操体法大辞典

操体の専門家による、操体の最新情報など

日経ヘルス10月号

日経ヘルスを見ると必ずチェックしてしまうのが、W先生の「女性のカラダメンテナンス術」。



またもや『操体法』という名前で色々載っている。

今回は「膝の左右傾倒」が『膝倒しの操体法』という名前で載っているが、操体の根本理念が抜けている。

そもそも『○○に効く操体法』というのはない、というのが操体の理念なのだが。



★『(膝を倒して)脱力したら、真ん中にふわっと戻る』これは、操体だったら『力を抜いて、抜いたままにする』つまり、真ん中には戻らない。





更に、仰臥膝二分の一屈曲位で、どの位置で膝を傾倒して痛かったら、どの腰椎にズレがあるかわかる、という記述があるが、これは野口整体的な見方である。



操体だったら、『一番安楽な(痛みが出ないような)』ポジションからはじめる。これは鉄則である。



次に、「完璧にケアしたいなら色々な角度で左右くまなく行おう」とある。これも操体的ではない。



細かい事を言えば「痛いところの最高極限から楽な方に戻す」という記述がある。昭和初期、あるいは操体がまだ正体術(整体とは異なる)の影響色濃い頃ならわかるが、現在は『極限から』はやらない。(私はやらないが)もしも、楽か辛いかの二者択一の分析を行うなら、『痛いところの手前から』やるべきである。



★更に、膝を傾倒して、膝が倒れた方と反対側の手を対角線上に伸ばして、あくびをするように伸ばす、とあるが、これは単なる『伸ばすストレッチ』である。このような指導をした場合、読者は操体をストレッチと勘違いする可能性が高い。確かに伸ばすと気持ちいいケースもあるだろうが、これは『楽な動き』と『快適感覚』の違いが明確になっていない表現である。



要は、「操体法」という名前を使って、野口整体とミックスし、きちんとした操体法のセオリーを伝えていないのである。



私は、「操体法」という名前を使わずに、「骨盤調整」とか、ご自身の名前をつけて『操体法からヒントを得ました』と書くとか、全国操体バランス運動研究会などに出て、発表されるとか、『操体法』という名称を使っておられるのだったら、もっと操体法に対して、橋本敬三先生に敬意を表されもいいのではと思う。



★そういえば、『操体法』と書いてあっても日経ヘルス誌には、操体法に関する説明はおろか、橋本敬三先生の「は」の字さえ出てこない。あれでは『操体法』はW先生のオリジナルだと勘違いする読者がいてもおかしくない。



また、日経ヘルス誌は(一度、巻頭カラーでW先生の『操体ストレッチ』なるものを発表した罪は重い)、操体法に関して何か載せるのだったら、操体の専門家に取材して記事を掲載したほうがいいのではないかと思う。



いずれにせよ、見つからないと思ってやっていても、見る人は見ているし、操体のプロが見れば書いてあることの矛盾は分かるのだから。