然な連動をしてまで、からだのバランスを取っているんだな」と、みるのです。
これが「からだからのメッセージ」であり、それを読み取るのが、操体臨床家です。
さて、2003年に発表された「手関節からの連動」ですが、「第五分析」の時代に入り、
「新たなる全身形態の連動性」が生まれました。
これがもう、未知の世界です。
私は現在そちらを活用していますが、やはりこちらの連動の理解がベースにあるのは事実です。
8月12日~14日、毎年恒例の「お盆に操体」を開催致します。
「首に触らないで頸椎の問題を解決する」というのは、まさに連動を用いた方法になります。
2019年夏季操体講座(お盆に操体@2019)詳細のご案内(2) - 操体法大辞典