自然体立位。
般若身経をやる場合の、基本のスタンスです。
一番簡単なのは
- 足は腰幅
- つま先とかかとは平行に
- 背筋は軽く伸ばし
- 目線は正面の一点をみる
- 膝の力をホッ、とゆるめる
というスタンスです。
これ、慣れないと、左右捻転とか終わった後、つま先が外側に向いていたりします。
慣れてくると、前後屈しても、捻転しても、側屈しても、この「つま先と踵は平行に」という足のフォームが崩れなくなります。
というわけで「こうやるんだよ」ということは、アタマでは理解できますが、実際に、からだが覚えてくれるまでは、ある程度の時間がかかります。
そこで、よく聞かれる質問があります。
「これ、いつもずっとやっている必要がありますか?」ということです。
私は
「そんなことないですよ。最初は型を覚えて、それからはちょこちょこやっていれば(意識的)、無意識のうちにできるようになります」
と、言います。
(無意識のうちに、というのは、意識しなくても、つま先と踵は平行に、というのが自然にできる、ということです)
「いつもずっと」とは、生活の中で、常に「自然体立位」のスタンスをとった方がいいのか、という話しですね。
さて、考えてみてください。
朝、顔を洗ったり、歯を磨いたりしますね。
その場合、洗顔と歯磨きは、日々のルーティンの中に、無意識のうちに組み込まれていませんか?
別に、一日中洗顔と歯磨きの事を考えてはいませんよね。
これと同じで、「ずっとやっている必要はないが、意識するときは意識して、あとは、無意識に任せる」のが、いいと思います。
というのは、昔「自然体立位を朝から晩までやっていたら疲れた」という人がいたものです。
別に朝から晩までやっていなくてもいいんです。
一日に一度か二度、意識的に練習して、あとは無意識に任せる。
そうすると、意識しなくても、自然にできるようになります。
「朝から晩までやったら、早く上手くなる」わけでもないような、気がします。
朝から晩までずっとやっている、というのは「意識100パーセント」の状態です。
それよりも、「少し集中して」「あとは無意識に任せる」というのがいいのではないでしょうか。
繰り返します。
最初は勿論「型」を覚える必要がありますが、その後は「少し集中して」「無意識に任せる」のです。
ラジオ体操だって、覚えたいからと言って、朝から晩までラジオ体操してたわけじゃないですよね。
あれは、毎朝とか、体育の時間に毎回とか、定期的に繰り返すから、覚えるのです(音楽との連鎖反応もあるかもしれません)。
朝から晩までいつもずっとやっている、と言った方が、何となく頑張っていそうで、早く結果が出そうな気がするかもしれませんが、からだで覚えることは、ある程度覚えたら、無意識に任せるのが良さそうです。
これも、操体で言うところの「頑張るな」かもしれません。
あ、ここで一つ思い出しました。
昔、自然体立位、の指導をした際の話しです。
「膝のちからをほっ、とゆるめる」というのは、実は含胸抜背(がんきょうばっぱい)と言うものに近い(これは、太極拳などでよく聞く用語ですが、私も太極拳の先生から教わりました)と思います。
何かというと、骨盤を前弯曲(これは操体用語ですが、腰を反らす、の反対です)させます。
太極拳など、中国武術では「腰を反らさない」「出っ尻にしない」のが基本です。
普通、腰を反らさないと「背中が丸まって姿勢が悪くなる」と、言われますが、そうではなく、腰を反らさずに、なおかつ背筋をすっきりと伸ばすのです。腰は反らせません。
骨盤の前弯曲、後弯曲についてはこちらをどうぞ。
この話をしたら、ある年配の女性が
「私は子どものころ、厳しく育てられて、腰を反らせて良い姿勢にしなさいと、モノサシを背中に入れられたので、腰は反らしたいんですが」とおっしゃいました。
確かに腰を反らさずに、膝の力をゆるめるのは、スカート姿やスーツ姿の女性にはあまり向いていませんが、
なにも、スカートやスーツ姿の時まで「自然体立位」を常にやって下さい、というわけではないんです(汗)。
そりゃ、スカートやスーツ、ハイヒールを履いた時などは、腰は反る(というか、膝を伸ばすと、体の構造上、骨盤は反ります)ので、臨機応変です。
「ずっとやっている(ずっと意識する)」と「目的を意識して、後は無意識に任せる」。この違いを分かって頂ければなあ、と思います。