操体法大辞典

操体の専門家による、操体の最新情報など

風邪に操体でアプローチする。

本日1月5日は講習始めです。


午前中は「風邪」を引いて昨日まで咳が出ていて熱もあったという実行委員の石田さんへのアプローチを試みました。

 

今回は「操体って実際どんなことやるの?」というご質問も多いので、実際にどのようにアプローチしたのか、ご紹介しようと思います。

 

なお、これはI田さんのからだの状態を診ながら、畠山がメイン指示、実際の操者は実行委員の寺本君が行いました。

 

風邪をひくと、咳とか喉が痛いとか鼻が出るとかの「現象」ではなく、直接は関係ないけれど「反応」が出るところはどこでしょう。

 

それは、そけい部です。風邪を引くとリンパ節が腫れたりするので、反応がでるんでしょうね。また、これは鍼灸の先生から聞いたのですが、風邪を引くと、恥骨に圧痛が出ます。

 

というわけで、被験者にベッドに寝て頂き、まずは視診(いわゆる「からだの景色を見る」)、それから触診に移ります。

ひかがみ、ふくらはぎはもとより、やはり、左右のそけい部に痛みのあるしこりがあり、恥骨にも圧痛があります。

 

今日は「頓服」的な用い方として、最初に、痛みの強い左のそけい部を「狙い撃ち」します(D1')。二回目は、第五分析から行って、きもちのよさがききわけられたので、きもちのよさにゆだね、きもちのよさが消えるまで、味わっていただきました。

次に、恥骨の圧痛を除去します。これは「圧痛点除去法」を用います。

 

その次。私が石田さんの背部にまわり、大胸筋、小胸筋の辺りを触診すると、咳の後なので、痛みがあります。

 

そこをゆるめます。

 

次は「セルフケア」をやってもらうことにしました。

 

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石田さんは「快のききわけ」に慣れているので、すぐ聞き分けられました。なのでこちらも「十分味わって、快が消えるまで」味わっていただきました。

 

次は伏臥位で背中を触診します。

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T10〜12あたりに強い痛みがあります。

ここで更に脇腹を触診すると、右側がより痛むというので、右膝を曲げて足を立たせ、立たせた足を臀部にむかって倒してゆきます。

結果的には、左膝関節を左脇に引き込む形となりました。ここでも快がききわけられたので、十分味わってもらいます。

 

次は仰臥位に戻って首。触診すると、ごろりとしたしこりに触れます。

そこから、二分の一屈曲位にとった膝を左に傾倒すると、首のしこりが変化することがわかりました。

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膝を左に倒し、第五分析を用いて全身で表現しているところ。

 

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このあたりで、そけい部、恥骨、頸椎を再度触診してみると、大分やわらかさが戻って来ました。寺本君曰く「景色が変わってきた」とのこと。

 

風邪の引き始めであれば、それ以上の悪化を防ぎますし、今日のように「治りかけ」の場合は、回復を促します。

 

そけい部、恥骨、背中、大胸筋、首。今回はこの順番でやりましたが、これはパターンではありません。被験者である石田さんのからだを診て、操法を選択したわけです。

 

当然ながら、操法を選んだのには理由があります(人によって違うので、パターン化、プロトコル化はできません)。

 

終わってからは、からだが軽くなったとのことでした。