操体法大辞典

操体の専門家による、操体の最新情報など

甘露梅 お針子おとせ吉原春秋

甘露梅―お針子おとせ吉原春秋 (光文社時代小説文庫)

甘露梅―お針子おとせ吉原春秋 (光文社時代小説文庫)

吉原モノは結構読む。これは新幹線の中で読もうとホームの売店で買ったのだが、なかなかよかった。
面白いのは、男性が書く吉原モノと、女性が書く吉原モノはちょっと違う。例えば「ありんす」言葉だが、遊女の出身地を出さないために使わせたという話を聞いた。また、被差別の部落に生まれた女の子を、全く別人として生まれ変わらせるという場所でもあった。必殺シリーズのように、娘が「仕事」の依頼料の代わりに身売りするとか、騙されて売られたというケースもあったのだろう。これは表には出ないが、未だにないことはないと思う。

吉原御免状 (新潮文庫)

吉原御免状 (新潮文庫)


さくらん (イブニングKCDX (1829))

さくらん (イブニングKCDX (1829))

主人公は36歳の「おとせ」さん。岡っ引きの夫が朝起きたら寝床で冷たくなっていて、丁稚に出していた息子はお店の同僚の女の子を孕ませていて、即祝言、息子夫婦と狭いところに一緒に暮らすわけにはいかず、口入屋に仕事を探してもらい、吉原で住み込みのお針子をすることになる。おとせさんを見守る、引き手茶屋の旦那、元太鼓持ち花月亭凧助(ちなみに凧助は60歳)との、じれったいやりとりも面白い。

なんだかこの「おとせ」さんはくそ真面目で面白くない女である。岡っ引きだった亡夫にもあまり可愛がってもらわなかったのではないか、と読み進めていくと、最後は「おお、大胆な」という結末でおわる。やっぱり勇気を出したもの勝ちだ。