操体法大辞典

操体の専門家による、操体の最新情報など

操体独特の言い回しについて

先日もある人に言われたのだが、「操体には独特の用語がありますね」

「へ?」と聞き返す私。



なるほど、聞いてみると運動分析の用語が若干独特らしい。しかし、独特なのではなく実は橋本敬三先生が使われていたのをそのまま踏襲しているだけなのだ。

「手関節の外旋」:通常外旋するには肩関節から指先全体を使って「外旋」という。つまり一般の考え方では、手首が外旋するにはまず、肩関節が動き、肘関節が動き、手関節が動くので、手関節を外旋させるとは言わず、「肩関節の外旋」というらしい。

運動分析の用語は、国や業界でも微妙に異なる。どれが正しいとは言えないが。



操体では「末端関節」(足関節、手関節)から動かし、からだの中心腰が動き、首が動く、という連動を基本としている(勿論、感覚分析の一つの手段として「逆連動」(からだの中心腰から末端へ動くという手法をとる場合もある)。つまり、「手関節の外旋」というのは、手関節だけを動かすのではなく、全身が末端から連動して動く、ということを示しているのである。



手首だけを動かすなら、肘を90度に屈曲して掌を上に向けたり下に向けたりするのは、回内・回外であるが、この場合手首の動きと、橈骨、尺屈のねじれ運動を考えているので、末端を動かすと全身形態が動く、という考えではない。

「手首前腕の外旋」というと、結果的には肩関節の外旋になるのだが、(立位の場合)肩関節が動くから手首前腕が外に向いてくるのではなく、手首前腕が外を向くにつれて、肘が正中に向かい、同側の肩が下がり逆の足に体重がかかり、逆の体側が伸び、同側の体側が縮む(結果的に側屈になる)。

連動の順番から言って、やはり末端の手関節から連動が起こるので『肩関節の外旋』とは言えないのである。



そういえば、昨日久しぶりにヨガの教室に行った際、先生から聞いた話で一つ「これは書いておこう」と思うことがあった(景代先生、ありがとうございます)。

まず、このブログで使っている言葉は、身体運動関係の専門用語である。例えば手関節だったら、外旋、内旋、背屈、掌屈、橈屈、尺屈、牽引、圧迫(このうち牽引と圧迫は自力ではできない。一人で行う場合は「引き込み、押し込み」というとわかりやすいだろう)

また、何故専門用語があるのかというと、短い言葉でその様子が瞬時に正確にできるし、カルテを書く場合に役に立つからということもある。

C1と言えば頸椎一番だし、Iと言えばinferiorと言えば下方変位を指すし、RとLは勿論左右、CWは時計回り(clockwiseでCCWは反時計回り(counter

clockwise)などの言い方もある。C1RIと記録すれば、誰か他の人間が見ても「頸椎1番が右方と上方に変位している」ことが記述的にわかるのである。(ここらはカイロプラクティック的な記述方法)



例えば、「仰臥膝二分の一屈曲位での足関節の背屈」と言えば私達は慣れているからピンとくる。どういうポジションかすぐわかるのである。

しかし、当たり前なのだが、一般のクライアントにはこのような説明はしない。

「仰向けに休んで膝を曲げて、つま先がすねにつくように、足首をゆっくりと曲げていただけますか?」という説明をする。



「立位上肢前方水平位における右手関節の外旋」をクライアントに指示する場合。

「立って右手を前に水平に上げていただけますか?そこからあらかじめ掌を下に向けて、そこから掌を、中指を中心に小指側を使って(効かせて)外側に和回していただけますか?」となる。『中指を中心に小指側を使って(効かせて)』というのは「身体運動の法則」の中の「重心安定の法則」の「手は小指、足は親指」にかなった指導をするためだからである。



また、昨日受講生とともに操体のDVDを見ていたところ『言葉の誘導で使っている言葉が難しいですね』と言われた。

医道の日本社(鍼灸・東洋医学系の出版社)から出ているものだから、一般向けのDVDではない。勿論一般のクライアントには、わかりやすいように平易な言葉を使って誘導するのだ。