先週、講習が終わってから同門のA氏と師匠と三人でお茶をしていた。その時、A氏が師匠に聞いた。
『先生、これこれこういう症状の人がいるんですが・・・』
『どうしたらいいでしょう』
『症状疾患にとらわれるな。○○だからどうすればいいか、という見方はしなくていい。』
師匠はタバコを吸いながら答えた。
『オレも若い頃、橋本先生にそういうことを良く聞いていたよ。でもある時、ああ、先生(橋本先生)に対してなんて失礼なことをしてるんだろう、と思ってそれから聞くのをやめた』
『第一、その患者を見せてもいないのに、どうしたらいいでしょう、って聞くのはな』
Aさんも『そうですね・・・・・』。
『これこれこういう患者さんがいるんですが、どうすればいいでしょう(どんな風に見ればいいんでしょう』という質問。
これは大抵みんな最初はやる。
Aさんも分かればいいのだ。自分が臨床をもっと積んで、人に聞かれるとそれが分かってくるはずだ。
開業してから最初一番困ったのは、
『ワタシの椎間板ヘルニアに操体は効きますか』
『これこれこういう疾患に操体は効きますか。何回で治りますか』というクライアント予備軍からの質問やメールだった。
電話先やメールで「ワタシの○○に操体は効きますか」と聞かれても、実物を見ているわけではないので答えようがない。
これは私だけでなく多くの手技療法家や治療家が抱えている悩み?だと思うが、操体に関しては『ウソかホントかやってみろ』ということで、やってみないと分からないのだ。
講習を始めてからも『○○に効く操法は』とか、そういう質問をされる事が多かった。受講生も『目安でもいいから、この操法は何に効くのか教えて欲しい』という場合が多かった。
逆に、このような教え方をすると『例外』に遭遇した場合に対処できない。腰痛に効くやり方をやったのに効かない、とか伏臥で行うやり方しか知らないのに、患者様は伏臥になれないとか。
というわけで、「橋本先生になんて失礼なことをしたんだろうと思った」という師匠の言葉がよくわかった。
また、それは師匠の師匠(橋本先生)が積み重ねてきた臨床の重さに対して尊敬をもっている
のだということもよくわかった。
長年その道を積んできた人に対して気軽に『こういう時はどうすればいいんですか』と聞いて、
いい時も悪いときもある。
★丁度書いている最中に、医者から治らないと言われた難病に対して、操体で進行を遅らせることができますか?という問い合わせのメールが来た。
そのご本人の顔も見ていないし、年齢、性別、既往症、生活習慣も分からないが、ご本人に意志があり、快か不快か聞き分ける力(原始感覚)があると信じるのだったら『ウソかホントか』と、試してみるといい。操体は苦痛を強要したりはしないし、
からだ(イノチ)は、快、きもちよく治りたいという意志を持っているのだから。