今日は「セルフケアしたい」という一般の方ではなく、操体を施術・治療として使いたい、操体の専門家として勉強したいという方のことを少し書いてみます。
操体法東京研究会にも私(TEI-ZAN操体医科学研究所)にも、操体に興味があるとか、操体を勉強したいという方がいらっしゃいますが「操体は全く始めて」という方よりも「どこかでちょっと習った」という方の方が多いように思えます。
私が操体を勉強し始めた30年くらい前は「操体を教えてくれる」ようなところは、あまりありませんでしたが、最近は結構ありますよね。
その場合、大抵皆さんおっしゃるのは
「操者のポジショニングやスタンスなどは習わなかった」
「持ち方(手のかけ方)とか、こんなに細かくやらなかった」
「第一分析と(実際に第二分析の臨床を目の前で見て)第二分析がここまで違うとは思わなかった」
ということです。
もう一つは「『楽と快の違い』がよく分かった」ということ。
何故ならば、第二分析(きもちのよさをききわけ、味わう)という動診操法を指導しているのは「操体法東京研究会」(か、師範/師範代クラスの指導)だけだからです。
大抵は「言葉だけは『快』と言っているが、やっていることは、第一分析」です。
これは、私の経験上間違いありません。
指導者自身が「楽か辛いか」の動診操法(第一分析)と、「快をききわけ、味わう」という動診操法(第二分析)の違いが分かっていないからです。
なので※「楽な方にきもちよく動いてからだを整える」とか「どちらがきもちいいですか」とか「きもちよさを探して」とか「どちらが心地いいですか」というような言葉を使うのです。
これらは、一瞬聞こえがいい言葉ですが、操体にかぎれば、間違っています。
実際にやってみれば、これらの問いかけは「?」「よくわからない」ということがわかるはずです。※こういうことを言う指導者は、実際にどこか悪い方を見ていないとか、健康体操的指導(元気で運動できる人の相手しかしていない)しかしていないのです。
もし、操体法東京研究会以外で「第二分析」という言葉を使っていたら、それは、モグリかもしれません。いや、モグリです。
何年か前、三浦先生の本を読んだだけで、プロ向けの講習をやっていたという人がいて、驚いたことがあります。それも、治療家でも何でもない方だったのですが、びっくりしました。「渦状波®」をやるのは、我々の一門だけですし(似たようなことをやっているところもありますが、大抵は「皮膚への刺激」で、絞るとかずらすとか捻るとか、全く違うことをやっています。渦状波は「刺激」ではありません)。
「捻る」「つまむ」「ひねる」「ずらす」というのは「皮膚への刺激」です。
刺激と刺激にならないアプローチは、神経伝達経路も違います。
なので「捻る」「絞る」とかは、違うものであると思ってください。
最初の「操者のポジショニングやスタンス」ですが、操体は「操者もからだを使う」ものですから、ポジショニングやスタンスが無視されていいわけがありません。
我々は「作法」と言っていますが、操体を行う場合の「型」だと思っていただければいいでしょう。
自然体立位(しぜんたいりつい)のクラシックバージョンを書き出してみると
- 足は腰幅
- つま先とかかとは平行に
- 背筋は軽く伸ばして、目線は正面の一点に据える
- 膝の力をホッ、とゆるめる
そして、この場合、足底の支点は、常に母趾球です。
簡単に書いても4つの行程があります。
また「腰幅」と言っても、どこを基準にするのかは、本には書いてありません。
つま先とかかとは平行に、と言っても、つま先の拇指側なのか小指側なのか、これも本には書いてありません。
背筋を軽く伸ばして、目線は正面の一点に据える、これは想像できると思いますが、その次の「膝の力をホッとゆるめる」というのが難関です。
「膝を曲げる」のではなく、ゆるめるのです。
また「背筋を軽く伸ばす」と腰を反らせる人がいますが、腰を反らせると、膝の力をホッと抜けないのです。
この場合、腰を反らせずに、軽く背筋を伸ばす、我々の言い方だと「骨盤の前弯曲」(恥骨を基点として、恥骨が前方に出て、「背中が反らずに平らになる」状態)になります。
一番近い状態が、太極拳など中国武術系の「含胸抜背」(がんきょうばっぱい)だと思います。
太極拳も、健康体操的にたのしくやるのであれば、ここまで言われないかと思いますが、制定拳(スタンダード)を習うと、この辺りはかなり言われます。
私は、日本チャンピオンタイトルを取った先生から太極拳の指導を受けていたのですが「お尻は出さない」ということをかなり厳しく言われました。
お尻を出さない、つまり、腰を反らさない(骨盤を前弯曲させる@恥骨起点あるいは、骨盤を後傾@腸骨の上部を起点)ということです。
背筋は軽く伸ばすけれども、お尻は突き出さず、なおかつ膝は軽くゆるめる(曲げるのではない)。
単に「立つ」と言っても、これだけ細かい作法があるのです。
また、大抵の方は、つま先が外を向きがちです。
自然体立位で、つま先と踵を平行にセットしても、前屈とか後屈とか捻転とか側屈などの、動作をとらせると、大抵はつま先が外を向きます。
これは、まだ母趾球をコントロールできていないのです。母趾球をしっかり支点にして、そこから動きを操ることができるようになると、足幅は「つま先と踵は平行」状態をキープすることができます。
なぜ、これをやるのか、というと、被験者に動きを取らせる第二分析や第五分析において(第一や、D1’ も同様です)、被験者よりも操者の体さばきをコンパクトにするためです。
操者が被験者よりも、体さばき(動き方)が大ぶりだと、操者が被験者の動きについていけなくなるのです。
これは、一見逆に見えます。
操者の動きが大振りのほうが、被験者の動きについていけるんじゃない?
ところがどっこい、違うんです。
これは何度か書いていますが、大事なことなので、また書きます。
その昔、同じような身長体重なのに、介助補助のかけ方や、体のさばき方が上手いヒトとそうでないヒトがいました。
私は「どうしてだろう」と思ったのですが、そうでないヒトは、腰を反らせていることがわかったのです。
よい姿勢、というと、腰を反らして(ヒップアップ状態)というのが、普通に考える「よい姿勢」だと思うでしょう。
実は腰を反らせると、動きは外に向かいます。
腰を反らせないと、動きは内に向かうのです。
つまり、操者が動きを被験者(患者)よりもコンパクトにし、いかなる相手の動きにもついていけるようにするには、骨盤が反っていては具合が悪いのです。
以下の図は、私が講習などでもよく使うものです。
また、たまに「腰を反らせないと姿勢が悪くなる(猫背になる)」とか「膝を曲げるなんていうのは、姿勢が悪いじゃないか」という反論を受けますが、
腰を反らさず(前弯曲のまま)、背筋は軽く伸ばし、膝の力はホッと抜くのです。
膝は曲げるのではなく、力をホッ、と抜くのです。
曲げるのもゆるめるのも同じじゃないか、ではないのです。
操体の指導をする場合は、
膝を曲げる、とゆるめる、の違い
踵を上げる、と浮かせる、の違い
なども勉強することになります。
この辺りは「疲れにくい」「運動効率が良い」ということにも繋がってきます。
我々は、単に操体の治療や施術ができるというだけではなく、それを継続して行う必要があります。「つかれにくいからだの使い方」を習得するのも、スキルの1つなのです。
また、足趾の操法®などは、傍目にはものすごく簡単に見えるようですが、実際にやっていただくと、ほぼ100パーセント再現不可能です。
そしてこの辺りは、見よう見まねでやると、手首や肩を壊します。
「からだを壊さないように、長時間できるように」というのは、やはり時間をかけて学ぶ必要があります。
以前、途中でばっくれたヤツがいましたが、その人には、最後の「こうやれば、親指を痛めない」という方法を教えていませんでした。
多分「自分はもうこれでいい。畠山から学ぶものはない」と思ったのでしょうが、最後の一番のキモを習う前にばっくれたので、多分今頃上肢のどこかを壊しているのでは、と思います。
武術などにも「自分はもうこれでいいや」と、師匠から習うのをやめて、自己流でやるヒトが昔からいたようですが、そうやって自己流でやっていると「からだが壊れてくる」というシステムがあるそうです。
★こちらは、40数年の歴史を持つ、私もこちらで勉強した三浦寛先生の講習です。4月開講ですが、途中編入もOKです。詳細はお問い合わせ下さいね。
操体は「楽か辛いか」の第一分析でやめておいて「浅くやるか」。
または「快」に踏み込んで深くやるかです。
★こちらは、20年くらい続いている私(畠山)の、「施術+ベーシック講習」。
こちらは1日(3時間程度)ですが、操体の基礎とセルフメンテを学びます。
「本を読んでもわからない」「きもちよくって言われても」みたいな「操体ってよくわからない」という方のお悩み解決をしてきました。
★なお、三浦先生の講習を受ける前に、受講なさる方も多いコースです。