操体では「息食動想」の最小限責任生活(自律可能な営み)のバランスを考える。
最近、食について色々調べる機会があった。橋本敬三先生は、マクロビオティックの桜沢如一氏の無双原理について著書に書かれているし、
歯の数と食物の種類の関係(犬歯4本、門歯8本、大小臼歯16本から、肉を食べたら:犬歯、野菜(門歯)はその2倍、果物、雑穀、海草はその4倍食べるのが叶っている、という考え方)は、生長の家の谷口雅春氏の考えから来ている(橋本先生は診療所に生長の家の日めくりカレンダーをかけていて、それをめくるのが若き日の師匠の役目だったと
聞いている)。
現在、月刊手技療法の『シリーズ操体』向けの原稿を書いているのだが、テーマは『ダイエット』である。以前も書いたが、操体を日常的にやった人で、食事制限をせずに半年足らずで10キロちかく体重が減った人が少なからず5人はいたため、操体との関係を考えてみたのだ。また、先のフォーラムで福田副実行委員長が発表した、食の快について、特に日本人と米食の関係についても興味があり、ここ暫く主食が米と納豆と小魚(シラス)だったり、ワインにしても亜硫酸塩(酸化防止剤)が入っていないものは、悪酔いしない(これは本当。ワインを飲むなら酸化防止剤が入っていないものを飲んだほうがいい)と身をもって体験したりしたためだ。
何冊か本を読んでみたが、「『偏食』のすすめ」
これは師匠が読んでいたので参考に読んでみた。基本的に人間果食動物であり、野菜と果物、また熱を加えないものを食べるようにできている、という教えらしい。アメリカでは100年近く歴史があるそうで、最近話をよく聞く「ローフード」(生食)(ナチュラル・ハイジーンとも言う)のようだ。サイトも色々調べてみたが、色々な流派があるようで、著者の永樂氏はドクターで、1ヶ月の間に8キロ減量できたと書かれていた(つまり、太っていらっしゃったのか?)
この辺り、著者近影とか拝見したいところでもある。
確かに野菜と果物という食生活は身体に良さそうだし、師匠曰く、胃腸が弱っている時は野菜と果物というのはうんと身体に負担がかからないという。
また、加熱したものは、酵素が壊れているため、パワーがなくなっているので、生で食べるのだそうだ。
食べ合わせというのもあり、肉を食べるなら野菜と、米を食べるなら野菜と、一番良くないのは肉類と米の食べ合わせだそうだ。
ということは、カツ丼とか牛丼とかは良くないらしい。また、サプリメントの摂取も控えるようにと書かれている(食事で摂れる、と書いてあった)。
これに関しては何とも言えない。サプリメントは栄養補助ではなく、
身体の抗酸化のために必要な気がするし、今現在の野菜や果実の
栄養価は確実に減りつつあるという事実もある。
確かにパワーのあるものを食べるというのは納得が行くし、果物を朝食べるのは胃に負担をかけないので胃を酷使しがちな現代人には
向いているのだろう(果物は胃を通過して腸にすぐ行くそうだ)。
しかし、この話を聞いたとき、
『はて、納豆は?』と思った。
納豆は大豆を蒸してから納豆菌を植え付けたものだ。
なので、蒸した大豆でも納豆菌は生きているはず。つまり、パワーがある食物ではないだろうか。
また、味噌や醤油にせよ、酵母が入っているので大豆を蒸したにせよ、菌のパワーはあるはずだ。
(これについては、いくつかのサイトで調べたが、納豆、味噌、漬け物などには酵素が生きているらしいのでOKらしい)
アメリカ発の食餌療法なので、納豆とか味噌とか醤油とかは多分メニューに入っていないのかもしれない。
そういえば米だが、東京操体フォーラムの実行委員で、米食にトライした人がいる。
まず、からだが締まった。お肉が大好きだったのだが、お肉の量が十分の一に減った。肌がきれいになった。
結果的に食費の節約になった、との事だった。
米は勿論加熱しないと、デンプン質が変化を起こさないので、一般的には食用には適さない。確かに草食動物は草だけを食べても生きていけるし、野生の動物は加熱した食物はは食べない。
が、日本人は長らく米と野菜を食べて生きてきた。まあ、歴史的に白米が常食されるのは最近のことだと思うが(殆どは雑穀だったそうだ)、
少なくとも米が入ってきてから2400年〜2500年経っているのだから、日本人の胃腸は米を消化しやすく変化していてもおかしくないと思うし、それこそ味噌、醤油、納豆(納豆も細かく言えば、麹菌で発酵させた麹納豆と、納豆菌で発酵させた糸引き納豆がある)、漬け物という発酵食品の助けがあったので、加熱した米でも十分パワーがあった(勿論精白米ではなかっただろう)のではないだろうか。
また、日本人は世界一の「菌食文化」を持った民族だそうだが、
*味噌 *醤油 *納豆 *味噌漬け *ぬか漬 *塩辛(黒づくり等)*日本酒 *酢 *するめ *米麹(酒粕・かぶらずし・甘酒)*チーズ *ヨーグルト
これらを長らく食べてきた。この中の殆どは加熱してあるが、発酵という過程を経ているため、パワーがあるのではないか。
(ちなみに、日本書紀に「牛酒」(ししざけ)というものがでてくるそうだが、牛乳を発酵させたものだと思われる。
また「醍醐味」から来ている「醍醐」、「軟蘇」はチーズはみたいなもので、6世紀には日本に伝来しているらしい。ヨーグルトは平安時代に渡来しているそうだ。その間仏教の伝来などで乳製品を食べる習慣は明治時代までなかったようだ。
何故、ここで乳製品について書いたかというと、マクロビオティックにせよ、ナチュラル・ハイジーンにせよローフードにせよ、乳製品をすすめていないからだ。
牛乳については面白い話を読んだ。
そういえば、昔は毎朝牛乳屋さんが瓶に入った牛乳を配達していた。玄関にも牛乳びん入れがあった。
牧場に行ったりすると、やたら濃くておいしい牛乳を飲んだりした。普通、ミルクは絞った後そのままにしておくと、クリームと水分に分離する。そのおかげで2,3日しか持たなかったので、牛乳配達をしていたわけだ。
それを持たせるためにホモナイズ(同化)ミルクの分子を細かくしてクリームと水分に分離しないように加工した。それが良くないそうなのである。
いずれにせよ、日本人には乳糖に対応できない人もいるし、民族的に生乳は向いていないのかもしれない。
(発酵させたものは向いているのかもしれないが、牛乳を飲む習慣はまだ浅いので何とも言えない)
また、野菜果物というのは良くわかるが、歴史を考えてみると、みかんは日本書紀とか古事記に「タチバナ」という名前で登場する。柿はどうやら日本の土着の果実のようだ。桃の伝来は鎌倉時代、りんごは平安時代だが、今のような品種栽培が始まったのは130年前、葡萄は明治になってから、などである。すいかはポルトガル人が1600年頃持ってきたらしい。つまり、果物の多くは米より後に日本に入ってきた。
ということは、果食がいいと言えど、米(雑穀)のほうが長めの日本人の胃腸には適しているのではないか、とも思ったりする。
何だか纏まらないのだが、肉食メインだった西洋人は肉を消化するために、消化酵素を多く含む果実や野菜を摂ったのではなかろうか。日本人は米(雑穀)と発酵食を食べていたので、それはそれで理にかなっていたのではないだろうか。