4月から、操体法東京研究会の講習や、東京操体フォーラム、塾SOTAIなどをオンラインで開催している。中には、受講生側から、オンライン設備がないなどの理由で、休講にしているものもある。先月の第五日曜開催の「塾SOTAI」は、久しぶりに私の他に、実行委員のH君とT君が三茶にやってきた。
塾の前に、実行委員で今後の打合せなどを行ったが、メンバーの一人が「皆、気がついちゃったんですよ」という。
それは、会社にわざわざ行かなくても、家でオンラインで仕事ができる、ということに気がついたのだという。
なお、興味深いのは、5月末に行った、東京操体フォーラム相談役の、太田剛先生と新部健太郎先生を招いてのトークイベントの中の話だった。
要は「これからはオンラインだ」と言ってるヤツは信じないという話で、私もなるほど、と思った。
世の中には「zoom講師になるには、専門知識は必要なく、ちょっと詳しい知識がある程度で充分。zoom講師になる方法を教えます」みたいなセミナーも見かける。
(専門知識が必要ないってどういうことだろう)
私が考えているのは、オンラインが簡単だからといって、何でもオンラインにしていいのかという話だ。
例えば実行委員勉強会だが、朝早い。遠方の人は大変だと思うが、1度オンラインでの「簡便さ」を知ってしまうと、朝早起きして、わざわざ三茶まで出向くのが億劫になってくるということもある(実際、オンラインの簡便さを知ってしまったメンバーがいたので、フォーラムではオンラインでの勉強会を10年以上封印してきた)。
今回は、やはり「皆でオンラインでも顔を合わせる機会や、勉強の機会を途切れさせたくない」「コロナのせいで、勉強が止まったとは言いたくない」ということもあるし、地方に住んでいる実行委員と、私のように都内に住んでいる実行委員とでは、環境も違う。
というわけで、オンラインでの開催を続けているが、段々とリアルでの出席も戻って来た。
こんなときに見つけたのが、この記事である。
https://forbesjapan.com/articles/detail/35027/1/1/1
会議などはオンラインでも充分だとおもうが、何かを学んだりする場合は、やはり実際に顔を合わせたほうがいい。
つまり「仕事はオンライン」「大事なことや学ぶことはその場に行く」というように「何でもかんでもオンライン」ではないということだ。
今回は「コロナ禍下において、操体を学ぶ者仲間達との、コミュニケーションを途切れさせないために、やむなくオンラインで場所を作った」という理解をしたほうがいい。
「Web飲み」も、今は目新しいので面白い(あるいは久しぶりだから)のかもしれない。もう少しすれば、飽きるかもしれない。
操体にせよ、理論や操体の歴史などは、オンラインでも可能だと思うが、実際の実技指導は、やはり実際に顔を合わせてやらないと話にならない。
(通信教育で勉強しました、という治療家の施術を受けたいだろうか?)
ちなみに、操体は「人様に施術できるくらいになる」には、リアルでの実技指導が必要だ。というのは、師匠の「空気感」を学ぶことができるから。
さらに「操体を人様に施術できるくらいになる」には、コミュニケーションの勉強が必須である。
それは「からだ」との対話だ(体感語)。
リアルな勉強の場で、空気感とともに体得したものは、オンラインでも活用できるということだ。
私が操体法東京研究会で学んだのは「操体的なコミュニケーション」だった。
それは「からだと対話する」方法の習得だ。
普通の人は、操体の講習というのは、ワザやテクニック、つまり治し方を習うと思うかもしれないが、習うことは「診断分析方法」と「からだと対話する方法」だ。
テクニックよりも、こちらのほうが重要であり、習得が大変なのだ。
単に操法を覚えただけでは、結果がでにくいのは「操体的なコミュニケーション」「からだと対話する方法」ができていないからなのだ。
操体の創始者、橋本敬三医師は「潜在意識を変える名人だった」という話がある。
つまり、本人の意識ではなく「無意識」や「からだ」にアプローチし、変える名人だったのだ。
操体法東京研究会の講習は、その創始者の元で、みっちり修業し、開業してからもしばらくは毎月仙台に通って勉強を続けたという、三浦寛先生だ。
三浦先生は、橋本先生が一番臨床家としてあぶらがのっていた、70代の初めの頃の弟子であり、その時の橋本先生の言葉の誘導や、イントネーション、間合いなどを、実際に経験している。
特に「間合い」などは、実際に呼吸を読まないとわからないので、オンラインでは不可能に近い(リアルにしっかり稽古をしていたら、オンラインでも有効だろう)。
世の中の全てがオンラインになるわけではない。
必要なものがオンラインになり、必要なものは、実際にその場に行って学んだり味わったり体得したりできる。