操体法大辞典

操体の専門家による、操体の最新情報など

瞬間脱力。

先日同志から聞いた話。



彼は関西で操体専門で開業している。最近何人かクライアントを診た時に、ものすごい勢いで瞬間脱力をするのだという



また、その方達は『瞬間脱力が出来る』と得意気なのだそうである。確かに瞬間急速脱力は難しい。出来るのだったら得意になるのもわからないではないが、操者がからだにききわけた、きもちのよさに委ねた動診と操法を行っている時に思い切り『アタマ』の意識が入った瞬間脱力をされるとちょっと困る。



ご存じの通り、我々は瞬間急速脱力は要求しない。何故なら「きもちのよさ」を羅針盤にしてからだの要求に従って動診・操法を行っているので瞬間急速脱力にはなり得ないのである。

ごくたまに、第一分析(楽か辛いかの二者択一分析)を行うとか、結構稀なケースなのだ。





瞬間脱力を本当に息を止めてからだを硬直させて一気にドスン!と抜いて「はあ〜っ」というのがきもちいいのも分からなくはないが、それが操体の「きもちよさ」ではない。

ふわ〜っと抜いてもそれは脱力後の爽快感であって、『動診』でききわけ『操法』で味わうきもちよさとは違う。



話は戻るが、橋本先生の昔のビデオ(76年にホテルオークラで行ったセミナー)を見ると、年配の男性に脱力を促しているが、ものすごく苦労されている。全身での瞬間急速脱力というのは、実は結構難しいうえ、学習が必要なのである。なので先の同志のろころに来られたクライアントが得意げなのは「うまい!」とか「よくできた」というのは『操者の言う通りにしたから』なのであり、「からだの要求に従った」ものではない。



いずれにせよ、瞬間急速脱力が悪いとは言わないが、本当にきもちのよさをききわけ、味わっていたら瞬間的には抜けない。

これは第一分析の脱力法である。第二分析以降の分析に関わっていると、なかなか瞬間脱力はやらないのである。



ちなみに、同志のところに来られたクライアントの方々は『自分が習った操体とは全然違う!』『これがきもちよさをききわけ、味わうってことですか』とびっくりしてそして納得して帰ったらしい。



そりゃそうだ。

『楽』よりも、『きもちのよさ』を味わう行程を経験してしまったら(つまり、上質のものを知ってしまったら)なかなか戻れない。



生活でもそうだが、1月10万円で10万円の暮らしをしている人よりも、20万円で暮らしている人が10万円の暮らしをする方が大変なのだ。例えがヘンかもしれないが、「質」を落とすのはなかなか難しい。



なので、「上質の快」「上質のきもちよさ」を味わってからだにとおしてしまった私達が今更『楽』にはなかなか戻れないのは当たり前なのだ。