例に出して申し訳ないのだが、後輩のために書いておこうと思う。
橋本敬三先生がおっしゃっていた「骨盤」の状態は、「骨盤の前弯曲」「後弯曲」である。これは、現在一般的な「骨盤の前傾」「骨盤の後傾」とは逆になる。
我々は、橋本敬三先生にならって、骨盤の前弯曲、後弯曲と言っている。
私の後輩で、操体の本を一冊出しているのがいるが、元々腰が反っており(いわゆり、ヒップアップしている状態)なので、骨盤の前弯曲と後弯曲と、前傾と後傾を反対に覚えていたのがいた。またその人の買いた文中には、「操体では座骨をたてる」という表記が多数あり、監修をした三浦先生も私も「座骨をたてるというのは、腰が後弯曲してるってことだよね」と、気づき、修正を求めた記憶がある。彼女は「座骨を立てる」という表現に相当こだわっていたが、操体では、座骨は立てない。
座骨を立てるというのは、前述のように「腰が反る(骨盤の後弯曲、腰椎の前弯曲、骨盤の前傾)ということだ。
橋本敬三先生も、著書の中で「潮干狩りと月見」という話をしている。これは、腰が反っているのを潮干狩り(つまり、腰が反っているので、いわゆる「下つき」)といい、これは下品(げひん、ではなくげぼん)、月見(つまり腰が反っていないので、いわゆる「うわつき」)は上品(じょうひん、ではなくじょうぼん)と言っている。
この方は、今操体をやっているかどうかは分からないが、本人が見事な反り腰なので、「反り腰をよしとしない」我々から離れていったのかもしれない。
さて、ある受講生の方の話だ。仮にSさんとする。
もう5年くらい講習に参加している。年配ということもあり、ゆっくりじっくり講習に参加してきた。途中で止めることもなく、勉強を続けている。
しかし、一つだけ悩みがある。
足趾の操法も介助法も、どうしても親指に力が入ってしまうのだ。
つまり、親指を効かせてしまう。そうすると、肘と肩甲骨が上手く使えず、腕力で操法をこなすことになる。脇も甘くなりやすい。かといって脇をしめて、というと、締めすぎて不自然になったりする。
基本的に操体には腕力はさほど必要ない。
また、私は教室の中では、一番手が小さくて一番のチビである(160センチだけど)。
指も短い。しかし、ちゃんと介助補助はできる。
操体は、からだの大きさや腕力は関係ないのだ。
足趾の操法の講座でも、先輩である女子二人が熱心に指導を重ねている。
どうすれば、小指側を自然に使えるようになるのだろう?
今回は、視診触診の講座の最中にふと気がついた。
これって、操体を勉強していたら、ほぼ常識で当然で当たり前で、きっと知っているであろう、ということを、おそるおそる聞いてみた。
★勿論、三浦先生の講習でも最初あたりにちゃんと指導してます
「○○さん、ぞうきんってどうやって絞ってます?」
彼は、横絞りをしてみせた。
「ああっ!」(目眩)
周囲の受講生の顔には、ちびまる子ちゃんのような縦線が浮かんでいたことをご想像下さい。。。
横絞りというのは、文字通り、雑巾を横向きに、親指を使って絞るやり方だ。親指に力が入る絞り方だ。
★四十肩、五十肩の方に雑巾を絞って貰うと、横絞りをすることがある。本人は「こちらのほうが力が入るから」と言っているが、実際は絞れていない。力が入る、というのは、余計な力が必要ということだ。
★横絞りを縦絞りに変えるよう指導するだけでも、肩の調子が改善することがある。
長年、横絞りをしていたということは、親指に力を入れるという動作をずっと続けていたということだ。小指が効く代わりに、親指が効いていたのである。
私は改めて、縦絞りを指導した。
いわゆる、竹刀を持つような絞り方である。
Sさんは縦絞りを練習していたが、力の限りを尽くし、肘が伸びきるまで雑巾を絞り倒した。
「雑巾を親のカタキみたいに肘が伸びきるほど絞らなくてもよい」
という話をした。
Sさん曰く、雑巾の絞り方を習った記憶は何となくあるらしい。。。
そしてもう一つ、私のアタマに閃いたことがあった。
我々は「操体的テーピング」と言って、特殊なテーピング法を学んでいる。
そのテーピング法のトレーニングで、指をある形に組む方法がある。
Sさんは「私、指が短くて固いので、できないんですよ」と言っていたのだ。
「大丈夫だから練習するように」と、練習を勧めていたのだ。
まさか、もしかして、指を間違えてるかも????
私は少し焦って、Sさんに「できないという指の組み方」をやってもらった。
「ああっ!!!」
「指が逆じゃん!!!!!!!」
彼が「できない」と、練習を積んでいたのは「親指を効かせる」方法だったのだ!
親指効いちゃうわけだよ!
勘違いを二つ修正した。Sさんの今後がたのしみである。
しかし、彼の勘違いに気づいてよかったと思った次第。