第24回全国操体バランス運動研究会新潟大会に参加してきた。
期日:平成19年10月6日(土)〜7日(日)
須永先生はじめ、新潟の皆様、ごくろうさまでした。秋の新潟ということでコシヒカリの新米とおいしいお酒、久しぶりに見る先輩諸氏の顔、楽しい時間を過ごさせていただきました。
私が全国大会に参加するのは3年前の仙台大会以来である。
会場は新潟駅から少し離れた海側で信濃川沿いの朱鷺メッセ。ホテルも併設された新しい複合型コンベンション施設である。
新潟大会は「リハビリ操体」の著者、須永先生(木戸クリニック)が代表をされている。新潟は須永先生のお陰でサークル活動をしているグループが多い。
特別講演はDNAを研究され、「生命の暗号」などの著者、村上和雄筑波大名誉教授と、食育の竹熊宣孝先生(予防医学者)の発表講演で、これはこれでとてもためになった。村上先生は「こころ」と「環境」について、竹熊先生は「食」と「想」についてのお話であり、何度聞いても笑えるような上質の落語のような面白さであった。特に村上先生の表情を変えずに(至って真面目な顔で)ものすごく面白いジョークを言う姿と、話がコアになってきて「サムシング・グレートとは何か」という話になると、目がきらきらして「ああ、何かに打ち込んで勉強しているヒトなんだなぁ」と思った。講演の機会があったら是非もう一度聞いてみたいと思う。お元気でお過ごししていただきたいものである。
一方の竹熊先生は初日の夜、懇親会の時間に新潟に到着された。
お若い頃の写真しか拝見していなかったのだが、ヒゲ面でハンチングを被って黒いサングラスをかけて、赤いリュックと黒いスーツケースを引きずりながら壇上に上がられた。携帯電話をかけるとか、帽子をとって髪をくしで梳かすとか、昨日の村上先生の講演で「笑いは遺伝子をONにする」ということを聴講したせいも
あるのか、参加者は最初からテンション高く笑いっぱなしであった。食育という語は最近よく聞く言葉であるが、食育、という言葉を長らく実践されてきた裏付けと、沖縄勤務時代にアメリカ風の食生活をしてからだを壊した「実験」などの話は子供や若いお母さんに聞かせたいとも思った。
今回は参加者のレベルに対して研究発表の質が高かったので残念である。「操体を勉強したい」というよりは「操体を受けたい」というレベルが勝っていたというのが感想である。
特に初日の仙台温古堂の舘氏、奈良の北村先生の発表テーマは、実際に臨床に携わっているという姿勢が伝わってきたので残念だと思った。こういういいテーマは臨床家向けにやるべきなのだ。
舘 秀典 宮城 「健康の条件」操体法における指標
北村 翰男 奈良 「本来の“快”は“無”なのでは」
また、発表をとおして聞いていて感じたのは、長年操体をやっている方々でも勘違いしていることがあるのだな、ということ。
快適感覚に関するとらえかたである。
バランスがとれているから何をやってもきもちいい、のではない。
きもちいい(快適感覚)はバランスが取れる前の一時的な状態を指す。
バランスが取れれば楽になり、楽になればなんともなくなる。
つまり「バランスがとれているから何をやっても楽だ」というべきであって「きもちいい」というべきではないのだ。
やはり「楽」と「きもちよさ」の違いを明確にする必要があるのではないか。
全国大会というのは我々が企画運営している東京操体フォーラムとは毛色がちょっと違う。
はっきり言ってしまうと、趣味でやっている人とプロ集団の違いだ。勿論これが悪いと言っているわけではないが、操体臨床をやっている者の目から見るといささか物足りない。
いや、発表者は皆プロが多いのでそれなりに面白かった。
「操体を勉強したい」という参加者にはためになったと思う。
しかし「操体を受けたい」という参加者や、どこかを治してほしい、という参加者にとってはどうだったのだろうか。
ご存じの通り操体には「症状疾患にとらわれない」という最大の特徴がある。
二日目の実技指導の際、三浦先生のコーナーでアシスタントをしていた私に一人の女性が話しかけてきた。
「ここでは顎関節症の治療はしてくれますか?」
丁度三浦先生は連動のしくみと身体運動の基本を講義中だった。
私は「しておりません」と答えた。べつにその方に冷たくあたったわけではない。
このような場合、つまり全国大会のデモンストレーションの場であるのだから顎関節症を治したいのであれば、操体をやっている治療所やクリニックに行って、治療費を払って治療を受けるのが筋であろう。(勿論プロとしては、目の前でいきなり顎が外れた人がいたら手を貸してどうにかするのが当たり前だと思うが)
また、気になったのは参加者の高齢化と女性化だ。
新潟と沖縄で行政関与、あるいはサークルで操体をやっているところの男女比率は1:9だと聞いた。
確かに高齢の女性が沢山参加しているサークルに、少ない人数で男性が参加するのは確かに勇気(かきっかけ)が必要だと思う。また、女性の指導者に習いたくない、という声も上がっていた。
サークル活動であるから、昼間に時間のある主婦が圧倒的に多いのだと思うが、これから若手人材を育てる必要があると思う。
長野の白沢先生などは、若いお弟子さんを3人連れてこられていたが、本当に若手育成がこれからの最大の課題ではないだろうか。
全国大会はもっと若い人にアプローチするようなプログラムを考えるべきだし、内容を考えなければ臨床家が興味をもって参加するチャンスが減るだろう。初心者にもベテランにも勉強になるプログラムを作るのは大変だが、操体の臨床家であれば、どのような過程で臨床をすすめるのか、とか診断分析法の紹介などは
絶対興味があるはずなのだ。
なにしろ、橋本敬三先生ご自身が臨床家であったのだから。
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また、話はすこし逸れるが、手技療法家が一番困るのは仕事(臨床)ではないところで、初対面の人や知り合いに「肩が痛いんだけど」とか「膝が痛いんだけど」と相談される場合や、「ちょっとやってくれない」と言われる時である。
基本的に「ちょっとやって」と言われて喜々としてやるのは、初心者か勉強中か誰かで「実験」してみたくてうずうずしているかあるテーマの臨床例を収集しているかのいずれかなのだ。
また、「ちょっと」やっただけでは良くなるわけがない。
昔、親類の叔母に「ちょっとやって」と頼まれて、膝窩の圧痛を確認したところ(勿論痛い)、「痛いことをする」(触診しただけなのだが)と親類縁者に吹聴され困ったことがある。
私はこれを大きな教訓としている。
(手技療法家にとって、家族や親戚、友人に施術していい評価をもらうのは難しいことなのだ)
なので、私自身は親しい友人や知り合いは師匠にお願いしている。
★★★★
第24回全国操体バランス運動研究会新潟大会プログラム
期日:平成19年10月6日(土)〜7日(日)
場所:朱鷺メッセ
テーマ≪毎日の生活に生かす操体法≫
…「動き・呼吸」から「食・想・環境」へ…
1日目 平成19年10月6日(土)
◆ 開会式 10:00〜10:20
◆ 操体法の研究発表 10:20〜12:00
1. 舘 秀典 宮城 「健康の条件」操体法における指標
2.中川 重雄 兵庫 「腕の左右バランスを整えて肺活量を増やす」
3.石井 康智 東京 「踊りと気持ちよさ」 操体法的に見ると
4.北村 翰男 奈良 「本来の“快”は“無”なのでは」
休 憩(昼食) 12:00〜13:00
≪公開講座?≫
◆ 特別講演? 13:00〜14:30
演題…こころと健康
講師…村上 和雄(DNA解読者)
◆ シンポジウム 14:50〜16:50
テーマ 毎日の生活に活かす操体法
シンポジスト
1.比嘉 幸子 沖縄 操体法と自治体活動(沖縄での取り組み)
2.来田 麻里子 新潟 操体を日常に活かす(新潟での取り組み)
3.遠藤 隆三 岡山 教師のたまごが操体法に触れて(岡山大学での取り組み)
4.細川 雅美 大阪 マタニテイと操体法
5.中川 一広 新潟 水と環境
◆ 懇親会(交流会) 18:00〜20:00(同会場)
2日目 平成19年10月7日(日)
≪公開講座?≫
◆ 特別講演? 9:30〜10:50
演題…医・食・農からみた人間のいのち…今こそ土からの食農教育を…
講師…竹熊 宜孝(予防医学者)
◆ 実技交流
11:10〜12:20(各々の講師得意の部分をお伝え)
1.小崎 順子 岩手
2.白沢 誓三 長野
3.坂本 洋子/東口 華代 大阪
4.花城 てる子 沖縄
5.渡辺 勝久 兵庫
6.瓜生 良介 東京
7.鹿島田 忠史 東京
8.石津 和彦 広島
9.三浦 寛 東京
10.
◆ 閉会式 12:20〜12:30