操体法大辞典

操体の専門家による、操体の最新情報など

操体の講習。やるならちゃんとやって欲しい。

ベーシック講習の際、受講生のA嬢が私に聞いた。
「先生のところに来る前に、別の操体のセミナーに参加したんですが、ちょっと疑問が」
「どんなことかな」
「どちらがきもちいいですか、っていう問いかけを習ったんですが
『どちらがキモチイイ』って、よくわかりません」

ああ、またか。

私はこの悩みを相当数受けている。
「どちらがきもちいいですか、っていう問いかけをしている場合は、『楽な動き』と、快適感覚(きもちよさ)の違いが分かってないんです」

「どちらがきもちいいですか、っていう問いかけをしている方は、理解していないと思っていいでしょう」。

「きもちよさって、どっちが、って言えないんですよ」 

「あと、考えられるのは『どっちがきもちいいですか』という問いかけをするのは、
実際に患者様を診ていないということも考えられます」
操体の教室とかやっているのだったら、比較的健康で動ける方がいらっしゃいますが、
腰が痛くて這ってくるような方を診ていたら『どっちがきもちいいですか』とは聞けません」

ある人は、本を読んだだけで、操体の講習をしていた。
これは事実である。また、操体教室(つまり、臨床をやっていない)にも関わらず
プロ向けに「臨床の講習」をやっていた。
本人には悪気はなかったようだが、これは、橋本先生言うところの「無智は犯罪」と同じだ。

私はこの話をご当人から聞いた時、背筋が寒くなった。
健康体操のセンセイが、臨床(患者様を診ていない)のに、臨床家むけに講習(それも本を読んだだけ)をしている、これがまかり通っている。
ニーズがある(簡単に、手っ取り早く覚えたい)のだろう。

そういうことがあるから「操体は効かない」とか「難しい」と言われるのだ。
実際、操体をマジメに極めようと思ったら、一生かかる。
46年操体に関わっている三浦先生も未だに勉強しているし、20年になる私も
「まだまだだなあ」と、頭をぶつけているのだ。 

その人の言い分は「操体はみんなのものだから、自由にしていいんじゃないですか」だった。つまりどうしようが自分の勝手じゃん、というスタンスだ。

私達は、「操体橋本敬三先生からお借りしているから、 勝手にはできない。橋本先生の意志を継いで、よりよいモノにしていこう」と考えている。これをマニアックとか、言う輩もいるが、橋本敬三先生をリスペクトしているのである。

どうせだったら、ちゃんと勉強して、操体の臨床経験を積んでから指導をして欲しい。

それでは、習った方が困る。私達、マジメに操体をやっている者が迷惑する。
いい加減なことを教えて後でお尻を拭くのは私達だ。
自分のお尻くらい自分で拭きなさい。
 

操体を学ぶのだったら、「楽と快の違い」が分かっていて、
「きもちよさを探す」と言わず、どの先生に操体を習ったか胸を張って言える、
そういう指導者に習って欲しいと思っている。 

★ちなみに、橋本敬三先生は講習をやっていなかった。
橋本先生に習った、という方は、ほぼ「仙台の診療所に行って、見学した」
「地方でのセミナーに参加した」というレベルである。
または押しかけ弟子のような形で、温古堂に滞在していたとか。
中には「電話で話した」だけで、教わった、という方もいる。
(この話は聞いた時申し訳ないが笑ってしまった)
最近は「橋本先生に教わった」という人も結構あやしいな、と思ったりする。
実際あやしい。

橋本先生は、操体を教えてくれ、という人に対して
「東京に弟子の三浦がいるからそっちに行け」とおっしゃった。

A嬢は納得して帰って下さった。彼女にはベーシック講習ではなく、
それこそプロ向けの個人レッスンレベルの話をしてしまった。

色々見比べて安価な方を選ぶのもわからないではない。
その逆に、「智」や「伝統」「からだを使うワザ」は、
その道のプロに習ったほうがいい。

私の経験から言っても、
その道のトップレベルの先生に習うのが一番近道。