操体法大辞典

操体の専門家による、操体の最新情報など

操体法の脱力は「ラグドール」ではない

昨日、第2日曜は、東京操体フォーラム実行委員の月一度の勉強会でした。

その時「脱力」が話題になりました。

 

我々は、第1分析的な「瞬間急速脱力」は、あまりやっていません。

というのは、瞬間的に抜くのは(特に息を吐きながらとか)は、結構難しいのと、諸状疾患を抱えたクライアントに無理がある場合があるからです。

 

私が「瞬間急速脱力、本当に必要?」と思ったのは、ある操体の大会での出来事でした。

何人かの方がデモをやったのですが、

前屈して、脱力、後屈して、脱力、とかやっていたのです。

これ、かなり危ないですよね。

 

タイトルの「ラグドールではない」ですが、これ、以前アメリカで操体を習ったという日本の方に偶然聞いたのですが、アメリカで「ラグドールのように脱力する」と習ったのだそうです。

ラグドール、と言う種類の猫がいますが、いわゆる「ぬいぐるみ」です。

子猫を触ったことがある方なら、ご存知かと思いますが、子猫って、ぐにゃぐにゃしていますよね。立てば普通にとことこ歩きますが、だっこすると、ぐにゃぐにゃのぬいぐるみのようになります。丁度、そんな感じです。

 

または、ひものついたあやつり人形を想像して下さい。脱力した後、床に落としたあやつり人形のイメージです。全ての力が抜けて、全身が抜けています。


寝てやるならば、ラグドールのように「ぐにゃっ」と、重力に逆らわずに脱力して委ねるのもアリかもしれませんが、例えば足関節の背屈を指示して、脱力する場合、我々は「足の関節をゆるめる」ことを予想しています。

 

これが「足の関節をゆるめる(つま先が床に落ちる)」のではなく、他も緩んで、膝が倒れるくらいぐにゃっとゆるむ(これだけゆるむには、事前にかなりの力が必要です)、みたいな感じになります。

 

ちょっと違いますよね。

 

というか、操者としては、そこまで(全身でぐにゃっとなり、仰臥膝二分の一屈曲位が崩れるくらい)崩れると、結構困ったりします(予想外)。

 

というわけで、立位で後屈して「ストン」と脱力している姿を見たのですが、立っているから勿論立位はキープしているのですが、危ないなあ、と思いました。

勘違いして、ラグドール並みに「ぐにゃ」っとなって、転倒する人がいるかもしれません(実際に実技を見ていて、危ないな、と思った感想です。瞬間的に、はずみをつけて脱力していたからです。前屈はまだしも、後屈はかなり危ない)。

 

しかし、本人達は真面目にやっているわけです。そして、それを指導している。
それが危険だというのです。

 

健康な方ならともかく、年配の方などが、後屈して瞬間脱力して、転倒とかしたら危険です。

 

多分この方達は、両手を水平に上げて、ストンと落とすというのがあるので、前屈も後屈も側屈も左右捻転も、瞬間的に抜くと思ったのだと思いますが、前屈からの起き方や、後屈からの起き方などはちゃんと記載がありますし、前後屈、左右捻転、左右側屈で「瞬間的に抜かせる」というのは聞いたことがありません。

 

これを「いろんなやり方があるから」と括るのは簡単ですが、もし「後屈で瞬間脱力をしたら、転倒して倒れて怪我をした」という高齢者(高齢者に限りませんが)がいた場合などは、どうするのでしょうか。

 

なんていうことを思い出しました。

 

というか、今は、瞬間急速脱力でなくても、充分対応できるんです。

実は「瞬間急速脱力」は、結構難しいのでした。

 

 

 

子猫の頃は、驚く程ぐにゃぐにゃだった真魚君ですが、今は超しなやかな筋肉質です。

 

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くねくねまーちゃん、と呼ばれています