操体法大辞典

操体の専門家による、操体の最新情報など

一般の人が自宅で操体をやるにはどうしたらいいですか?

という問いへの答えは、

『最初は専門家のところにいって、基礎を学んで、「ひとりでできるレベル」まで学習を積んでからのほうがいいですよ』ということだ。



これは『ピンからキリまで』という話になるが、より質が高く、効果があるものを得たかったら、ということである。まあ、何でもそうだが、本気で取り組みたいのだったら、ちゃんと習ったほうがいいということだ。





操体

1.専門家のところに行く

2.サークル、フィットネスクラブなどに参加する

3.自宅や職場で自力自動の操体をやる



大雑把にわけて3つに分けられるのだが、この3つは目的と対象者が微妙に違う。



★復習コーナー★★自力自療★

自力自療とは、「自分で治す」ことではない。操体の言わんとする自力自療とは、本人にしかわからない快適感覚をききわけ、味わうことである。感覚をききわけることが自ら行う診断であり、快適感覚を味わうことが治療となる。『操体は自力自療と言いますが、何故操者がいるんですか』という質問を受けることがあるが、操者は被験者が、快適感覚をききわけやすいように、導く役割を持つ。また、被験者本人の健康の度合いが低い場合も操者の手助けが必要となる。

以前、行徳のゴールドジムのセミナー(対象はジムに通っているような、元気な人がメインである)の際、からだが動かないような症状疾患をかかえて、痛みを我慢しながら参加したという方がおられた。本人は『操体は自分で治せる』と聞いて参加したのだそうだが、勿論からだが痛くて実際にからだを動かすことはできなかったようだ。本来、このような場合に、専門家の助けが必要なのである。そうして健康度の度合いが高まって自力自動が適ってくればセルフメンテをすることができるのだ。



1.専門家のところに行く

この場合、大抵は何らかの悩みをかかえて専門家のところに行くわけなのだが、この悩みは、症状疾患であったり、からだの歪みの悩みであったり、自分では間に合わない状態の場合が多い。

目的としては、症状疾患の改善と、セルフケアの指導がある。症状疾患や悩みがあるのだったら、まず専門家に相談し、施術を受け、快適感覚をききわけ、味わう学習を積んで、自力自動が適うようになってから、家庭でできるものを習うのがベストである。

2.サークル、フィットネスクラブなどに参加する

サークル、フィットネスクラブ、カルチャーセンターなどのプログラムの一環として行われている場合がある。この場合もサークルやフィットネスクラブに参加するのだから、ある程度健康な人が参加している。目的は健康増進がメインである。しかし、問題になるのはサークルなどで、健康維持増進が目的なのに、「操体治療」を求める参加者がいる場合がある。保健師指導の集まりなどでも同様らしく、健康指導教室で保健師が『操体治療』を求められ、いつもへとへとに疲れてしまうという話を聞いた。

私が以前、区の施設で無料で操体の講座を開催した際にも、治して欲しいという参加者が多くみられた。

この場合、参加者の目的を明確にしなければならない。



3.自力自動(家庭などで行う)

★感覚を無視したものは、操体ではなく、単なる運動である

何故操体に興味があるのですか、と聞くと多くの方が「自分でできるから」と答える。これは『自力自療』という言葉が一人歩きしてしまって『操体は自分で動く』とか『自分で治せる』という意味になっているのだと思う。妥当なのは、感覚は本人にしかわからない、第三者にはわからないということを踏まえて『快適感覚をききわけること』が自分にしか分からない診断法であり、そのきもちよさを味わうことが、本人にしかわからない治療法だということである。

自力自動の操体法には段階がある

(0)身体運動の法則を理解する(3法則と2相関性。3法則とは、重心安定の法則、重心移動の法則、連動の法則、2相関性とは、呼吸との相関性、目線との相関性)。

(1)からだの使い方、動かし方のコツを学ぶ。いわゆる『般若身経』。これは全ての動きの基本である。エクササイズではなく、エクササイズの元となるものであり、最初にこれを「型」として体得するといい。これは、書籍だけではなく、実際専門家の指導を受けるべきである。

★私は今まで相当数のクライアント、受講生に教えているが『本で読んでいるから知ってます』というので「それじゃやってみて下さい」とお願いすると、実は知っているだけで、できないというケースを相当数見ている。

★なお、一般に知られている膝の左右傾倒、伏臥膝関節腋窩挙上などは、第1分析の時代(楽か辛いかの二者択一の運動分析を行い、辛い方から楽な方に瞬間急速脱力を行う)、それも橋本先生晩年によくされていたものである。なので、これらの分析法は、第1分析が基本である。足関節の背屈に至っては、膝窩の圧痛硬結を除去するために、足関節を背屈させて、瞬間的に脱力させるものなので、そもそも動診がなく、触診で行っているため、『楽』が基本である。これらの動診を、「きもちよさ」をとおして自力自動で行うには、工夫が必要なのである。その工夫は書籍では紹介されていない(だから、最初は専門家の指導が必要なのである)

(2)局所のみが動くのではなく、末端の動きがからだの中心、骨盤を介して全身形態が連動する。

(3)ゆっくり表現する

(4)快適感覚がききわけられたら、それを味わう

(5)脱力の方法はからだにききわけ、ゆだねる

(6)回数はからだの要求に従う



★私の場合、自力自動の操体も指導するが、クライアントひとりひとりの『快の学習度合い』をみることにしている。快適感覚のききわけができない方に指導をしても、単なる「体操」か「運動」になってしまう。ある程度頃合いを見て指導することになるが、人によって勿論差があるのは当然であり、その進捗度合いが長くても短くてもそれは個性とするべきである。人と比べる必要はない。