操体法大辞典

操体の専門家による、操体の最新情報など

操体法は、実はオンラインに向いている

先日、いつも操体の施術を受けて下さっている美容師T兄のお店に行って、パーマをかけてきました。

 

 

彼はいつも、足趾の操法®を受けて「左脳とばし」(という二人以上で行うものがあります。文字通り、きもちよさでぶっ飛びます)を受けており、目を閉じていると、鮮やかな色や光が見えたりする「かなり上級の」クライアントでもあります。

 

そこで操体法のオンライン講座をやった」という話をしたところ、

 

「えっ?そうなの」という答えが返ってきました。

なるほど、T兄はいつも「足趾」とか「左脳とばし」を受けているので、「操体のセルフケア」をやるという感覚が希薄(きはく)なのかな、と思いました。

 

橋本敬三先生の時代は、当然ながら診療所で操体の臨床をやっていたわけですし、医者と患者という間ですから、先生が患者を治療するというスタンスです(わら半紙に印刷した『般若身経』を配って、家でやりなさい、という指導はあり)。


操者がいて、被験者に動診操法を行う。これが基本でした(一対一)。

 

そして、三浦先生が東京で開業し、しばらく経ってから、二子玉にあったカルチャー系のスタジオから「操体法を指導してくれないか」というオファーがあったんだそうです。

 

いわゆる、スタジオですから、何人もの生徒さんが集まります。

いままで一対一での臨床しかやっていなかったので、三浦先生も、最初はどうしようかと頭を捻ったそうですが、そうか、口頭で指導すればいいんだ、と思いついたのだそうです。
この教室は大人気で、最初一時間だったものが二時間になり、結構長いこと続いたそうです。

 

興味深かったのは、生徒さんから三浦先生に「家でもやりたいので、先生の声を録音してもらえませんか」というリクエストがあり、「言葉の誘導」を録音したこともあるそうです。


そして、これが操体法の面白いところなのですが、映像を見ながら実践すると、感覚分析がおろそかになります。見ながらだと、そっちに意識が向いてしまい「からだの声」をききわけにくくなります。また、目を閉じて行ったほうがいいのです。「感覚」に意識を向けられますから。

 

目を開けていると、意識せずとも莫大な量の情報が入ってきます。それを一旦遮断するのも、感覚の勉強の一つです。

 

なので、目を閉じている時に「言葉の誘導」をききながら、というのは、「モード」に入りやすいのです。

 


最初に見る。見て、アタマの中で。ありありと想像できるくらいまでだとなお良し。
それから、指導者の言葉の誘導に合わせる。

 

これが、操体のセルフケアのベストウェイだと思います。

体操のように一緒にやるのは、視覚が優位になり、目からの情報が多すぎて「からだの感覚」をキャッチしづらくなります。

 

 

「言葉による誘導」。これは実際に指導をやってみるとわかりますが、人は、なかなか自分の思い通りには動いてくれません。

さらに、個々人の感覚を重要視して、それぞれのペースでセルフケアの操体を行って貰うには、誘導のコツがあります。

 

実は「操体法を口頭で不特定多数に指導する」のは、一番上級の指導テクニックなのです。

 

普段の操体臨床でも「言葉の誘導」は非常に大事です。
皆さん、操体の臨床は「操法を覚えれば」いいと思っているかもしれませんが「被験者の『からだ』との対話法」を抜くわけにはいかないのです(これは、非言語的なものも含みます)。

 

私自身は、以前朝日カルチャーセンターで教室を持っていた時に、かなり鍛えられました。

 

また、スペインのセミナーで、100名近くに通訳を介して般若身経を指導した際も、かなり鍛えられました。

 

それが役にたった事があります。

それは、写真の学校に行っていた時のこと。フォトグラファーは、時にモデルさんに声をかけて、ポージングをしてもらう場合があります。

 

私は操体法の指導で慣れていたので、すぐ出来ましたが、先生からも「ポージングの指導、慣れてるね」と言われました。
モデルには、わかりやすく正確な情報を伝えなければなりません。

 

なお、我々はこの「言葉の誘導」をじっくり勉強します。
それも「本人にではなく、からだにダイレクトに響くもの」をです。

「教えました」「はい、今日からできます」というものではなく、ギターのFコードのように、最初はどんなにしっかり押さえても音が鳴らないのに、ある日、ほんの軽く触れているのに「ジャーン」という音がでるようなもの(これを「Fコードの法則」と言います)です。

 

そして、思い出しました。私が開業して間もない頃のこと。

クライアント(30代女性)から、夜電話がかかってきました。
動いた拍子に「ぎっくり」やってしまったそうです。

幸いに、からだの向きは変えたりすることができるので、ダメもとで、口頭で動きを伝えてみました。からだが覚えているかもしれないと、彼女が受けたことのある動診で、シンプルなものを選んだのです。

およそ10分くらい電話で色々伝えていたでしょうか。
取り敢えずは痛みがおさまったとのことでした。


翌日メールが来ましたが、痛みが再発もせず、調子もよいとのこと。

 

もうひとつ。これは東京から関西に引っ越していったクライアント(20代女性)から電話がありました。転んで膝を捻ってしまい、痛くて歩けないのだそうです。

この時は、私の指示に従って、少し足を動かして(痛むところは動かさないように)もらい、呼吸とか目線も用いてもらった記憶がありますが、電話の途中で

「あれ?先生、膝、入ったみたい。今音がしました」という訴えがあり、「あれ?痛みがすごく薄らいできました」というので、感心したことがあります。


つまり、橋本敬三先生がおっしゃる「整復コース」に乗せれば、口頭での指導でも、操体臨床は可能だということです。

 

というわけで「言葉の誘導」があるお陰で、操体法はオンラインでの指導に向いていることを改めて感じています。

 

今までも内々では、オンラインでの講義などはやっているのですが、般若身経や、セルフケアなどについては発信していく予定です。

 

 

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