操体法と言えば「動かして診る」動診が有名ですが、その前に、当たり前で当然で言わなくても、臨床家だったらアリだよね、というのが「視診触診」です。
先日、ある受講生が触診をしている姿を見ました。
私は別枠で「視診触診」を教えていますが、この方は視診触診の講座を受けていません。普段もクライアントを診ているそうですが、一目で「あ、視診触診を普段やっていないな」ということがわかりました。
また、残念ではありますが、ちゃんと触診を習っていない(他の療法でも同じです)方のやり方は、被験者にとっても、不愉快なことがあります。
ご本人は気にしていないのでしょうが、セクハラ抵触しそうな触れ方とか、「うわ、そんなことやったら女性のクライアント、来なくなるよ」みたいな人もいます。
「私は気にしませんから」という人もいましたが、アナタが気にしなくても、受けるほうは気にするんですよ。これは男女問いません。
なお、橋本敬三先生は「診るならしっかり診ろ」とおっしゃったそうです(それは我々も踏襲しています)が、
例えば、ひかがみ(膝窩)の硬結も、ヘタクソな人がやると、鈍い痛みがいつまでも残りますが、ウマい人がやると、一瞬で終わります。
他の場所、例えば我々は、橋本敬三先生の診方に従って、脛骨のキワなどもよく診ますが、ヘタな人がやると、アザになったり、鈍い痛みが残ります。上手くやれば、一瞬のさわやか?な、後味のいい痛みで済むのです。
そして、我々は、触診をしながら、被験者の微妙なからだの動きを観察しています。
単に「ここにしこりがある」とか、それだけではないのです。
中には感覚が鈍磨していて、本人が「なんともないですよぉ」と言っていても、からだが反応していることもあります(からだに聞く、とはこういうことです)。
私はよく「人様の家に土足で踏み込むような触診はするな」と言っていますが、そんな感じです。
視診についてですが、「未来を開く不思議な天尊 荼枳尼天の秘密」を読んでいたところ(この本は別枠でご紹介します)、例えば妖怪とか霊とか、普通の人には見えないものが見える、ということは「脳の別の部分を使っている」というようなことが書かれていました。これは、納得がいきます。
「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」(アン・ライス原作)という映画があります。トムクルとブラピという美形のヴァンパイアが登場する映画です(原作とはかなり違いますが、映画は素晴らしいです)。
この中で、レスタト(トムクル)にヴァンパイアにされたルイ(ブラピ)が、目覚めた時、「(世界を)ヴァンパイアの眼で見ろ」という台詞がありますが、そんな感じです。
人間の眼で見える世界と、ヴァンパイアの眼で見る世界は違うのです。
「視診」も、凝視するとわからないけれど、「ある見方」をすると、「あれ?」というところがわかります。
私はラッキーなことに、25年前に「見方」の修業を積んでいたので、見ることができたんです(現在は受講生に伝授しています)。
そして、触診法ですが、操体法には、橋本先生スタイルの、診方があります。
ひかがみ(膝窩)の触診は、独特のスタイルがありますし、ひかがみの触診のやり方見れば、その人の「操体臨床」のスキルもだいたいわかります。
そして、橋本敬三先生が「よく診なさい」とおっしゃっていたのが、頸部です。
その後、三浦寛先生が「顔をざっと目視しただけで、頸部のどこに異常があるかわかる」という方法を発見しました。
なので、我々は触らなくても(最終的には触れて感覚を確認しますが)頸部の異常がわかります。
さて、視診触診が何故大事なのでしょうか。
操体は習得にある程度時間がかかります。それは「診断分析」の習得に時間がかかるからです。
短期の操体法の講習では、操法しか教えません。なので、短期ですむのです。
しかし、操体臨床の9割以上は「診断分析」なのです。
いくら操法だけ覚えても、診断分析ができないと、使いこなせないのです。
これが、操体の習得にある程度時間がかかる理由の一つでもあります。
そして、20年前くらいまでは、三浦先生の講習も、鍼灸師や柔道整復師など、専門的に勉強し、実際に臨床をやっている方が殆どだったのですが、現在は、専門的な勉強をしておらず、臨床経験無しの方が学びに来るケースの方が多いのです。
また、整体を習ったという方に聞いても「視診触診の方法は習わなかった」という方が、殆どです。
というわけで、補講として「視診触診」の時間を設けているわけです(橋本敬三先生から伝わる、伝統的な触診法から、です)。