「ココを押すだけ」で解決したら、いいですよね。
私もそう思います。
でも、それだけで解決するほど、人間のからだは単純ではありません。
また、第一分析(楽な方に動かして瞬間急速脱力)が著効を示していた昭和50年代は、今とくらべると生活様式や環境がかなり違います。環境の汚染なども同じです。
当時は効果があったのに、というものはかなりあるのです。
昭和の終わり頃は「ホールインワンテクニック」といって「これをやれば一発で全部治る」的なものはかなりありました。
それが一時下火になったのは「メンタルの不調」が目立ってきたのと、原因が複合化してきて、複雑化してきたこともあります。
この時は「最近『うつ病が増えた』」と、色々な治療家が言っていました。
また、昭和の終わりころから平成の初めにかけては、治療系の誇大広告が問題になったりしたこともあり、「誇大」的なものは、だいぶ見なくなったな、と思いましたが、最近、また「誇大広告」っぽいものや動画をよく見かけます。
時代は巡る。。みたいな。
最近は、加齢や毛穴問題をマンガでぐいぐい押して、定期購入すれば最初は半額(二回目からは高い)みたいなのも多いですね(って私も化粧品系は買ったことがある)。
キャットフードも「ほぼ100パーセントの猫ちゃんが食べました」というのを買ってみたら、猫3匹全員が食べなかった。。。で、返品したら「サーモン味でお試し下さい」とサンプル品を送ってきましたが、それも3匹全員が食べなかったというのもありましたっけ。。。
最初は安い定期シバリっていうのは要注意だと思いました。
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なお、今までも操体をスポーツクラブやフィットネスクラブのプログラムに取り入れようとしたところはあります。
しかし、大抵は中途半端です。
以前、どこかで展開しているフィットネスクラブの会社の方が、三浦先生と私のところに来て、プログラムに操体を入れたいと言ってきたのです。
三浦先生が指導に行くならわかりますし、納得できるのですが、彼らは「自分達がならって、それをフィットネスクラブで指導したい」とのことでした。
これ、操体を単なるエクササイズとか体操と勘違いしているからなんですね。
例えば、太極拳の講座をやるのに、太極拳は初心者の社員に突貫工事で勉強させて教室をやる、なんていうことはあまりないと思います(あるかもしれないですけど)。
操体はそれができると思うのは、やはりPNFとか健康体操だと思ってるんでしょうね。
勿論、お断りしました。
さて「大抵は中途半場です」と書きましたが、何故かと言うと、人間のからだというのは「○○だけやればOK」的な、そんなに単純なものではないんです。
操体では「息食動想+環境」という昔からある「最小限必須責任生活条件」というものがありますが、近年はこれに「重心の正不正」というものを加えて、健康をみています。
これらは、密接に関わり合っていて、どれかが悪くなると他も悪くなるし、どれかが良くなると、他も良くなってくるのです。
これらを「まとめてバランスを見ているのか」「1つ1つ全く別個のものとして見ているのか」では、違って来ます。
昔から
呼吸の専門家
食の専門家
身体運動の専門家
心の専門家
環境の専門家
重心や軸の専門家
というのはバラバラに存在していました。
しかし、操体は「これらは皆つながっているのだから、バランスがあるのだから、まとめて面倒みよう、で、我々が1番アプローチしやすいのは「動」だから、身体運動系をメインにいこう」
と考えます。
・身体運動だけをみるのか
・身体運動を含め、他のポイントとのバランスをみているのか
の違いです。
フィットネスクラブなどで操体を導入しようとして中途半端にこけるのは「身体運動」とか「動き」という点で「からだを動かす」というところしか考えていないからなのです。
そういえば、以前、ある学会で顎関節と柔軟性について発表した先生がいらっしゃいました。
奥歯でティッシュを噛ませると、柔軟度が増すのです。
講義の後、三浦先生がその先生に「その柔軟度はどれくらい保つのか」と聞いたところ、奥歯からティッシュをはずすと、元に戻るとのことでした。
・すぐ変わるものは、すぐ戻るというのは、我々手技療法家の間では常識です。
例えば、鍼を打って視力が一時的に回復したけれど、家に戻ったら元に戻ったとか、施術後は痛みが消えたけれど、すぐ戻った、という感じです。
しょっちゅう治療に来て欲しいとか、回数を稼ぎたい場合はいいかもしれませんが、私はそういうことはやりたくない。
一度の施術やセッションで、長持ちさせたいのです。
操体は本来、瞬間脱力を用いていたので、即効性がありました。しかし、あえて「遅効性」をねらっているところもあります。お互い忙しいですし、できれば長持ちして欲しいし、慣れれば自分でケアできるようになってほしい。
「○○だけでOK」という場合は、サイレン(現象)を止めているだけで、火元や火種を消しているわけではないのです。
なので、現象はすぐ止まるけれど、また火元からくすぶってくるわけです。
「どこそこを押すだけ」とか「どこそこを○○だけ」のように『○○だけ』というのは、「からだごと」においては、例え変化があっても、一時的なもので、根本的な解決にはなっていないということです。
サイレンを鳴り止ませるだけではなく、火種、火元を確実に消火する。
それが現在の、令和の操体です。
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