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操体臨床への道しるべ - 快適感覚に導く診断と操法
三浦寛著 医道の日本社
この本が企画されてから出版されるまで、私はその流れを全部見ていた。前書きにも書いてあるとおり、2年かかってやっと完成した力作である。
聞いたところによると、師匠のところに本書を読んだという、長年操体臨床をやっている方から連絡が入り、「操体もこんなに進化したんですね」
「私が習ったころとは全然違います。よく書いてくれました」と言われたのだという。この方はご自身が臨床家なこともあり、臨床家にとって、進化(よりよい発展)が日々の中でどんなに大切なのかおわかりになったのだろう。
『なにこれ、こんな難しいのわからない。操体だったら楽なほうに動かして、ストン、て抜けばいいじゃん』というヒトは臨床、ということについて考えたほうがいい。
この本で、一番目を引くのは、はじめて印刷物になった、介助の与え方だと思う。
ちなみに、操体では昔から「抵抗」という言葉を使っていたが、師匠はどうもこの言葉に馴染めなかったという。
抵抗、ではなく補助抵抗という言葉を使っていた時もあったが、「介助」という言葉に落ち着いた。この経緯も書かれている。
橋本敬三先生の本が何冊かあるが、例えば足関節の背屈の場合、足背のどのあたりに、どのように抵抗を与えるのかというのは、その詳細が書かれていない。皆、本のあいまいなイラストを見るか、見よう見まねでやってみるしかなかったのだ。
中には創意工夫されているケースもあると思うが、多くは介助法を知らずに、操体をやっているのだ。
介助を与える、つまり操者が存在する意義というものがある。「運動充実感」「動きの安定感」「連動を促す」「感覚の聞きわけを促す」ということであり、へたくそな介助を与えられる位だったら、自力自動(介助をかりずに)で行ったほうがいい位だからである。
この介助法を文書化した。これは実はすごいことなのだ。
何故って、操体を勉強したい人が知りたいことだから。何故、気持ちよさを導けないのか?その答えはおそらくここにある。
橋本敬三先生が書かれた色紙を見たことがある。そこには『文献の重み』と、書かれていた。橋本先生は人間の動きは8つきりしかない、と気がついたのは、お年を召されてからのことだったという。何故なら世界中のどこにもそのような文献は残っていなかったからだ。なので、何事も記録しておきなさい、それが文献の重みなのだと言われたのに違いない。(私達としては、橋本先生が著書の中で『楽ときもちよさは違う』とか『動きより感覚の勉強をしなさい』とか『呼吸は自然呼吸でいい』と残して下さったらよかったのに、とも思ったりする)
また「動きには8つある」ということなのに、多くの人が知っているのは、足関節の背屈か、膝の左右傾倒、あるいは腹臥位での
膝関節腋窩挙上、下肢の圧迫程度である。
動きには8つある、ということは足関節(下肢)にすれば、背屈だけではなく、底屈、外転、内転、内反、外反、牽引、圧迫
あるということだ。ここでは8つの介助法を紹介してある。
同様に手関節(手首前腕)の動き8つ、背屈、掌屈、外転、内転、橈屈、尺屈、牽引、圧迫への介助法も書かれている。