橋本敬三先生は「からだの動きは8つきりしかない」「そんなことはどこにも書いていなかった」とおっしゃっています。
それまで「全身形態は連動する」と、操体実践者の中では常識でしたが、その連動に「一定のルール(規則)がある」ということを初めて明確にしたのが、この本です。
また、それまでの操体は「からだの中心、腰を要とした」ものがメインでした。
これらの二冊は、それまでの「腰を要とした全身形態の動き」ではなく、「末端の手関節、足関節から全身形態の連動をみた」ものです。
これは、三浦寛先生によると、橋本敬三先生がある時「全身の連動は、腰からじゃなくて、末端からなんだけどなあ」と、おっしゃったことから来ているそうです。
勿論、他の人はそんな話は聞いていなかったと思います。
手関節(正確には「手首前腕」)、足関節(足関節と下肢)の動きは、それぞれ8つあります。
手関節で言うと、以下の8つになります。
- 内旋
- 外旋
- 橈屈
- 尺屈
- 背屈
- 掌屈
- (上肢の)押し込み
- (上肢の)引き込み
よく、外旋、内旋をみて、「回外、回内じゃないの」という方もいらっしゃいますが。外旋、内旋は、肘から下だけの動きではなく、手首、肘、肩、背中、というように、末端から肩、背中、腰を介して全身形態が連動するので、回外・回内とは区別をしています。
これは、関節のその部分だけを動かしているのではなく、末端から表現することによって、全身が連動するということです。
この本が出た当初、操体関係者の中でも
「患者の動き(連動)はみんな違うじゃないか」と、言った人もいました。
私はオンタイムで聞いていたのですが、三浦寛先生は、
「この連動は、ボディに歪みがない、自然体の場合に起こる」と言いました。
「患者はボディに歪みを抱えているから、この通りにならないのは当然だ」
実際、私は講習(操体法東京研究会)で、ボディに歪みやトラブルがあり、「自然な連動」ができなかった受講生が、講習に継続して参加し、ボディの歪みが整ってくると同時に「自然な連動」を体現するのを目の当たりにしてきました。
なので、連動どおりにからだが動かないことも勿論あるのです。
よく「正しい連動」「正しくない連動」という事がありますが、私自身は「自然な連動」「不自然な連動」と言った方が良いと常々言っています。
これらの連動が頭にはいっていると、どういうメリットがあるかというと
被験者が「不自然な連動」を起こした場合、「どこで不自然な連動を起こしているか」という視点から、操法を考えることができますし、
触診して、逃避反応を起こさせ、その際の被験者の「無意識の動き(つまり、治る動き)」から、連動を逆算して、動診操法を考えることができます。
★逃避反応を見る。これ、大事です。例えば、被験者が無意識に首を右に回すという逃避反応を起こしたら?そこから瞬時に判断し、動診と操法を決めるわけです。
なお、留意していただきたいのは、この「操体法入門」で書かれているのは、「正中中軸」(つまり、からだの真ん中の線)を中心としたものです。
我々、操体法東京研究会のメンバーが現在勉強しているのは、この「左右対称の正中中軸を基本にした」ものではありません。
正中中軸基本が全く役に立たないというわけではありませんが、操体は進化しているのです。
「全・身体性(第五分析)」が生まれたことによって、今までの連動や、操体の常識が全く変わってしまいました。
しかし、第五分析を学ぶには、「歴史として」正中中軸を基本とした「連動」の理解も必要です(講習では、私たこちらの「歴史」を担当しています)。
それがあったからこそ、今の操体があるからです。
三浦先生ご自身は、古いモノは古いので、最新のモノを受講生に教えたい、とおっしゃっていますが、それも「歴史」あってこそ。
先生も、橋本先生から最初にならったのは、いわゆる「第一分析」だったのです。
そして、私や東京操体フォーラムの実行委員古株の皆さんが「全・身体性」を理解できるのも、第二、第三、第四と、順を追って勉強してきたからです。
勿論最新理論を勉強するのも大事ですが、操体を学ぶ者として、基礎教養として「橋本敬三先生の時代」「第二分析から、第四分析」を学ぶことも大事なのです。
操体法の個人レッスンはこちらへどうぞ。連動について勉強したいというリクエストにも、勿論お答え致します。
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