操体法大辞典

操体の専門家による、操体の最新情報など

しつこいけど般若身経。

先日のフォーラムでの出来事。



その前に、操体には、辛いこと、痛みがでるような動きを無理してしなさい、という理念は全くない。

そのような場合はやらないというのが基本である。



それは置いておこう。



私が担当したのは、基本的な動きの解説、つまり、「掌屈」とか「外旋(回外)」などの専門用語を説明するということだった。

これは、参加者の中に一般の方もいるという事と、動きは8つある、ということを示したかったのだった。



末端関節を動かすと、からだの中心、腰が動いて、腰が動けば首が動き、全身が合目的に動いてくる。

その説明が主な目的だ。



その次に、毎度おなじみの「般若身経」。



実を言えば初めて操体を習った15年以上前には、『般若身経』というのは、からだの使い方、動かし方の法則というのは

分かっていて、結構大切なことなんだな、ということは分かっていたつもりだった。また、ラジオ体操と比べると、明らかに腰の動きが違うということもわかっていた。

しかし、連動のしくみを深く理解するにつれて、からだの動かし方である、前後屈、左右側屈、左右捻転の6つの動きというものが、とても大切だということが分かってきたのである。



連動、という言葉を橋本先生も使われているが、どこを動かすとどう動く、というような示唆はされていない。

確か、足の親指の末端を押さえて、その指を動かすと、頭の方まで動くとか、そういう説明だった気がする。

昔は、どこか動かすと、からだも全部動く、という(確かにそれは正しい)大雑把な捉え方だったのだと思う。



また、連動には、自然な連動と不自然な連動がある。

ボディに歪みがなければ、自然な連動を導くことができるが、歪みがある場合、アンバランスな場合は、不自然な連動が起こる場合がある。これはからだがつけてくるのであって、良し悪しの問題ではない。



その証拠に、つい最近まで、私の周りでは『連動は人によって違う』『連動はパターン化できない』という意見が聞かれていたが、これは、人間のからだのつくりには規格があり、バランスがとれていて、歪みが

ない場合は、自然な連動を体現できる。また、アンバランスで歪みがある場合は、不自然な連動が起こる場合がある。(特に、操体の指導を受けに来るような方は、アンバランスの可能性が高いので、不自然な連動が起こる可能性は高い)という、考察で、話がとおる。



これは、

・自然な連動(つまり、『基本』)であり

・自然にできない、あるいは辛い場合は『診断』となる

・さらに、やりやすいほう(きもちよさがききわけられるほうがベスト)をやることは『治療』にもなる。



更にもう一つ、操者が動診、操法を行う際に、『重心安定の法則(手は小指、足は拇趾を効かせて、介助を与える)』の理解と、介入・介助する場合に、重心移動の法則が身についていると、被験者の動きについていきやすいし、安定した介助を与えることができることもわかった。



例えば、側屈の動きを造るには、どうすればいいのだろう。

腰を横に出せばいい?勿論、それもありだが、上肢下肢の連動を知っていれば、末端から側屈の動きを導くことができる。



例えば、右側屈なら

・右手を外旋させる、背屈させる

・左手を内旋させる、掌屈される

という感じだ。

(他にもあるが、割愛)



とにかく、これを理解せずに操体のやり方を覚えたい、というのは、型を学ばずして試合をやりたい、というのと同じらしい。



というか、この基本中の基本は本当に大切なのだ。



まさに、この世で一番短いお経のように、その中に叡智が詰まっている。



人様に指導する度に、その大切さを痛感する。