橋本敬三先生が90歳を越えてから
「連動は末端からなんだけどな」と、ある弟子に言った。
「般若身経」として知られている操体の「基本運動」には、
二つの意味がある。
一つは、養生法、健康体操として、健康維持増進のためとして。
もう一つは「からだの使い方、動かし方のルール」としてである。
これは非常に便利なもので、
基本であり(スタンダードであり)
診断法であり(動かしてみるとわかる)
治療法(自分で治せる)
の3つの側面を持つ。
般若身経は何度も改訂されている。
先日講義でも話をしたのだが、私の受講生が10年程前、
関西地方の操体講習を受けるというので、「行ってらっしゃい」
と、送り出した。
その後聞いてみると、側屈が側屈ではなく
「脇伸ばし」というらしい。
興味深いので、関係者に聞いてみたところ、側屈をすると、
股関節に痛みや異常を訴えるヒトがいるので、側屈ではなく
「脇伸ばし」と言っているらしい。
私は考えた。
これは「膝のちからをホッとゆるめる」以前の、自然体立位で
やっているからではないか。
橋本先生の本で、般若身経で「膝のちからをホッとゆるめる」という
記載があるのは「からだの設計にミスはない」からだ。
それ以前には「膝のちからをホッとゆるめる」という記載はない。
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「万病を治せる妙療法」などの口絵は、膝がピンと伸びている。
この状態で側屈をすると、確かに股関節近辺に負荷がかかる。
そして、膝の力をホッとゆるめて行うと、母趾球付近に体重が乗り、
側屈しても股関節には負担がかからない。
「O脚のヒトはどうするのか」という質問もあったが、
膝がゆるんで(曲げているのではない)、体重が母趾球辺りにかかっていれば大丈夫である。
なるほどな、「般若身経」もマイナーチェンジをしているのだと思った。
冒頭に「末端から動く」という話を書いた。
側屈を腰から動かす、私も最初そう習った(三浦先生に習う前です)。
ところが後に、橋本先生が足の親指の裏(母趾球)で、蹴り込むように
とおっしゃっていたという話を聞いた。
また、最初に、前屈は踵に体重を乗せて前屈すると習った(ホントです)。
これは、多分「後屈は、つま先に体重を乗せる」という記載の逆と、
膝を緩めないからだろう(膝裏を伸ばしたまま前屈すると、踵に体重
がかかる)
そういうことを経て、「マイ般若身経」もマイナーにバージョンアップしている。
現在は、自然体立位の場合、橋本先生も著書に書かれているように、
利き手と軸足を考える。足は腰幅(骨盤が両足の内側に入る幅)、
つま先と踵は平行に。この際、踵と拇指球を意識すると、平行か
そうでないかわかる。
- 利き手と反対の足、つまり軸足を半歩つま先を内側に向けて立つ
- 骨盤を定位に戻す
- 背筋を軽く伸ばし、目線は正面の一点に据える
- 膝のちから、あるいはお尻の力をホッ、ゆるめる
この姿勢、武術の構えや立ち方に似ている。
膝をゆるめるのは、太極拳の「含胸抜背」(がんきょうばっぱい)
にも共通している。骨盤を反らさない(出っ尻にしない)のも、
似ている。ちなみに、骨盤を反らすと、前屈した際、
首のちからをゆるめることができない。
ここから、前後屈、左右捻転、左右側屈を、末端(母趾球)から
始める。
朝令暮改ではないが、原理原則に適っていれば、
マイナーチェンジを繰り返してもいいのではと思う。