操体法大辞典

操体の専門家による、操体の最新情報など

花芯

花芯 (講談社文庫)

花芯 (講談社文庫)

現在、東京操体フォーラム実行委員ブログでは「性」というテーマについいて、実行委員それぞれが執筆している。各々の個性が伝わってくるし、深いテーマなので、自己を見つめ直す機会でもある。私の番は5月だが、そろそろ予習というか、下準備をしておこうと、2,3週間前から少しづつアイディア出しをしている。そうしていたところ、3月11日に地震が起こり、自分の生活、精神的レベルのバランスが崩れてきたような気がした
お陰様で、私の仙台と気仙沼の親戚は皆無事だったが、イノチを落とされた方々、避難所にいる方々の事を考えると、やはり少し「胸につかえる」ものがある。

私が尊敬している女性は、淡谷のり子先生(先生と呼ばずにはいられない)、宇野千代先生である。宇野千代先生は、橋本敬三先生とほぼ同じ年に生まれている。千代さんの本は結構読んでいるし、私はよく後輩に勧めるのが「生きて行く私」だ。

生きて行く私 (角川文庫)

生きて行く私 (角川文庫)


男性のほうが、恋に破れた時のショックは大きく、後まで引きずるというのはよくある話だ。千代さんは振られた後、すぐに立ち上がる。新しい恋を探しに一歩踏み出すのである。
この「生きて行く私」の中に、瀬戸内寂聴さんが登場する。京都に行った千代さんご一行をいたれりつくせりで案内してくれるのである。

それを思い出し、千代さんを読んだら寂聴さんも読むべきではないかと思い立ったのである。
中学か高校か忘れたが、新聞に「まどう」という小説が連載されていた。私は相当ませた本を読む子供だったが、新聞小説を毎日読むという習慣がどうも身につかなかったようで、タイトルしか覚えていない。もしかしたら、親の目を気にしていたのかもしれない。確か当時、相当センセーショナルに宣伝されたような記憶もある。今書評をみると、40代の女性の不倫話だそうである。

まどう (上巻) (新潮文庫)

まどう (上巻) (新潮文庫)

「花芯」は1957年に発表された。「ポルノ小説」と批判され、文芸誌から依頼がなくなり、「文壇的沈黙」を余儀なくされた作品である。私も他の作品は読んだことがあるのだが、これは何故か読んだことがなかったのである。20歳で結婚した主人公(お互い処女と童貞)が、夫の会社の上司に「精神的浮気」をする。夫は妻の心が縛れないから、からだを縛ろうとする。夫の会社の上司には、大学時代から彼の面倒を見ている20歳年上の未亡人という相手がいる。主人公は子供を残して家を出る。
主人公は東京の銀座の帽子店で働くようになる。その後速記をならって帽子屋をやめるが、帽子屋のマダムが実はコールガールの元締めで、主人公はやがて、大物相手のコールガールになっていく、という話だ。

これは私の個人的な感想だが、男性の心理をつつくというか、男のなさけなさとずるさが書かれているのも文壇の怒りを買った原因ではないかと思う。また、妙に醒めた主人公の目線も男性にとっては不愉快なものだったのではないかと思う。

現在、寂聴さんは相変わらずお元気で、仏様の道を説いている。あのパワーは一体どこから来るのだろう。

私の師匠はホテルオークラのヘルスクラブの顧問をしているが、テラスレストランで食事をしている寂聴さんを見かけたことがあるそうだ。
ステーキを召し上がっていたらしい(汗)