操体法大辞典

操体の専門家による、操体の最新情報など

東京操体法研究会の定例講習に参加して(畠山裕美)

操体法東京研究会の定例講習に参加して、という現受講生の声をまとめました。

 

teizan.com

 

そこから、私の投稿をご紹介します。

 

 

畠山裕美 東京操体フォーラム実行委員 定例講習他。


操体をやっている人は星の数ほどいるけれど、操体の専門家は数えるほどしか存在しません。操体専門臨床家への登竜門、それが操体法東京研究会の定例講習です」

簡単にまとめますと、私が操体法東京研究会の定例講習に参加したのは、三浦先生のあくなき操体への求道心に共感したのと、操体の理論に共鳴したからです。
今年で操体を学び始めて25年位になりますが、面白い上に、相変わらず進化が止まりません。「家元が一番アバンギャルドである」というのをそのまま体現しているのが、三浦寛先生です。

 

そして、第二分析から第五分析、連動は、三浦寛先生が創案、体系づけたもので、これらの分析法は、操体法東京研究会でしか、学ぶことができません。
(こちら以外、あるいは一般社団法人日本操体指導者協会会員以外が講習を行っていたりした場合は、ホンモノではありませんのでご注意ください)

 

アバンギャルド:「既成概念に囚われず、新たな表現方法を開拓しよう」という20世紀初頭に起こった芸術運動

 

また、私が入門した当時は第三分析が確立されており、私が入門した当時、三浦先生は「連動」に関する研究をなさっている最中で、その直後に「手関節と足関節、末端関節からの全身形態の連動」をまとめられました。これは、操体関係者よりも他の療法の方や、スポーツ関係者に受け入れられました。

何故かというと、橋本敬三先生も、著書の中では「末端は全身形態に連動する」とは書かれているものの、どこがどう連動するか、という説明はなさっていなかったのです。なので、多くの操体関係者は「患者の動きなんて、みんな違うじゃん」(三浦は何を言ってるんだ)と言ったのです。目線の効用について最初に操体に取り入れたのも、三浦先生です。

しかし、連動の法則は「ボディに歪みがなければ、全身形態は、ある一定の法則に従って動くが、(自然な連動)ボディに歪みがある場合は不自然な連動を起こす」ということです。つまり、操体関係者が「患者の動きなんてみんな違う」と言ったのは、当然です。患者(被験者)は、ボディに歪みを抱えているからです。
動きが皆違うのは、理に適っているのです。

 

このように、連動、またこれから説明する「快適感覚に特化した動診と操法(第二分析)」、皮膚へのアプローチ、すなわち渦状波(第三分析)も、三浦先生が発表した当初、操体関係者は、否定したのです。

 

しかし、今現在では当時それらを否定した関係者も、快とか目線とか皮膚など、を認めはじめています。
しかし、多くはきちんと三浦先生から学んでいないため、中途半端になっています。例えば「楽と快の区別がついていない(第一分析と第二分析の区別がついていない)」。
皮膚へのアプローチも最近は類似的なことを行っているところがありますが、大抵は皮膚に対する刺激(引っ張るとかずらすとか捻るなど)です。


例えば、「快」。操体は当初、楽か辛いかの二者択一の分析が殆どでした。橋本敬三先生の操法の中には、二者択一ではなく、「この動きは比較的きもちいい」一つの動きをさせるもの、例えば前屈なら前屈(前屈と後屈は体の構造上比較対照できる動きではない)や、百会の辺りや頸椎7番の辺りを押さえて、首を上に伸ばすようにさせるというものもありますが、多くは楽か辛いか、やりやすいかやりにくいか、の二者択一です。

 

そして、橋本先生が85歳で現役を引退なさった時、またはそれ以降に「きもちのよさで良くなる」「楽と快は違う」「動きより感覚の勉強をしなさい」とおっしゃり、そこから「快適感覚に対する動診と操法」つまり、一つ一つの動きに、快適感覚の有無を問いかけ、きもちのよさがあれば、そのきもちよさを十分味わうという第二分析が誕生しました。

 

なお、やり方は第一分析なのに、言葉だけ「快」「きもちよさ」を使っているケースが非常に多く見られます。「楽な方に気持ちよく動く」という指導です。日本の操体指導者の99パーセントはこのケースに当てはまるか、もしくは「楽」と「快」の区別、第一分析と第二分析の区別がついていません。

 

そして、皮膚への接触、渦状波。橋本敬三先生は「運動系」の定義に「皮膚」をも含めていらっしゃいます。また、これは操体の盲点でもある「動けない患者、被験者に対してどうするか」という問題を解決し、操体の可能性を一気に広げました。

その後、呼吸を用いる第四分析、操体の概念を変えると言ってもよい第五分析など、時代のニーズに応じつつ、自然法則の応用貢献が進んでいます

 


そもそも私が操体を初めて習ったのは、三浦寛先生ではありませんでした。が、私自身が操体を勉強しようと思ったのは「操体法治療室」の三浦先生のパートを読んだからです。


操体法については、高校生の時、別冊宝島の「東洋体育の本」を読んでいて、知識はありました。しかし、多くの操体関連書籍がそうであるように、読んだだけでは分からず「なんだかよくわからない体操みたいなもの」という印象を持っていました。それをくつがえしたのが「操体法治療室」です。


その頃私は大手の整体学校に通っていましたが、そこで学ぶのは「OJT」(On the job training)と言えば聞こえがいいですが、学校併設の治療院、接骨院で即戦力になるような、テクニックばかりのものでした。私が操体に惹かれたのは「受け手の感覚」を重視する、あるいは、からだと心の繋がりを重視していることでした。また、当時は「痛い治療や施術は効く」という時代で、我慢して痛いのを受ける、という時代でしたが、「きもちのよさ」で良くなる、つまり、きもちのよさを味わうことによって、ボディの歪みが正され、患部(痛いところ)を直接操作せずとも、二次的に症状疾患が解消される、というセオリーでした。

 

もう一つは、私のルーツ(私は東京生まれですが、両親は宮城出身で、仙台は親戚が多く住んでおり、更に私は伊達政宗公が好きななのです)にも大変近い、仙台で生まれたもの、というのもありました。

 

三浦先生の講習(操体法東京研究会の講習、この講習です)に参加したのは、2002年のことですが、当時私は既に操体専門で開業しており、講習もある程度こなしていました。


操体関係の書籍も一冊出していました。

 

なぜ、三浦先生の講習に参加したかという理由をお話しましょう。
それまで私は第一分析と連動操体っぽいものをやっており、そこそこ結果を出していました。しかし、東京操体フォーラムの前団体とも言えるシンポジウムの場で、三浦先生の実技を見せて頂き、自分は「快とかきもちよさ」という言葉を使っているけれど、「快適感覚」と「楽な動き」、つまり感覚分析と運動分析の区別がついていなかったことに気がついたのです。

 

また、三浦先生の治療室に伺って「患者が美しく舞っている」姿を見、更には自分自身が患者として伺った時に受けた「皮膚へのアプローチ」、渦状波®には衝撃を受けました。

 

今まで私がやっていたのは、楽と快の区別もついておらず、また良かれと思って色々試行錯誤してやっていたことは、そこそこは間違っていませんでしたが、肝心なところが抜けていたのです。

 

そこで私は、それまでやっていたことを封印し(当然反対されましたが、反対する方々とは決別しました)、操体初心者として、三浦先生に弟子入りしたわけです。

そして、2006年、三浦寛先生に入門して4年目、三浦寛先生、今昭宏先生と共著で「操体法 生かされし救いの生命観」を出版することができました。

現在は、操体法東京研究会の師範代、三浦先生が不在時の講師代理、足趾の操法®集中講座の講師、視診触診講座の講師をつとめさせていただき、2010年から数回にわたる海外での操体セミナーには、サブ講師として操体の指導にあたらせて頂いております。

操体法東京研究会に参加してから、17年目になります。私よりも先輩は、岡村さんと半蔵さんですが、このように長い目で研究会の様子を見ていると、気がついた事があります。

 

操体の習得には3つの大きな軸があるということです。


1. 操体理論。橋本敬三の哲学などの理解
2. 実技(介助法、補助法、動診、操法
3. 道具(ツール)。

 

操体では道具は使いませんが、実技の結果を最大限に引き出す身体的な基礎を「ツール」と呼ぶならば、作法の習得、操体的なからだづくり、言葉の誘導、臨床家の手(触れた際に相手に不快感を与えない、癒しのちからのある)の作り方などです。

 

多くの操体法の講習で指導しているのは「2」それも、介助法補助法を指導しているという話は殆ど聞きません。2.実技 の 動診と操法 のみです。また、1.の操体理論、橋本哲学についても指導している、というところもあるかもしれませんが、操体理論の「第二分析以降」の理論指導をしているのは、操体法東京研究会のみです。

 

そしてもう二つ、重要なことがあります。
それは、操体の特徴「症状疾患にとらわれない」という方法を学べることです。症状疾患にとらわれない、とは、腰痛に効く操体法とか、膝痛に効く操体法とか、肩こりに効く操体法というのはない、ということです。


それでは、どうやって操法を選ぶのか。


大抵は、基本操体を一通りやって、自分が知っている動診と操法をやって、あるいは、○○に効くと、書かれている操法を選んで、という過程を経ます。
この、動診と操法を選ぶというのが操体の勉強の大きなヤマの一つです。
操体法東京研究会では、そのコツを学ぶことができます。
そして、その勉強は「想定外に強い」操体臨床家を育成します。

 

実際の臨床は「想定外」が殆どです。テキストに載っているような割り切れる症状の患者様やクライアントはまず来ません。いかなる(操体以外)の臨床、治療法においても、想定外に強いというのは強力です。

 

もう一つですが、操体を学ぶ事によって、操者自身の健康維持もはかることが可能です。


橋本敬三先生が、患者に対しては「操体は簡単だから、ちょこちょこっと自分でやればいい」と指導なさっていたのに対し。弟子には「よくこんな難しいことに首をつっこんだな」と、その大変さを労いつつも「操体は面白いぞ。一生たのしめるからな」とおっしゃったことが本当に良く分かります。

 

なお、この講習に向かない人を挙げておきましょう。

 

  •  短期間でテクニックだけ身につけたい人(2だけ覚えればいいと思っている人)
  • 師弟関係というのはバカらしいと思っている人(ルークとヨーダの関係がバカらしいと思っている人、と思って頂いても構いません)
  •  操体は健康体操であり養生法だと思っている人
  • 知的財産に対価を払うのは馬鹿らしいと思っている人

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ヴェネチアン・ガラスのうさぎ