NHKでやっている「プロフェッショナル 仕事の流儀」の特番を見た。
やはり、その道のプロフェッショナルというのは違う。
この番組が受けるのは、やはり最近の「なんちゃってプロ」や「アマチュア増加」にも繋がっているのかもしれない。
それはさておき、私が見ていて「なるほど」と思ったのは、「本美濃紙」をすく、鈴木豊美氏(63歳)の箇所であった。
元々彼女の婚家が本美濃紙をすいていた。
ところが、彼女が嫁いだ直後は本美濃紙は廃れており、彼女の夫は会社勤めをし、彼女が家業である本美濃紙の制作を受け継いだ。
その間に、豊美氏は「最も美しく、薄い」という、本美濃紙をすく技術を体得した。
夫は、定年退職後に本美濃紙職人となった。つまり、妻に弟子入りしたような形である。
そして、豊美氏のもとに、重要文化財の掛け軸の修復のため、巨大な和紙の制作の依頼が来る。
夫婦は二人で巨大和紙をすく。
二人のタイミングが合わず。和紙の端がよれたりする。
何故、タイミングが合わないのか。
それは、ダンナさんのポジショニングであった。
腰が入っていないというか、腕力のみで和紙をすく機械(名称はわかりません)を動かしているのだ。そして、機械の枠を持っている手をみると、あきらかに「拇指」に力が入っている。
豊美氏は、長年の間に習得したコツというか、腕力ではなく、からだ全体を操っている。見ていても、動きがスムースで無理がない。
「手は小指」を運動力点とする、とか、スタンディング・ポジションのコツがわかっていれば、ダンナさんももっと合わせることができたかもしれない。
定年近くなって、あるいは定年後に「職人系」の仕事に就きたいという人は多い。
私もそういうケースを良く見ているし、手技療法の世界や操体の世界でもそれは同じことだ。
そういう時、一番ネックになるのは「からだの使い方」なのだ。
何せ、60歳近くになるまで「からだの使い方、動かし方」には無縁だったりすると、「手は小指、足は拇趾」ということを一からからだに覚えさせる必要があり、また、当然と言えば当然であるが、若い人よりも時間がかかる。
というか、いままでの「からだの使い方のクセ」をリセットする必要があるのだ。
ここでもっと踏ん張ってくれればなあ、と思い当たる人は何人もいる。
なんて考えながら、
職人さんなどで、名人達人と言われる人は、多分「からだの使い方、動かし方」を、長年の経験や、生まれ持ったカンで体得しているんだろうな。
でも、それを次世代に伝えるには、その「からだの使い方、動かし方」というのを、具体的に、メソッドの一環として指導するのが、これからのやり方なんだろうな、と思った。
「師匠のワザを見て盗め」というのは21世紀の方法ではないかもしれない。
それを考えると、操体の勉強というのは、この「からだの使い方、動かし方」のコツを体得することにある。
面白いのは、スポーツが得意だからといって、それが上達や結果に直結しないことである。特に、特定のスポーツ固有のクセがついていると、まずはそれをリセットする必要がある。
そこでリセットできる場合は「リセット前後」の両方のスキルが手に入るが「リセット前」のクセにこだわると、結局は上手くならないし、つまらなくなって離脱することになったりする。
これは実際の話だが、定年退職後に操体をやりたいと、勉強を続けている人がいる。
最初は正直「大丈夫かな」と思ったのだが、踏ん張りと、粘り強い勉強と、同期のメンバーの協力で、モノになりつつある。
実際には、粘って続けたもの勝ちなのだろう。