操体の操法の中でも、有名なものに「膝窩を触診し、圧痛硬結があるほうの足関節を背屈させて、瞬間的に脱力する」というのがあります。
我々は「足関節の背屈」と言ってはいますが、実は、やっているのは「足趾の背屈」です。
ちなみに「つま先上げ」と言っている場合がありますが、操体法東京研究会の門下は「つま先上げ」とは言いません。
なぜなら、やっているのは「つま先上げ」ではないから。
この話をすると「患者さんに難しい言葉を使っても分からないから」という人もいますが、私だってクライアントには「足趾を背屈して」などとは言いません。
そして、もっと考えて頂きたいのは、
「つま先上げ」と「足趾の背屈」という、操者のイメージです。
何度も言いますが、私もクライアントには「足趾を背屈して」とは言いませんが、
アタマの中には、明確なビジョンがあるわけです。
このビジョンがあり、一番活かすことのできる「言葉の誘導」があるので、被験者に「動いてもらう」ことができるというわけです。
この「言葉の誘導」を習得することが、操体法東京研究会の定例講習の特徴の一つでもあります。
操者が「つま先上げ」というビジョンでやる場合と、「足趾の背屈」というビジョンで指導する場合、被験者の「連動」は変わってきます。
よく「つま先上げ」は、当たりハズレがあると聞きます。
取れる(圧痛硬結が)場合は取れるけれど、ダメな時はダメという話です。
つまり「つまさき上げ」では連動しないのです。
足趾の背屈が成功するには
- 被験者への確認
- 被験者のポジション
- 操者のポジション
- 操者が被験者のどこに介助を与えているか
- 動診操法の言葉の誘導は適切か
- 操者がどのようなビジョンをもってやっているか
- 操者は仰臥位の被験者と、被験者のからだにどうやって語りかけているか(言葉の誘導)
- どのように動きを導き、操法の終わりまで導くか
という条件が必要です。
単に、つま先を上げさせて、踵を臀部に引かせて、脱力させるだけでは不十分です。
なので、当たりハズレが出るのです。
なお仰臥位での「かかと突き出し」と「下肢全体を下方に押し込む」という言い方では、全身形態の連動が変わってきます。
「かかとを突き出しながら、手も上に上げて伸ばして」というのでは、連動を導くことができません。
「かかと突き出し」と「下肢全体の押し込み」。
プロならば、この二つの言い回しで、連動が異なってくることくらいは、押さえておかないといけません。
私が「操体において」、
「楽な方にきもちよく動いて〜」という指導が「ボケ」だと言っているのも同様です。
サークル体操の先生とか、臨床やってない人が言うならば、まあ、100歩譲って仕方ないとしますが、操体の専門家が「楽な方にきもちよく動いて〜」というのは、完全に理解不足です。
「足趾の背屈」は、操体の中でも基本中の基本ですが、ここまで押さえてやっていただければなあ。