操体法大辞典

操体の専門家による、操体の最新情報など

手技療法年鑑・月刊手技療法 シリーズ操体

月刊手技療法 シリーズ操体第74回 「臨床に生かす身体運動の法則と目線の効用(2)」(わたくし執筆)と、2007年秋季東京操体フォーラムレポート(フォーラム理事、秋穂一雄氏執筆)が掲載されている。

また、月刊手技療法と同様、たにぐち書店から出た「手技療法年鑑 2008年度版」には、東京操体フォーラムの母体でもある、「操体法東京研究会」が
掲載されている。「手技療法年鑑」には鍼灸指圧柔整の専門学校をはじめ、各種療法、手技療法、セラピーの学校やスクール、またそれぞれの歴史、由来、内容が書かれている。

東京操体法研究会には現在2つの講習プログラムが用意されているが、今現在もう一つ、新しいプログラムを作成中である。作成修了次第お知らせする予定なので、要チェック。


操体についても書かれているので再掲したいと思う。

操体って何?」と言われて答えに困るケースは多いと思うが、参考になれば幸いだ。

操体法とは、

昭和初期に仙台の医師、橋本敬三(1897-1993)がさまざまな民間療法を試すうち、高橋辿雄氏の正体術(整体とは異なる)にめぐり合い、創案・体系づけたもので西洋医学東洋医学とも異なる、いわば日本医学とでもいうべき未病医学に基づく、診断、臨床法である。操体法の初期は、正体術と類似する方法がとられ、客観的に骨格、関節の構造を診て、運動系の歪みを正す試みがなされていた。その方法は、骨格、関節の動きを二者択一的に比較対照させて分析し、辛い方から楽な方へからだを操つり、運動系の歪みを正すことによって、疾患、症状の治癒、改善をはかってきた。その後、客観的な見方からはなれ、生体の内部感覚に基づいて、生体のフィードバック機能をより洗練させていくため、快適感覚をより重視するようになった。結果、操者の決めつけを操法から一切排除し、からだの要求感覚に委ねる臨床への対応が急速に進められてきた。また、その一方で、患者の意識を介さず、からだの無意識に直接快適感覚をききわける皮膚体壁系へのアプローチも体系化されてきている。
操体法には、他に類をみない特徴がある。それは、診断も治療も患者自身に委ねていることである。つまり、患者自身が医療者の立場に立つことで、患者本人が診断し、治療する。本来、治療とは施術者が診断し治療する行為である。操体法の場合、施術者と患者の立場が逆転している。操体法は、それ由、患者自身の自力自療が成り立つ。
なぜ、自力自療が可能なのかというと、本人にしか分からない(認識、識別できない)感覚を診断、治療の要にしているからである。感覚をからだにききわけること、ききわけた快適感覚を操つり味わうこと、これが操体法、臨床の特徴である。「ききわけること、味わうこと」これは、患者本人の責任分担であり、第三者(施術者)が直接介入することのできない診断と治療なのである。操体臨床における第三者の役割は治療に直接介入する立場ではなく、指導及びサポートしていく立場に立つだけである。

原則は"自力自療"
操体法の特徴の1つは治すことまで関与しないこと」であるどう言う意味かというと、治すことはからだが一番よく知っているということであり、「治すことはからだにまかせればよい」のである。治すことまで関与するから臨床その
ものが、難しいものになってくるのである。からだが治す、治せる力とは、生命力である。その自然治癒力とはからだに、ききわけた、快適感覚そのものであり、操体法は、この生命感覚の快に従う臨床医学である。正確には操体法は手技療法とも、治療医学とも言えるものではなく、操体法創始者である橋本敬三医師の言葉をお借りすれば「未病医学に基づく健康維持増進の医学」と言えるのではないだろうか。又、操体法の特徴の1つに「症状、疾
患にとらわれない」ことが上げられる。操体法には○○疾患、△△病を治す、という発想がないことである。「生活の間違いからおこるからだの歪みを正し、健康の元を正す」ことが症状、疾患に対する操体法のとらえ方の原点になっている。そのため、からだの診方、症状、疾患のとらえ方が「運動系の歪みという異常状態(病態変化)から構造運動力学的に把握しているのである。
近年の操体法は、筋、骨格系のみならず、内臓筋系の不随意筋への問いかけ、皮膚を介して、からだの無意識に問いかけていくことによって、より質の高い快適感覚の診断が可能となり、あらゆる症状、疾患に幅広く対応できるようになってきていることで、介護や精神科的疾患を対象にする機会も非常に多くなってきている。