善人は、なぜまわりの人を不幸にするのか 救心録 (祥伝社黄金文庫)
- 作者: 曽野綾子
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- 作者: 曽野綾子
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たまたま、立ち寄った書店で文庫版を買った。実は曾野綾子氏の小説は、昔新聞に連載されたいた「神の汚れた手」を読んだ位である。
- 作者: 曽野綾子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
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- 作者: 曽野綾子
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「善人は何故まわりの人を不幸にするのか」という言葉を聞いて、私が思い出したのは、ある女性のことだった。私の父親は人工透析をしており、食事制限をしていた。なので、余所に行って何かご馳走になったりする場合には、結構気を遣わなければならないのだった。私と両親で、何かの用事があって、その家に伺ったのだが、そこの女主(おんなあるじ)は、色々な手料理を作っていた。勿論、父が透析をしているということは知っており、女主の夫と女主の成長した子供達も一緒におり、彼らは少なからず父が透析をしていることを知っていたのである。
女主は手料理を私達に勧めた。郷土色の強い、素朴な料理だったが、父が食べられない種類の料理であることはすぐわかった。透析をやっていると、野菜の摂取の制限があるのだ。
「美味しいから食べなさい」と、女主は私の両親に言った。
「すいません、透析をやっているので」と父が言ったところ、
「食べてみれば。美味しいから」
「いえ、すいません、透析をやっているからだめなんですよ」と母も言った。私も
「すいません、透析していると食事制限があるので」と言った。
「残念だなあ。美味しいのになあ」と、女主は言った。女主に悪意があるわけではなく、むしろ手料理を作ってもてなしてくれているのである。しかし、「残念だなあ、美味しいのになあ」という言葉には棘こそ無かったが、私は軽く憤りを感じた。女主は父が透析をしていることは知っているのである。
しかし、本人には全く悪気はないし、折角手料理を作ってもてなしたのになあ、という残念な気持ちが残ったに違いない。
私は『善人は何故まわりの人を不幸にするのか』という言葉をもう一度考えた。少し前、何度か少しばかり嫌な目にあった。一人ではなく、何人かである。正確に言えば3人であるが、それらの人達は、決して悪い人ではない。むしろ善良で思慮深い人だと思う。しかし、一番大きな問題だったのは『人に迷惑をかけたということを、本人が自覚していない』ということだったのだ。例えばその人達は非常にまっとうな生活をしている。家庭を大事にし、仕事も真面目に取り組んでいる。酒を飲んだり煙草を吸ったりもしないし、食事にも気を遣っている。お花がきれいだとか、子供は天使であるとか、いつも笑顔でいましょうとか、みんな仲良くとか、非常にいい人達なのである。
しかし面白みに欠けるとも言える。また、この人達は多分私が愛読している「甘い生活」とか、「乗り移り人生相談」を読んだりしたら、「不道徳だ」とか「気持ち悪い」と言うかもしれない。
- 作者: 島地勝彦
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- 作者: 島地勝彦
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- 作者: 島地勝彦
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「上質な脳みそに裏打ちされたえこひいき」の話をしても「みんな平等じゃなきゃだめですよ」と言うかもしれない。
多分善人は
- 作者: 中谷彰宏
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これとか
- 作者: 今東光
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これとかは「不潔」とか「いやらしい」とか言いそうな気もする(笑)
また、私が何故『善人は何故まわりの人を不幸にするのか』という言葉にピンと来たかというと、私が最も好きな小説、森茉莉の「甘い蜜の部屋」からなのかもしれない。
- 作者: 森茉莉
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主人公モイラ(藻羅)は、皮を被ったような道徳観が本能的に嫌いなのだ。