操体法大辞典

操体の専門家による、操体の最新情報など

操体法治療室

lovecats2006-12-16

この本で私の運命が変わったといってもいい。

操体法治療室―からだの感覚にゆだねる

操体法治療室―からだの感覚にゆだねる

現在はたにぐち書店から出版されているが、初出は1987年9月、今はなき柏樹社より出版された。(勿論柏樹社版を初版で持っている→マニア)
私が初めて「操体法」という名称を知ったのは高校2年の時で、宝島社から出ていた『東洋体育の本』だった。
当時はなんだか良くわからなかったが、何故か印象に残っていた。それから数年経って、今から15,6年前になるだろうか。この本に出会った。

操体創始者橋本敬三医師が主である、仙台の「温古堂」で橋本先生の元で修行した二人の愛弟子が共著という形で書いたものだ。

今読んでも新鮮な内容であり、一般の方にも読みやすいと思う。私は年に何度か読み返すが、

『患者さんは、治したい、治りたい気持ちをおさえて、まず「自分のからだの内の声をきく」ことから学びはじめます。からだの動きの感覚をきき取る学習と、きき分ける学習を体験していくのです。ですから患者さんは、ただベッドに休んで「あとは先生(操者)にお任せしたよ」とは言っておれません。自分のからだの動きの感覚をきき分け、その感覚に委ね従うという作業工程を負わされていることに気がつきます。』

という一文がある。

ぞくぞくした。

構成を説明すると、前半は今昭宏先生の「ものがたり」。
後半は三浦寛先生による操体法の解説と臨床の様子。

今先生は、独特の優しい語り口で、スタイルを変えずに、親しみやすいコトバで操体を語っていらっしゃる。
橋本敬三先生が現役を引退されて、代診で入られたのが今先生で、今先生は三浦先生の赤門(仙台の柔道整復、鍼灸の専門学校)の後輩であり、三浦先生の講習の受講生でもあった。なので、私からみると、カドのとれた、まるい優しいおじいちゃんになった橋本先生の側におられたのでそのような雰囲気が伝わってくる。

三浦先生が温古堂にいらっしゃった時、橋本先生は70歳。現役バリバリで、今先生が勤務されていた時とは、雰囲気が違っていた、という話も聞いている。

ちなみに、

私は後半の「からだの感覚に委ねる」というコトバに参ってしまい、「絶対操体を勉強しよう」と決心したのだった。

私自身東京生まれではあるが、両親は宮城で仙台には親類縁者が30人はいるので、仙台というのは非常にファミリアな土地でもあったし、何かのご縁としか思えない。

話は戻るが、この本には「楽な動き」ではなく「快適感覚」が説かれている。

この本を出すとき、本来は「温古堂治療室」という名前で、監修は橋本敬三先生(卒寿のお祝いに)という予定で、橋本先生も内容を褒めてくださったと聞いている。

しかし、「温古堂治療室という名前はいかん」「橋本敬三監修というのもいかん」という外圧がかかり、タイトルは「操体法治療室」に変更されたという経緯がある。

そのような苦労を越えて出た本だったが、柏樹社が倒産し、入手不可能になってしまった。それをたにぐち書店が復刊してくれたわけだが、本当によかったと思う。


・・その本を読んで、「操体を勉強するぞっ」と決心したある女が、15年後に先輩二人と共著という形で本を書くことができたのは、本当に何かの導きとしか思えない。
親しい友人に話したら、『初恋が叶ったようなもんじゃない』と言われた。
ああ。私は本当に幸せ者である。